第一幕:学園都市-0-
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茜色に染まる坂を友人と共に登る。
友人は、赤いリボンを揺らしながら坂の上を夕日に向かって駆け上がる。
僕は息を切らしながら、友人の後を追う。
「はやくおいでよ!」そう友人は、坂の頂上で両手を大きく広げて振る。その姿が僕には輝いて見えてとても眩しかった。
やがて目の前に現れるのは、大きな塀と重そうな鉄の大きな門。
「遅いよ」
友人は頬膨らませ汗だくな僕にそう声を掛けた。
この門の向こうには限られた人たちが住む街がある。
どういう条件で、この門の向こう側に行けるかは僕ら【一般人】には分からない。
門の向こう側には何があり、誰が何をしているのか、どう生活をしているのか想像する事すらできない。
門の向こう側に関する情報が一切存在しない。
人々は門の向こう側を『楽園』と呼べば、『牢獄』と呼んだりする。気味悪がる人もいれば、憧れる人もいる。
「優は門の向こうに何があると思う?」
友人が門を背に向けて僕にそう声を掛けた。
「そうだね、魔法の国がきっとあるんだと思う」
僕は友人の問いにそう答え、友人はその回答に「子供っぽいね」って笑って答えた。
まだ二人の制服のサイズが体格に合わない初夏の頃の思い出。
二人一緒に居るのが当たり前だった頃の話。
月日は過ぎ、似合わない黒の正装に身を包んだ僕は、再び茜色に染まる坂を一人で登る。