契約
いきなり「魔法を教える」と言われたおれとアクアは、庭に連れ出されると椅子に座らされた。
フウは手に持っていた二枚の紙を勢いよく書き始めた。
「なあ、仕事はいいのか? 魔法具を頼まれてるって言ってたが」
「いい考えが思いつかないし、ちょっとくらいへーきへーき」
話しながらもペンは勢いは止まらない。一枚、二枚とあっという間に書き終えてしまった。
「ほい、ミヤこれね」
「紙を投げるな」
「こっちはアクアちゃん。どーぞ」
「ありがとうございます」
「じゃあ、それ読んで」
いきなり読んでって言われてもなあ。見たことない文字だけど読めるかな。
「けいやくしょ……ああ、『契約書』ね。我の名はミヤ・ユータ、さらまんだーとの……」
「よし、ミヤは大丈夫だね。アクアちゃんどうぞ」
「けーやくしょ。われシークド・アクア、ういん?でーね?との」
「おお、アクアちゃんも大丈夫だったか」
フウは喜んでいる。意味が分からない。全部の文章を読んでいないけどいいのだろうか。
「なあ、何が目的なんだ?」
「あ、ごめんね。これ魔法の才能を見るための一番初めの作業なの。『魔法文字』で書いたんだけど、魔法の資質がない人間には見えないの。読めるって事は魔法を扱えるってこと。まずはおめでとう!」
「いきなり試験だったのか……。才能があってよかった……」
「まあミヤは問題ないと思ってたけどね。ただ、アクアちゃんが読めたのはちょっと嬉しかった。魔法の才能がある人ってそんなにいないから、難しいかもって思ってた」
「え、ぼくも魔法が使えるんですか?」
アクアはまだ状況を理解していないようだ。もちろんおれもだが。なにせ説明不足である。
「うん、おめでとう!」
「まだ、掃除の仕方すら教わってないのに、まさか先に魔法を教えてもらえるなんて……。さっそく使ってもいいですか!? 部屋を拭くための水を出してみたいんです!!」
「アクアちゃんやる気だね! まだ使えないよ!」
「そうでしたかっ!」
なんだこのやり取りは。
しかし、アクアのテンションがいつにも増して高い。この世界で魔法が使えるというのは、想像以上に大きなメリットなのだろう。
「早速契約に入ろうか。魔法を使うためには精霊との契約が必須なの。血印が欲しいから親指貸して。ちょっと痛いけど我慢してね」
言われるままに指を貸す。フウが小さな針でチクリと刺すと、指の上に小さな血の塊が出来た。
「ここと、ここね」
契約書の右下の隅と名前の隣の二箇所。紙に血が溶けていく。
火の精霊『サラマンダー』それがおれの契約相手だ。
続いてアクア。
「い、痛くしないでくださいね……」
「げへへ、どうしようかな」
なんの茶番だ。まあ、すっかり打ち解けたようで何よりだ。
アクアの血も、同じように紙に溶けていく。
水の精霊『ウンディーネ』それがアクアの契約相手だった。
うまく時間が作れたので投稿です。週一の投稿ペースは変わりませんのでよろしくお願いします。




