それぞれの決意
特訓を終え、庭の芝生の上でパンを齧っているとレーナがやって来た。
「お疲れさまです。相変わらずアクアさんの動きは素晴らしですね」
「そっ! そんなことないです! 僕なんてまだまだ……」
そう言うと顔を真っ赤にして下を向いてしまった。
「レーナ! わたしも強くなったんだぞー」
フウはそう言うと真っ平らな胸をムンと張る。
「いえいえ、フウ様はとても弱いですよ。安心してください」
「え~~~」
アクアとは対照的にがっくりと肩を落とす。
「わたしも少し強くなったのに~……」
優しい目でレーナは微笑んでいる。剣の扱いが下手くそだからと言ってフウの強さが飛び抜けていることには変わりがない。むしろ目に見える弱点があってホッとしているくらいだ。
せっかくの機会なのでおれの評価も聞いてみた。
「ミヤさんは――――――。普通ですね。普通に強いです」
「そうか、普通か」
褒められているのか貶されているのかよく分からないうえに、まず普通のラインが分からない。なんともモヤモヤする答えだ。
「あれ? レーナ、手紙持ってる? 誰から?」
言われてみると確かにレーナは手紙を握りしめている。
「ああ、これですか。ボーズダ様からです。私宛に来ました」
筋肉ダルマのギルドマスターか。意外とフウとの交流が多く、何かとお願いをしてくる。
報酬も高額なのでいいお小遣い稼ぎになっている。ただ、レーナ宛に手紙が来るのは珍しいことだった。
「なになに? レーナのことが大好きだってきたの?」
フウが茶化すように言う。
「怒ります――――――こら」
非常に冷たい声。レーナさん怖いっす。
「もう怒ってる!!」
「だから『怒ります』って宣言したじゃありませんか」
「何それ! 絶対おかしい。 ねっアクア」
「ぼ、ぼくはえっと……。えへへ」
笑って誤魔化したか。
「もう! ミヤも何か言って」
「なあレーナ、その手紙はどういう用件なんだ?」
「あ! 話そらした!」
フウさん、ちょっとお静かに。
「まったく……。えっと、これですか? 毎年恒例の剣術大会の招待状です」
「剣術大会!? レーナは戦えるのか!?」
「フウ様に使える身としては当然の嗜みですよ」
「レーナはね、去年の準優勝したんだよ。魔法もだけど剣と武術の腕前も凄いんだから!」
フウが自分のことの様に嬉しそうに言う。
「わー! すごいですね!(モグモグ) 今年も出場されるんですか?(モグモグ)」
感嘆の声をあげたアクアが身を乗り出しながら聞く。こらこら、食べながら喋るな。
「いえ、私も他の仕事がありますし、それに―――準優勝で満足してしまいました」
「えー、優勝を目指さないんですか……。残念」
「本気で優勝を目指すなら―――特訓とか―――色々面倒なのですよ。――――――そう―――代わりと言ってはなんですが、ミヤさんとアクアさん、二人で参加されませんか?」
「「剣術大会に!!」」
突然提案におれとアクアはハモってしまった。まさか生きている中で驚いて誰かとハモる事があるとは思わなかった。
「模造刀ですし、防具も付けますので大怪我はしないですよ。冒険者ギルド主催の力比べですから」
「おれは……どうしようかな」
いくら大怪我はしないと言われても、やっぱり痛いことがあるのは間違いないだろうし。
「ぼくは―――出ます!! 優勝を目指します!!」
庭中に響き渡る大声でアクアは答えた。アクアの実力から参加するのだろうとなんとなくは感じていたが、まさか優勝宣言までするとは思わなかった。彼女の性格は、大雑把ではあるが、適当に大きな事を言う性格ではない。
自信があるのだ。確信まではいかないが『戦える』という自信。
おれはどうだろうか。正直自信はない。間違いなく途中で負けるだろう。
だが、今の自分がどの位の力があるかを確認したいと思った。
「ミヤさんはどうしますか?」
「―――出るよ。当然だ」
迷いはあった。でも、自然とそう答えていた。




