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魚釣りというか魔物釣り。はじめての戦闘のようなもの。

 『魚釣り』という趣味を実際にやったことがある人はどの位いるのだろう。昔だったらいざ知らず、趣味が飽和した現代ではやったことがない人も多いに違いない。

 おれはそのやったことがない人間の一人である。


 感想を一言で言わせていただこう。


 『暇』


 魚釣りが趣味な方々には申し訳がないが、開始から1時間辺り経過した率直な感想だ。池の中に垂らした糸はピクリとも動かず、おやつにと持ってきた三つのリンゴは既に空になっていた。


「なあ、こんなに釣れないのか?」


 思わず聞いてしまう。いつもはバンバン釣れているのだろうか。


「いつもこんな感じだよ。ね、レーナ?」


「はい」


 ぼんやりと糸を眺めながら二人は答えた。


「そうか……」


 きっと釣りとはこういうものなのだろう。せっかくなのでおれもぼんやりを楽しむことにしよう。


「………………………………………………………………………………………」


 しかし、糸がうんともスンとも言わない。


 釣りが始まった当初のテンションの高さはどこへやら、フウは眠そうにアクビを交えながら足をブラブラとさせたり、風になびく金髪を整えたりしていた。


 一方でレーナは完全に寝ている。寝息がかすかに聞こえてきた。下半身の防御が緩くなっているのか、大きく開いたスリットから、先程まで以上に生足が溢れていて目のやり場に困ってしまった。

 

 しかし、この流れは完全に寝てしまう流れだ。おれは必死に眠気と戦った(負けても別に問題ない)。


 負けるな、負けるな、戦え!(何のために)。


 その時だった。おれの釣竿が大きく跳ね上がった。

 

 反射的に釣竿を掴むと、竿が大きくしなった。すごい力だ。このままだと池の中に引きずり込まれてしまう。


「ミヤの竿にでかいのかかった! レーナ起きて!」


「ふぇ……」


 とぼけた声を出し、深い眠りに入っていたレーナが目を覚ます。


「こ、これは大変なものがかかりましたね」


「頼むフウ、手伝ってくれ!」


 腕がちぎれそうなほどに痛い。離したら楽になるのだが、


『離さないで! 離さないで!』


 という二人の激により離すこともできない。糸よさっさと切れてしまえ。しかし、なんて丈夫な糸なんだ。


「汝の肉体をくさびから解き放て……!いけ、オーバードライブ!!」


 フウの詠唱ともに、おれの肉体が明らかに大きく変化した。外見には出てこないが、筋肉の質が変わった。ありえない程の力が全身に流れこんでくる。


「ミヤ!思いっ切り引っ張るんだ!!」


 言われるがままおれは釣竿を引っ張った。


 ―――――ザッパーーーーーーーン―――――ーーー………


 大きな水の音が周辺に響き渡る。大きな大きな魚……いや牛かっ!いや尾ひれがあるからやっぱり魚か!


 なんとも形容しづらい牛のような魚が水中から空中に飛び出てきた。2メートル?3メートル?いやもっとある。とにかくデカイ!!


「世界を紡ぐ者よ……ウィンド!」


 再び詠唱。

 

 同時に水面に風が走る。強烈な風が吹き、牛のような魚がこちらに流され運ばれてくる。


「家まで運んでもいいけど、せっかくだし近くでみたいな。あの辺に落とそうか」


「そうですね」


「天を目指せし小さな罪人達よ、即刻地に帰りたまえ。グラビティ!」

 

 わずかだが体が重くなるのを感じる。ここまでくればなんとなく理解してきた。今度は重力系の魔法に違いない。地面に叩きつけられる共に辺りの木々が激しく揺れ、叩きつけられる大きな音と共に鳥たちが一斉に飛び立っていった。


 ******************************************

 

 意識を失った生物を眺めながらおれは聞いた。


「あれは魚なのか?」


「そうだよ。魚というよりモンスターに近いけどね。バイソンホエルって名前。最近この池に紛れ込んでたみたいで駆除しようと思ってたんだ。強くはないけど、お魚さん達が生きるには問題があったから」


「そうだったのか……。えらい物を釣り上げてしまったんだな……」


「そうだよ。ミヤはすごいんだよ」


「すごいです」


 フウの言葉にレーナも強く頷いた。


 ほとんどフウがの手柄のような気もするが、褒められて悪い気はしなかった。

 魚釣りというには少し違う気もするが、こうやって大きな獲物を捕らえた時の快感は確かにクセになりそうだった。またやりたい。

 同時に、フウが持っている底知れない力の片鱗も感じる事ができた。少なくとも3つの魔法を使っていたし、この属性だけという縛りもなさそうな感じだった。『キャッシュ』をコントロールしている魔法といい、どれだけの種類の魔法を使えるのだろうか。


「それじゃあ家まで飛んでけー! ウィンドー!!」


 バイソンホエルがクルクルと回転しながら空を飛んでいく。見た目はちょっと間抜けな感じだ。


「帰ったらご馳走ですね」


「そうだね!」


 フウもレーナもとても嬉しそうだ。


「ってアレが今日の晩御飯かよ」

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