4号 パソコンは棍棒より強い
「今度はどんな魔物ですかね?一撃でボコってやるぜ!」
初めての戦闘を一方的に勝利した俺は調子に乗っていた。
街から近い森なので強い魔物なんて出ないだろ・・・と甘い考えでいた。
そんな甘い考えを打ち砕くかのように、3メル(3メートル)はあろう大岩を粉々に打ち砕いて出てきたのは、4メル近い身長でいかにもヤバそうな魔物だった。
後ずさりしながら魔物を鑑定すると
【名前】ニック・オーガ 30歳
【性別】オス
【種族】オーガ族
【職業】農業
【ランク】B
【レベル】58 ▽
おっ、レベルが分かるようになっているぞ。
それと、コイツの作った作物は健康的な感じだな~
・・・なんて余裕ぶっこいている場合じゃないわっ!
ランクBってヤバいだろ。
オーガは棍棒を横薙ぎすると直径1メルはあろう周りの木々がぶち折れる。
バキバキと音を立てて折れる。
オイオイ、何てパワーだよ。
一撃マトモに喰らったら死んでしまうぞ。こりゃ。
幸いにもオーガは右目が潰れているので、右側に回りこみパソコンで膝を思いっ切りぶん殴ってやった。
ダメージはあったようだ。オーガは雄叫びを上げながら棍棒を振り下ろしてきた。
俺を視認出来てはないようだが、大体の居場所は分かっているようで頭上直撃コースだった。
大岩が粉々に砕かれたシーンを思い出し、吹き飛ばされるのを覚悟しながらパソコンで棍棒の一撃を受け止める。
あれ?
衝撃はあったものの、十分に耐えられる程度に衝撃が緩和されたぞ?
これは使えるわ。女神ちゃんマジ感謝、二度と魔女なんて言わないから。多分。
パソコンで防御さえ出来れば攻撃は受け止められると知ったので、動きが遅くて単純な攻撃パターンのオーガ相手なら何とかなりそうだ。
攻撃、攻撃、防御、攻撃、攻撃、防御・・・といった感じで闘っているも、オーガの生命力は凄いようで絶命する気配が無い。
さて、どうしたものか?
魔法でも使えれば良いのだが、女神ちゃんからは「戦闘に関しては実践で経験してくださいね~」とテキトーな説明をされていた。
あの魔女め!肝心なコトを説明しないなんて使えないやつだな!
「火球で焼きつきせ!ファイア・ボール!!」
パソコンを左脇に抱えて、格好良く右手をかざして詠唱してみたが駄目だった。
魔法の気配が全く感じられない。
・・・仕方ない。地道にぶん殴り作戦でいくか。
パソコンでぶん殴りつつも魔法を詠唱するのは忘れない。
「メラメラ熱いよ。ファイア・ボール!!」
「ビリビリ痛いよ。サンダー・ボルト!!」
「ガクガク寒いよ。アイス・スピア!!」
駄目だ、魔法が発動する気配がない。
あのクソ魔女め!少しくらい戦闘に関する説明があっても良いだろうに。
「ファイア!」
詠唱が面倒になった俺は魔法名のみ唱えてオーガを殴りつけたところ、身体から何かが抜けていくような感覚と共にパソコンのキーボードが壊れてキーが何個か飛んでしまった。
ヒヒイロカネ製なのにショボくね?
てか、発狂してキーボードぶっ壊したガキみたいで恥ずかしいわ・・・と、ヘコんでいたら
|「F」「I」「R」「E」「!」《ファイア!》
壊れたと思っていたキーが空中に浮かぶと、一点に集中しだして大きな火球となった。やった。魔法が発動したぜ!
俺はすかさず軽快なバックステップでオーガから離れて、火球をぶつけるようにイメージすると凄まじい爆音と共にオーガの上半身が消し飛んだ。
ふう・・・
何とか勝てたが、パソコン壊れちゃったな~
と思いキーボードを見ると、壊れたはずの「F」「I」「R」「E」「!」キーが何事も無かったように復活していた。
「ん~。どういうコトなんだろうな?要検証だな。」
それから俺は出来る限り検証してみた。
小一時間ほど検証してみて分かったのは以下の内容だった。
1・一度に発動できる魔法はキーがダブらないこと
※ファイア(FIRE)は発動するが、ファイア・ボール(FIRE BALL)は「L」ダブっているので発動しない。
※ローマ字入力でも同様。ファイア(FAIA)FAIYAは「A」がダブっているので発動しないが、アイス(AISU)などは発動する。
2・ビックリマーク「!」を入れると威力がアップする
※消費魔力もアップするが「!」の重ねがけは1の理由で発動しなくなる。
3・発動時に壊れた(消費した)キーは元に戻る
4・相手に直接打撃を加えなくても発動する
5・「F5」キーで連続魔法が打てる
※魔力消費は2倍以上で、1の理由で重ねての使用は無理。
6・かな入力モードでも使える
かな入力モードに慣れてないので少ししか検証していない。
7・カッコイイポーズを決めても威力は変わらない
※但しブサメンに限る。イケメンではどうなるのか?生まれ変わってから要検証。
他にもありそうだけど、魔力を消費しすぎて疲れたので後日ってことで。
まぁ、検証してみて分かったコトを一言で言えば
パ ソ コ ンは棍棒よりも強い
ということだった。
それからは魔物にも遭遇せずに無事に街へと付いた。
スペルミスがあるかもしれませんが、細かいツッコミは無しでおねがいします。