街にて、裏通り。
「さあ行きましょうか」
馬車の前で待っていたレーナを見ておれは我に帰った。
「そうか、馬車を出すんだからレーナも一緒だよな」
「もちろん」
『酒池肉林』なんて目的で街へ出たいなんて要望をフウはよく受け入れたと思っていたが、レーナも同行するんじゃ当然だ。レーナの前で流石にそんな乱れた姿を見せる訳にはいかない。
「美味しそうなお店でも探して食べて帰るか」
「おや?『肉、酒、女』では?フウ様はそうおっしゃていましたが」
「肉と酒は探すけど、女はいいや。レーナさんいっしょだし」
「ふふ、そうですか。また今度ですか?」
「元々そういうのは好きじゃないし、今後もないな」
「そうですか。なら行きましょうか。美味しいお店を紹介しますよ」
基本表情が変わらないレーナだが、少し安心したように見えた。
そうしておれとレーナは都市『ファンニル』に向かった。
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初めてファンニルを訪れた時とは違い、自分たちが盛り上がりの中心にいないせいもあってか、喧騒の中でもどこか穏やかに見えた。
市場は開いてはいないが、既存の店舗だけでもかなりの数がありそうだった。様々な看板が目に飛び込んで来る。
「お昼まで時間ありますし、少し歩きましょうか」
「そうしますか」
武具だったり、魔法効果が付いた道具だったり、衣類や食材だったり、一つ一つのお店を見て回っていたら日が暮れてしましそうだ。
「気になるものはございますか?」
「欲しいのは大体この前買ったからなあ。レーナは何かあるのか?」
「人形屋さんに寄ろうと思っています。この前の掃除中に服を汚してしまったので、新しい服を着せてあげたいのです」
「よし、じゃあ先にそっちに寄ろうか」
「そんな、ミヤさまが行きたい所を優先してください。あくまで付き添いですから」
「いいから、いいから。レーナが好きなものをもっと知りたい気持ちもあるし」
「……。そうですか。それならお言葉に甘えさせてください。ご案内しますね」
レーナの道案内の元、おれ達は脇道に入っていた。
道が少しずつ狭くなり、段々と太陽の光が届かなくなっていく。2~3階の石造りの建物がひしめき合うように建っており、更に圧迫感を感じさせた。人通りも少なく、ボロボロの服を着た老人が道端で寝転がっている姿も目につくようになった。
「なんだか、ちょっと危ない雰囲気になってきたな」
「はい。でも安心してください。襲われるようなことは少ないですし、何かあっても私がお守りします」
「少ないってことは、たまにはあるってことか。かなり危ない場所じゃないか! なんでこんな場所に人形屋があるんだ?子供のおもちゃみたいな物だろ?」
「今から行くところはお店ではなく、作られてる方の自宅兼アトリエですね。とても精巧な人形を作られる先生なんですが、精巧すぎる人形は禁忌の魔法である『生物作成』に繋がるとの教会の批判もあって、目立って活動できないんですよ」
「そんな事情が……」
そんな時だった。人が集まっている区画が目に飛び込んできた。薄暗いこの場所には似合わない派手な服装と、どぎついアクセサリーを付けた男女の塊。明らかに富裕層と思われる人の塊があった。
ヂリン、ヂリンと鈴音が辺りに鳴り響く。見ると、うさんくさそうな太った男が、その塊の前に立っていた。
「さあ、大変お待たせいたしました。お集まりいただきました淑人の皆様、誠にありがとうございます。今から奴隷市を開催させていただきます!!」




