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剣術大会当日

 特訓を始めて二ヶ月が経ち、ついにファンニル剣術大会の当日となった。

 

 会場はファンニル城内にある闘技場ということなので、おれ達は全員で会場に向かった。前回は留守番組だったレーナも一緒だ。


 この剣術大会に向けてやるだけの事をやったが、こういった大会は学校の部活動を通しても初めての体験なのでかなり緊張していた。珍しく昨日は寝付けなかった。


 この話をアクアにしたところ、


「僕もです……」


 と今にも死にそうな声で答えてくれた。目の下にはハッキリとくまがあり、ちゃんと動けるか心配になってしまった。もしかしたら戦っている最中に寝てしまうかもしれない。


 *************************


 城門を抜けるとすぐにエニス王女が待っていた。小さい身体を目一杯使って手を振っている。


「おおぃ……みなさーん……」


 わずかな風にも流されてしまいそうな小さな声で呼んでいる。かわいい。


「こんにちは! エニス王女」


「こんにちはです……フウさん……」


 二人共笑顔で挨拶を交わすと両手でギュッと握手をした。フウが腕を上下に大きく振るので「あわわ……」という小さな叫び声あげている。


「ミヤ、調子はどうですか」


 エニス王女の護衛の騎士であるガロムが物陰から現れた。


「緊張して寝むれなかった」

「はっはっはっ。その気持ち痛く分かる。私は三日腹を壊した」


「意外だな。本番に弱いタイプなのか」


「もともと緊張しやすいのだ。ミヤも、まあ優勝は無理だろうが、がんばれ」


「おいおい、おれは優勝を目指しているぞ」


「それは無理だな!!」


「そこはお世辞でも“出来る”って言えよ」


「はっはっはっ」


「笑ってごまかすな」


 正直優勝が出来るとは思っていない。でも、そこそこはやれるようになっていた。冗談半分でも『優勝を目指す』と言える位には強くなっている。


「そうだ、ギルドマスターのボーズダ様が控え室でお待ちだ。一度フウ様に挨拶をされたいとのことだ」


「そういや手紙でそんな事を言っていたな。おーい、フウ! ボーズダさんが部屋で待ってるってさ」


「はーい!」


 女子四人で楽しそうに喋っていたフウが大きく手を挙げた。


*************************


 この剣術大会の主催はファンニルの冒険者ギルドである。そして後援のような形でファンニル国の王族が関わっている。つまりボーズダさんは今回の大会の最高責任者である。

 そのため控え室もかなりのVIP待遇だった。部屋に入った瞬間、あまりの豪勢さに頭がクラクラした。いくらなんでも宝石を使いすぎではなかろうか。おれにとってはただの武器屋のおっさんなのだが、改めて凄い人だという事を実感する。


 しかし、その宝石の輝きに反するように、ボーズダさんの表情は浮かないものだった。


「フウか。よく来た」


「久しぶり! あれ、おっちゃん元気ないね」


「それが困った事になってな」


「どうなされたのですか?」


レーナが心配そうに聞いた。


「スリズ国の事だ」


「……」


『スリズ国』という言葉を聞いた瞬間、レーナの表情が曇った。


「その国……何か問題でもあるのか?」


「いえ……。ミヤさんは農業都市アグニをご存知でしょう?」


「ああ。この前アグニスライムの討伐の時に行った街だろ」


「その先にある国です。スリズ家が統治している国がスリズ国なのです」


「なるほど。その国が何か問題が?」


「もちろんスリズ国には冒険者ギルドがあるのですが、数年前にギルドマスターが変わってから、どうにも関係が上手くいかないのです。色々難しいのです。ミヤさんが気にする必要はありませんよ」


ボーズダさんも大きく頷いた。


「そうですか……」


 二人に気にするなと言われればここは引くしかない。レーナが面倒事に巻き込まれてなければいいが。少し心配になった。


「それはそうと、レーナは参加しないのか? 戦う姿を見たかったのに残念だ」


「光栄です。でも、アクアさんとミヤさんは相当やりますよ。二人共優勝してもおかしくありませんから」


「それは嬉しい事だけど、なんと言うか、強さと言うか……時折見える脇とお乳が……」


「え? ボーズダさん、お乳がどうされたんですか?」


 思わず反応してしまう。今とても重要なキーワードが出たような。


「ボーズダさん(ニッコリ)」


 レーナさんの笑顔は時々とても怖いです。


「おっちゃん! 今年のお乳枠はアクアちゃんだよ」


「え、え~~~~~~!!!! ぼ、ぼくですか!!!」


「なんと、そうだったか。教えてくれてありがとう、フウ。新しいお乳か。それもいいだろう」


 おい、アクアの身体を舐めまわすように見るんじゃない。アクアが困っているじゃないか。


「フ、フウさまがご担当で参加されるのが一番かと……」


「私は『無』だからね(ニッコリ)」


「その通りだ。フウは残念だからな」


 ボーズダさん、睨まれておりますよ。自虐は構わないが、他人に指摘されるのは嫌なのだろう。全く、このスケベギルマスを止めるものはいないのだろうか。


 というか女性陣もこのノリに乗るな。


 ふう、露出が多めの装備なんて楽しみで仕方ないじゃないか。


 お乳騒動も一段落すると、剣術大会のスタッフが迎えに来た。


 開会式が始まり、心臓の音が少しずつ早くなっているのがハッキリと分かった。


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