アクアとのオリエンテーション
翌日。
おれの家の前では眩いばかりの笑顔をしたアクアが立っていた。
「おはようございます、ミヤ先生!」
「……おはよう……。眠くないの……?」
最近どうにも目覚めが悪い。寝すぎてるのが原因かもしれない。フウが作った朝食を食べ終えてもなお眠気は飛ばず、逆に腹が膨れたことにより睡魔が襲ってきていた。
「少しは。ぼくは、今日が楽しみで眠れませんでした。へへへ」
アクアがはにかむ。元気がありとても可愛らしい。一緒にいると明るい気持ちになる。しかし、楽しみ過ぎて寝れないなんて、まるで遠足前の子供だな。
昨日、アクアを連れて帰るとフウは驚いた。まさか奴隷を買って帰るとは思わないだろうし、それは当然の反応だった。レーナが簡潔に説明すると納得したようでアクアの住む場所はすぐに用意された。
その場所はフウが生活している屋敷の中で、レーナの部屋の隣だった。おれと同居にならなかったのは残念でもあり、ホっともした。
「何をしたらいいですか? 家の掃除ですか? 晩御飯の調達? それとも……マッサージですか!?」
「そうだなあ……」
教育係を頼まれたのはいいが、正直何をしていいか分からない。「しばらくは遊んでるだけでいいよ」とレーナから言われているが、一人で遊ぶのとは違い、あれこれ考えてしまう。
こんな時にレーナがいればいい考えをもらえたかもしれないが、残念ながら外出中だった。
「……」
「……(そわそわ)(にっこり)(そわそわ)」
うーむ、アクア、すごいワクワクしてるなあ。落ち着きがない。
アクアにしたら奴隷になった初日という事だ。何もかもが初めて。希望に満ちている。
言い換えれば会社に入った新卒新入社員と言ったところだろう。
新卒新入社員にする事と言えば研修、なおかつ初日であればオリエンテーションが定番だ。この広大な敷地内を案内する必要がある。うむ、それが良い。おれもここに来て日が浅いし、案内ついでにフウの家の全体像を把握するいい機会かもしれない。
何十キロのマラソンとか、夢を叫ぶ絶叫挨拶だのが脳裏を掠めたが、わざわざこののんびりとした生活環境をブラック企業化する必要もないで却下した。
「よし、じゃあ今日はフウの家でも探検しますか。これからここで生活するのだし、住んでいる家の全体像を知らないとね」
「探検ですかね! お屋敷だけでもすごい広かったのに、敷地を含めたらどうなるのか想像もできません。楽しそうです!」
「遊びだし気張らず楽しんでいこう。一日かけやるから、飲み物とお昼ご飯を持って行こうと思う。なので、最初の目的地はフウの屋敷だ。今日は屋敷で仕事をしているみたいだし、お昼を貰うついでに職場探検といこう」
「わー! フウ様は大魔法使いなんですよね? どんな仕事をしているんですか?」
「おれもあんまりよく知らないんだよね。あはは」
ここに来て二週間以上経つが、だいたい寝てるか記憶の欠落部分のため、『魔法で何かしている』という事は知っているものの詳しくは知らなかった。なので笑ってごまかした。
「じゃあ、ミヤ先生も見たことがないんですね。それを見られるなんて、職場探検楽しみです!」
何事も前向きに捉えるその姿勢、ええ子やなあ。
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