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特訓とルールの確認

 剣術大会に出ると決まったからと言っても、おれとアクアの毎日は変わらない。


 基本的におれはフウの料理の手伝いと馬車からの荷下ろしを、アクアは庭の手入をする。その合間に剣術の特訓だ。剣術大会に出るからと言っても、それだけやっていればいいとはならなかった。どうもレーナの考えのようで『おれとアクアは戦士ではないから』ということらしい。


 ただし特訓内容には変化があった。剣術大会のルールに合わせた動きを身につける事に重点を置かれた。


 大会は1対1の試合形式で行われるトーナメント方式だ。例年30人くらいの参加者だそうで、ファンニル以外の街からも剣に自信がある戦士が集まるとのこと。


 なんというか、おれとアクアは完全なる場違いである。

 レーナの推薦という形で参加するのだが、間違いなくオリンピックに参加している謎の国の選手枠だ。ゴールしただけで大歓声が起きること間違いないだろう、多分。


 唯一の希望は「お二人ならやれますよ」という昨年度の準優勝者、つまりレーナの言葉だけだった。


 お腹が満たされたお昼すぎ、いつも通り午後の特訓が始まった。


「今日はチェインメイルは装備しなくていいですよ」


 レーナが、持っていた木刀をおれに渡しながらそう言った。チェインメイルは大会の試合中に必ず装備しなくてはならない防具だ。木刀を使用するため身体を切られる心配はないものの、大怪我防止のために全身の着用を義務付けられている。


「試合形式でやらないのですか?」


 アクアが不思議そうに聞く。アクアのやる気は凄まじいものがあり、既にチェインメイルを装備し終わっていた。


「ええ。なので脱いでください、アクアさん」


「そんな、脱げだなんて……。全裸なんて……ぼく恥ずかしいです。うう……、これも奴隷の宿命……。分かりました!! ちなみにどういう特訓なのですか?」


「誰が全部服を脱げといいましたか? チェインメイルだけですよ」


「あっ! ああっ! そういうことでしたか! あはは」


 アクアが顔を真っ赤にして恥ずかしそうに笑っている。レーナが止めなければ裸を見られたかもしれないと思うと、ちょっと悔しい。


「ええ!! アクアちゃん! 全部脱ごうよ!!」


「そ! そんな! やめてくださいフウ様!」


「うりうり~」


 フウが抱きつきながらアクアの服を脱がそうとしている。この二人は年も近いせいか、最近特に仲がいい。一言で言えばスキンシップが濃い。


「やめさい、ミヤさんの前ではしたないですよ」


 見かねたレーナが木刀の先端で脇腹を的確に小突いた。


「ぐっ………。いてて……はーい。ちぇーアクアちゃんの可愛い身体見たかったなあ。しょうがない。ミヤでも脱がすか」


 フウが渋々アクアから離れる。って、なんでおれが脱がないといけない。ちょっとやめろって。どこ触ってんだよ!


「―――しかし、今の脇腹への攻撃凄かったな。軽い一撃だけど4ポイント入るんじゃないのか?」


 おれは気を取り直して言った。


「ええ、入っていると思います」


 ファンニル剣術大会では攻撃を与えた部位によってポイントが入る仕組みになっている。装備しているチェインメイル全身に魔法がかけられており、先に10点取った方が勝ちというルールだ。


 大雑把に言えば剣道やフェイシングのようなものではあるが、そこは魔法が存在する異世界。大きな違いがあった。攻撃された部位は、チェインメイルにかけられた魔法によって、その部位を拘束する仕組みになっている。


 つまり、仮に右腕を叩き切られる程のダメージを食らったとすると、その腕は魔力によって使えない状態(切られたのと同等の状態)になってしまう。もちろん痛みはない。左腕のみで戦う事も可能だが、その時点で5ポイント~10ポイントの点数が加算されている(腕への致命傷具合で魔力がポイントを判断するらしい)。


「さて、今回防具を着用しないのは、防具に慣れてきたせいもあって、最近アクアさんの動きが大きいのを修正するためでもあります」


 レーナはおれ達三人の前に立ち、軽く素振りをしながら言った。


「防御系の魔法はかけますが、少し痛みは残すつもりです。しっかりと防御をしてくださいね」


「「おお……」」


 おれとアクアとフウが絶望の声をあげた。もちろんハモる。今日の特訓は厳しいものになりそうだ。


「二人とも頑張って!」


「フウ様も、もちろん参加ですよ」


「……」


 フウががっくりと肩を落とした姿を見て、おれとアクアは思わず笑ってしまった。


「一緒に痛くなろうぜ、フウ」


「すごく、イヤ!!!」


 その反応を見て、今度はレーナも笑った。


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