討伐開始
休息もそこそこにアグニスライムの巣に向かった。
そこは果樹園であったが、今は見る影もなく荒れ果てていた。
「全部枯れてるな。これ全部アグニスライムがやったのか?」
「うん。弱っちいんだけど、繁殖力があって食欲旺盛だから厄介なんだよね」
フウは『探知メガネ』を見ながら答える。
「あ、巣から出てきてる。わたしとガロムが倒していくから残骸を燃やしていってね。アクアは火の粉の後始末をお願い」
「かしこまりました!!」
「了解」
おれとアクアは返事をした。ほとんど後処理だが、残骸を残すとそこから新しい個体が生まれてしまうので、意外と責任重大な任務だ。
ちなみにエニス王女は馬車の中で見学している。流石に外で見るのは危ないという判断だった。
そんなこんな話をしていると、木の裏で隠れていたアグニスライムが次々と姿を現した。
ネバネバとした青い姿をしており、可愛さは全くないが、いかにもスライムと言った姿をしている。木の幹にくっ付き栄養を吸い取っている。数も多く、これだけ畑が荒れ果ててしまった理由が分かった気がした。
初めての実践はなかなか地味な戦闘だった。
フウとガロムさんが魔法で倒していった残骸を、おれが火の魔法『ファイア』で潰していく。火が消えずに残っていることが多いので、その火をアクアの水の魔法『ウォータ』で消していく。
「見てください先生! 少しだけ水の勢いが増したと思いませんか?」
「いやあ、さっきと変わらないと思うぞ。あ、あっちまだ消えてないみたいだな」
「本当だ! なんですかねえ。木材よりも消えにくいです」
「そうなのか? 火もつきにくいんだよなあ。 あの二人、一発でスライムぶっ飛ばしてるけど、実際すごい魔力なんだと思うわ」
「僕たちも早くああなりたいですね。……きゃ!!」
アクアが小さな悲鳴をあげた。
「どうした?」
「ス、スライムがまだ動けるみたいで……。せ、背中に入ってきて……。うう……」
身体を反らせながら一生懸命背中に入ったスライムを取ろうとしている。
「先生ェ……と、とってえ……」
「変な声を出すなよ……」
背中をポンポンと叩くと小さなアグニスライムが飛び出した。
「ふえっ!」
「こいつか。ふふふ、エッチな魔物め、おれの火の魔法で懲らしめてやる」
正直悪乗りである。スライムの特性を生かした素晴らしい攻撃であったぞ。
しかし、動きのすばしっこさと小ささもあり、なかなかファイアが当たらない。
「これ、なんともイライラするな……」
「先生後ろです!」
いつの間にか背後に回られていた。しまったと思い振り返ると、なんとすぐ近くにエニス王女が立っていた。馬車の中にいてくださいって言ったのに!
アグニスライムは勢いよくエニス王女の服の中に飛び込んでいった。
「…………っ」
エニス王女はなんとも言えない苦悶の表情に変わった。
「ああ! 王女の中に入りましたよ! 冷たくてちょっと気持ちいいはずです!」
「余計な情報ありがとう! てか、なんだあいつは! なぜ女の子服の中に隠れようとするんだ?」
「知りません!!」
「………うっ……くすぐったい……です……」
再びエニス王女の表情が変わる。これ以上はいけない。これ以上はいけない。R18になってしまう。
「お腹から胸の辺りだな。アクア頼む!」
「はい先生!! 分かりました!」
アクアがエニス王女の服の中に強引に手を突っ込む。と、同時にスライムが飛び出した。
「出ました!!」
「今度は外さない」
おれはしっかりと狙いを定めファイアを放った。
放たれた火の矢が、弧を描き、アグニスライム目掛けて飛んでいく。そして、当たる瞬間までハッキリと見えた。世界の時間がその瞬間だけゆっくりになったようだった。
「よし!」
嬉しくて思わず声が出てしまった。
「やりましたね先生! 散々外してましたけど、流石です!」
「……外してたは余計だ」
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