エニス王女と護衛
しばらくすると、一人の男性騎士と共にエニス王女が謁見の間にやってきた。
エニス王女は人形を抱え俯いている。顔はハッキリと見えないが、細身の身体と透き通るほど白い肌が印象的だった。白銀の長い髪が透明感をより感じさせるのかもしれない。
彼女は外に出る事があるのだろうか。外の空気に触れたら溶けてしまう気がする。思わず心配になってしまうほど、彼女の姿は繊細に見えた。
結局、王女は一言も言葉を発することなく自己紹介が終わった。一緒に入ってきた騎士は護衛とのこと。フウだけで問題ないとファンニル王は考えているらしかったが、身の回りの世話を含めて同行することになった。
ファンニル王のどうでも良い苦労話が終わると、ようやく旅立ちの準備となった。
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「以上の段取りで目的地である都市アグニへ向かいます。質問がある方はいますか? あれば手を上げてください」
14人の冒険者達を前におれが声をかける。「ミヤ、みんなの前で話すの得意だよね? 代わりに今回の依頼の説明をしてくれないかな。お願い!」というフウの当然の無茶ぶりによりこのような状態になってしまった。
特別難しい内容ではないが、社畜時代に何度かやらされたプレゼンテーションの経験が生きたかもしれない。
「フウさんが作ったこのメガネは、本当にアグニスライムだけを探知するのか?」
体育座りで聞いていたイケメン戦士が手を挙げて質問してきた。なんとも可愛い格好をして聞いているが、この戦士はファンニルの冒険者ギルドでも指折りの戦士らしい。彼の率いるパーティー自体はまだまだ有名とは言い難いが、今後大きく成長する可能性を秘めた注目株とのこと。
「そうです。他の魔物は探知しません。魔物探知系の魔法との併用をオススメします。あくまで依頼の一つである『アグニスライムの巣の発見と殲滅』のための道具です。アグニスライムは一匹でも逃すとすぐに増殖してしまうので、討伐の際は必ず使用してください」
「特定の魔物の探知か、すごいな」
フウが依頼されたいた魔法具がこれだった。なかなかの難産だったらしい。
「他に質問はありませんか? なければ以上で終わります。またアグニでお会いしましょう」
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おれとアクアは馬車への荷物の積み込みを手伝うことになった。エニス王女と護衛の騎士さんが増えたので、馬車の変更と食料や生活物資の追加搭載が必要になったからだ。
3つの班に分かれ、時間をずらして出発する予定だ。
おれたちの班は「おれ」「フウ」「アクア」「エリス王女」「護衛の騎士」の五人になっている。強いのか弱いのかよく分からないメンバーではあるが、他の班より『かわいい』のは間違い。
「……柔らかいベットが……いいです」
「かしこまりました!」
馬車の中ではエニス王女と騎士さんが相談しながらベットルームを作っていた。エニス王女は本当に喋らない子で、おれとアクアはともかくとして、何度か面識があるはずのフウとも上手くコミュニケーションをとれている感じがしなかった。「えっ」「あっ」「あの」「うん」「あの……(ハモる)」終始これである。
ただ、護衛の騎士さんとは話が出来るようだった。見かけは30歳くらいだろうか。
「あ……ネコさんのお人形はそこです……その子達は一緒じゃないと泣いちゃうので……」
「はっ!申し訳ございません!お兄さんと弟さんでありましたな!」
「いえ……恋人さんです……」
「はっ!そうでしたなっ!おませさんなネコさんですなっ!」
「ガロム……ちょっと寝てみていいかな……おためしモフモフしたいです」
「どうぞ!あ、足元にご注意くださいませ!段差がありますぞ」
「ありがとう……ガロム……あっ……」
「だ、だだっだだだ大丈夫でござまいすか!!!お怪我はありませんか!?」
「……転んでないからへいき……ありがとうガロム……」
うーむ、会話を聞いていると道中が不安になるな。




