表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

氷の中の私

作者: 冬野みかさ

氷の中に閉じこめられた私

街中の人達は、凄い発見だと私を見せ物として大きなビルの一階に氷が溶けない

ようにして飾った


私の心はまだ、ここにあるのに

声を出したくても、動きたくても何もできない


人々は私を興味本位で見にくる


泣きたいのに泣けない私


ある日、私を見にあなたがやって来た


友人達と一緒に来たあなたは

「こんな厚い氷に閉じ込められて見せ物にされて可哀想に」

と言ってくれた


初めてだった

そんな風に言ってくれた人は

私は一瞬であなたに心を奪われた


あなたは、それから何度も私に会いに来てくれた

私はそれが待ち遠しくて

いつもあなたを探していた


あなたと話したい

あなたに触れたい

でも厚い氷が私達の距離を遠ざけていた


私の気持ちはつのるばかり

何度も来てくれるあなた


でも

そのうちあなたは来なくなった



何年も月日が経った

私は

あなたを待つのをやめようと思った


しばらくして

私を見に来る人はだんだんと減っていった

私は街の中に忘れられた人形


私を他の場所に移すという話しが出てきた


もう一度だけ

せめて一目だけでも

あの人に逢いたいと私は願った


私を移すという最後の日


あなたは私の前に現れた


でも

あなたは小さな写真の中にいた


あなたの写真を持ってきたのは

あなたの友達だと気付いた


「お前はこの子の事、凄く気に入ってたんだよな。生きているうちに、もう一度

逢わせてあげたかったな」


と、その人は写真のあなたに言った


私は、自分の心を自分を包む、この氷の温度と一緒にした


薄れゆく景色の中で

私は写真の中のあの人の顔を最後に

見つめていた


あなたの顔を見つめていた

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ