『キャッシュ』は一億円の入ったス○カのようなもの。
荷下ろしの作業は昼になる前に終わった。肉体強化の魔法のおかげもあり疲れはほとんどなかった。
作業員の男たちは少し早めの昼食をとっている。彼らには今日届いた『リンゴ』が振舞われ、筋肉ダルマには似合わない乙女な笑顔を振りまき、その果実の甘さに舌鼓を打っていた。
採れたてをすぐ運んでもらったお陰で、リンゴは腐らず無事届いた。
市場の時に食べた味そのままだ。名前は『リンゴ』だが、どちらかといえばやはりモモに近い味だ。とても旨い。
おれは果実をかじりつつ倉庫を見渡す。よく一度の買い物でこんなに買ったものだと感心する。
「ありがとうございました。助かりました」
レーナが隣で、やはり同じように果実をかじりながら言った。
「手伝えることがあったらまた言ってよ」
「はい」
倉庫は静かで、たまに作業員達の笑い声が遠くから聞こえるだけだった。
「レーナは何か買ったのか?」
「わたしはあれを」
指をさす方向を見ると、動物や女の子の人形がたくさんあるスペースがあった。
「あれ、レーナのだったのか。てっきりフウの趣味かと思ってた」
「フウ様も好きですが、わたしのがもっと好きなので」
意外と言ってしまうと失礼なのかもしれないが、大人っぽい彼女だからこそ、そういう風に思ってしまうのだろう。
「武器も素晴らしい物が届いてますね。そうだ、フウ様からいただいた『キャッシュ』は持ってますか?」
『キャッシュ』というのは昨日フウからもらった『ス○カ』のような一枚の紙切れだ。もちろん肌身離さず持っている。ポケットというある意味で最強の金庫だ。
どこにしまっていいのかも分からないので、取り敢えず持ち歩いている。一億ギルを常に携帯している状態だ。
「キャッシュをよく見ていてください」
『100,000,000』という文字が大きく書いてあるだけだ。
「なんだ、なんだ?」
数字がみるみると変化していく。縦回転で変わっていく数字は、なんともアナログ感がでていてかっこいいい。数字は『90,000,000』で止まった。
「武器とリンゴの料金は一千万ギルだったようですね。お金を使うと数字が減りますので目安にしてください」
「便利だな。どんな仕組みなんだ?」
「フウ様の魔法で反映させています。販売価格を申告してもらう必要はあるのですが、術式で自動化されているので、手間をかけずにいくらお金を使用したか分かる仕組みになってます」
「……魔法って傷を癒したり、火や水や風を起こしたりと、そういう使い方をするものだと思ってました」
「普通はそうです。ただ、フウ様は非常に面倒くさがりなので、あれこれ工夫してなんでも魔法でやってしまうのです。もちろん他の魔法使いがやろうと思っても出来ませんが」
「なるほど……」
フウが持っている力が少しずつ分かってきた。フウに限ってという話ではあるが、想像している以上にこの世界の『魔法』は様々なものに利用出来るようだった。
しかし、ついにおれは一千万という買い物の経験者になってしまった。家はもちろん車だって買ったことはない。一番高い買い物は初任給で購入したゲーム機だ。それで大体5万くらい。
人生で最も高い買い物が、まさか剣や弓やら戦闘用の武器になるとは。
使う機会がなさそうではあるが、せっかく購入した武器なので見てみよう。かっこいい武器は家に飾ればいいかな。




