アグニ到着
昨日の疲れも無く、おれ達はアグニへ出発した。
問題がなければその日の日没前には到着する予定であったが、旅にはアクシデントは付き物と言ったところ。
荷車の車輪の故障により途中の湖岸で野宿することになってしまった。
「どうぞ、先程ほど自分が狩ってきたウサギの肉です。この辺りのウサギはとても旨いですよ」
「ありがとうございます、ガロムさん」
「いやいや。お礼なんていいのです」
「おいしい……ミヤ・ユータも早く食べてみろ……」
昨日の食事会のおかげもあり、エニス王女と護衛の騎士ガロムさんと少しばかり打ち解けたようで、道中も話をする機会が増えた。フウとアクアともよく話をしている。馬車内でも時間も楽しく過ごせるようになってきたためか、昨日よりも疲れが溜まらなかった。
食事後は「剣術をやってみないか」というガロムさんの提案によりエニス王女を含む全員が剣術を習うことになった。
しかし、その姿はまさに幼稚園児のお遊戯会レベルだった。「剣の扱い下手くそやな」という車輪を修理している馬車の操縦者のおじさん(リン村から同行)の視線がハッキリと分かる。
唯一アクアだけは筋が良いようで、ガロムさんから何度も褒められていた。
「見てくれましたか! ミヤ先生! ぼくこんなに褒められると思っていなかったのですっごく嬉しいです!」
アクアの表情が眩しい。元々筋肉質のせいもあるだろう。得意なことがあるのは良いことだ。後でアクアにコツでも聞いてみるか。
「ミヤも上手だったよー」
というフウの言葉が心に染みる。褒められると伸びます。
ガロムさん曰く、おれにもそこそこ剣の才能があるというので、剣のトレーニングは続けていくことにした。魔法の才能も普通っぽいので、とりあえず肉弾戦でも戦えるようにしておいて損はないだろう。
ちなみにフウとエニス王女は、木製の短剣を持ったまま子猫のようにじゃれあって遊んでいただけで、才能の欠片も無いことが一瞬で分かる親切仕様だった。そんなフウから見たら、確かにおれの剣の腕は『上手』だったに違いない。
翌日。
遅れを取り戻すために早朝から出発した。いつもよりスピードが出ているせいで、とにかくお尻が痛い道のりだった。それなら立っていようと試したが、振動の度にみんなひっくり返った。
走るたびに少しずつ景色が変わってくる。遠くには小さな村落と麦畑が見え始めた。規模は大きく、麦は麦は緑がかった黄金色だ。柔らかい風が麦の匂いを運んでくる。なんとも長閑な光景だった。
「もう少しで麦の収穫時期かー。楽しみだよね」
フウが嬉しそうに言う。こちらの世界に来てから季節をあまり意識していなかったが、気温的にも初夏辺りなのだろう。
そうして、お尻の痛みと、ひっくり返ることによるダメージと、パンチラというサービスカットを挟みつつ、おれ達はついに『農業都市アグニ』へ到着したのだった。
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アグニにある冒険者ギルドの受付から、先に到着した二つの班はすでにアグニスライム討伐に出発したという話を聞いた。討伐のための道具はすでに揃っていることもあって、全員の到着を待たずに任務を開始したようだ。
二班とも少し遠方のアグニスライムの巣を叩きに行っているようで、俺たちは近くの巣を担当することになった。
早速メガネを装着し巣を探す。少しずつ範囲を広げていく。操作性はスマートフォンのデジタル地図の使い方に近い。指で大きさや場所を調整する。フウからアドバイスが欲しいというので、このような形にしてもらった。
対象はすぐに見つかった。
東へ一時間くらいだろうか、おぞましい数のアグニスライムの反応があった。
想像していたよりもずっと多い。
いよいよ討伐開始だ。身が引き締まる思いがした。




