お金がないイケメン
「みんな大丈夫~?」
「エニス様!! お体は大丈夫ですか?」
先行してアグニスライムを倒していた二人が戻ってきた。特にガロムさんは相当慌てていたようだ。護衛の騎士として王女様に何かあったら命に関わる問題だろうし、当然の反応だろう。エニス王女をすぐに馬車の中に連れて行った。
「ああ、怪我はないよ。アクアとエニス王女は服の中に入られたが」
「そっか。少し痛いくらいだけど、たまに噛むから気をつけてね」
「ええ! 噛むんですか!」
「ちょこっとだけね。アクアちゃんも服を着替えたら? ベタベタして気持ち悪いでしょ?」
「はい。そうします! フウ様も服の中に入られた事があるのですか?」
「昔ね。あともっと大きやつに取り込まれた時は髪の毛までやられちゃって大変だったよ。触られてる時はちょっとだけ気持ちが良いんだけどね」
「あ、やっぱりフウ様もそう思いますか? ぼくもそう思ったんです」
「やっぱりそうだよね~」
フウはニコニコと笑っている。二人とも気持ちがいいという感想もあり、おれもちょっと触って欲しいと思ってしまった。絵的にはあまり綺麗なものではないが。
農作物に害を与えるという点ではやっかいな魔物であるが、数が多くても、非常に弱いのは救いだった。ぼんやりとだが魔法の使い方が分かってきたような気がする。
「ガロムさんは多分エニス王女に付きっきりになっちゃうだろうし、この先は私達だけで続けていこうね」
その言葉通り、おれとフウとアクアの三人でアグニスライムを倒していった。経験を重ねるにつれ、おれとアクアの不器用な魔法も様になってきたように感じる。いくつかレベルが上がっている気がする。
魔物の反応が探知メガネかからドンドン消えていく。50匹、100匹、150匹。やっぱり疲れる。
それと呼応するように日が傾く。
「今日はこの辺にして帰ろうか」
日が沈むまであと二時間といったところでフウがそう言った。
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都市アグニへ戻り、冒険者ギルドで他の二つの班と合流した。
冒険者ギルドの中にある会議室のようなところで簡単な報告会が開かれた。おれは広い場所だなと思ったのだが、どうもファンニルの冒険者ギルドに比べると狭いらしい。ファンニルの冒険者ギルドには行ったことがなかったので、今度立ち寄ってみよう。ギルドマスターのボーズダさんに釣具を貰ったお礼をしないといけないのも思い出した。
報告会によると、A班は特に問題なく討伐が行われたようだった。しかし、B班は途中大型の魔物に出くわして戦闘になったそうだ。B班はイケメン戦士がリーダーのいる班だ。きっとイケメンに厳しい魔物に違いない。
相当強敵だったようで「なんでこんな場所にあんなに凶暴な魔物がいるだ!」と文句を言っている。なんとか倒したそうだが、馬車が破壊され徒歩で帰ってきたそうだ。
真っ二つに折れている300万ギルクラスの長剣が痛々しい。大きな怪我がなかったのは不幸中の幸いだろう。仲間の装備品もボロボロで、特に防具は使い物にならないレベルで破損していた。よく見れば長剣だけでなく防具も高級品だ。注目株のパーティーなだけあっていい装備を身につけている。気軽に買い直すことも出来ないだろう。可哀想に。
話を聞いていたエニス王女はプルプルと震え、おれの服をしっかりと握っていた。もしそんな危険な魔物がいるなら、明日はエニス王女はお留守番決定だ。そしておれもお留守番がいい。流石に死んでしまう。
「そこでだ!! 皆さんに折いってお願いしたいことがある!!」
なんだなんだと、突然大声をあげたイケメンを見る。
「装備品の調達のため金を貸して欲しい!!頼む!!」
借金して装備品を調達するのか……。どのくらいの装備を買うつもりなのだろうか。
しかも皆さんと言っている割にはこっちを見ているのがバレバレだ。フウが超が付くほどお金持ちなのは知らないはずがない。
フウがおれを見てニッコリと笑った。
「わたしは面倒くさいから、ミヤお願いね」という笑顔だった。




