広い土地とフウの家
フウの屋敷はおれの家のすぐ近くにある。隣という訳ではなく歩いて二分くらいと言った微妙な距離だ。途中に小さい小屋があり、そこは調理場となっている。
おれがこの世界に来た記憶の始まりの時にフウが帰っていった小屋だ。フウの屋敷とおれの家の中間地点に位置し、井戸はその真ん前にある。
家と家の間は石畳の道でつながれており、点在する平屋建ての家全てに通っている。もちろん都市であるファンニルにも繋がっており、フウの所有している敷地を移動するには欠かせない主要な道となっている。
アクアからしてみれば朝来た道を戻っていることになる。ちなみに、フウの家の方向(北)をさらに進むと都市ファンニル、おれの家の方向(南)をさらに進むと釣り場(ウンディーネの泉と呼んでいる)に行くことが出来る。
「フウ様の土地はどれだけ大きいんですか?」
やはりアクアも気になるようだ。おれもフウに聞いたことがある。
「めちゃめちゃ広いらしい。ファンニル国の領地内って言う話だけど、一つの国を持ってもおかしくないくらい広いそうだ」
「ええ!凄いじゃないですか! ぼく、おうちがお城とか宮殿みたいではなかったのでそこまでお金持ちとは思いませんでした! 大きさ的にベネチ村の村長くらいの大きさだったので。メイドさんもレーナさんだけのようですし……。あ! あのケチな村長ですら三人もメイドさんがいたんですよ? 」
「あのケチな村長って何だよ……。まあ……金と権力を持っている男はしょうがないよ」
「?」
アクアは首を傾げている。一応、年齢はフウより年上の17歳ということらしいのだが、見かけが幼い事もあり、そういう事が分からなくてもしょうが無いかもしれないと勝手に納得した。
言ってしまえば村長だからこそ三人いたのだ。欲望に忠実に生きている村長ようであり、少し羨ましくもある。おれの場合、どうしても現代日本の倫理観が邪魔をする。バカになりきれない。
正直、それで良かったりもする。
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フウの家は、おれの家や倉庫や調理場等の建物と同じで平屋建ての家だ。宮殿やお城のような大きく煌びやかな、いかにもお金も持ちといった建物ではない。しかし、木と石をバランスよく組み合わせており、質素ながらも手間がかかっている事は一目で分かる。
少し広めに整備された庭には、花壇と青々とした芝生が綺麗に造られていた。フウとレーナの趣味の産物であり、おれの昼寝スポットでもある。
芝生の上での昼寝ほど贅沢なものはない。
フウの作業場兼部屋はレーナの部屋の隣にある。玄関からアクア、レーナ、フウという順番に部屋が配置されていることになる。
おれは軽くノックをした。
「どうぞー」
フウが軽い口調で返事をする。いつもと変わりない。
おれもフウの部屋に入るのは初めてだった。会うときは、おれの家かフウの部屋の反対にある大広間だった。
「ぼく、緊張してきました……」
アクアの表情が固い。昨日の夜と今日の朝に顔を合わせているはずだが、まだ出会って二日目なのだ。しかも主人とメイドという主従関係になっている。当然の反応だった。
ポンポンと頭を撫でると、
「えへへ」
と微笑んだ。少しだけ緊張がほぐれたようだった。
溢れそうな日の光を抑えながら、ゆっくりと扉を開けた。




