強さ
一瞬の静寂の後、会場が大きく沸いた。対戦相手の大男は状況が理解できていないようで、動かない身体にただただ困惑しているようだった。もしこれが真剣による戦いであったら、心臓一突きにより死んでいただろう。楔帷子に仕込まれた『判定の魔法』はしっかりとアクアの有効打を捉え、大男の肉体を見えない鎖によって拘束したのだった。
「うああ!!アクアちゃん強い!!」
フウがいつになく興奮している。もちろんおれもだ。ヒヤヒヤしたが、実力さえ出し切ればアクアはそう簡単には負けはしない。
審判に促され一礼をする。同時に『勝者アクア!!」という審判の大声が会場中に響き渡った。再び割れるような歓声に包まれる会場内。観衆の反応から、いかにこの勝利が意外なものであったが分かった。
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控え室に戻ってきたアクアは、疲れを感じさせないほど笑顔で溢れていた。
「いやー危なかったです。緊張して全く動けませんでした。あんなに緊張したのは、僕、初めてです」
「あのまま負けるかと思った」
「あはは、先生が見てるのに無様な戦いは出来ませんよ」
「安心しな、立ち上がりは十分無様だったから」
「いやいや!! 本当緊張するんですから!!」
フウとレーナが笑う。それにつられるようにアクアも笑う。そんな様子を見ながらエニス王女は少し心配そうな顔をしてる。
「お、お怪我はないのですか……?」
「僕は頑丈なのが取り柄だから」
エニス王女はその言葉を聞いて少し笑顔になった。
「安心はいけません。念のため私が治癒魔法をかけます」
そう言ったのはレーナだ。「大丈夫」という言葉も聞かず、レーナはアクアの腰の辺りを掴むと、押し倒すようにベットの上に強引に寝かしつけた。
「くすぐったいですよう」
「動かないの」
そう言ったレーナの両手がぼんやりと光る。
「う~、あったかいですう~」
温泉地でマッサージを受ける中年のおっさんのような声をあげている。どこからあの声は出るのだろうか。のどに小さいおっさんでも飼っているのではないかと疑いたくなった。
「ぞうだ、ぜんぜ~~あ~~~~」
「……凄い声だな。ってどうした?」
「いっがいぜんがんばってぐだざい~~~~」
今それを言う必要があるのだろうか、という疑問もあったが、励ましの言葉は素直に嬉しかった。
「めっじゃぎんじょうしまずよ~~~~~あ~~~~~~~」
なんとも気が抜けるエールだが、おれも頑張らなくてはいけないな。




