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うぅ。僕、魔法少女になっちゃった……  作者: 鍋島而今
第1章 バルク<冥土の土産>にようこそ!
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第2節 『説明パート……って、いいかげんすぎない? 転送場所に到着だよ、到着』

空間転送(トランスファー)>が終わるまで、この世界について復習しておこう。


 僕が生きている<新日本(しんにっぽん)>という国家では、MOD(モッド)――Mousouryoku Over Dozing――という不思議な力が存在する。

 有り体に言うと、<魔法>のようなものだ。

 怪我を治癒したり、武器を召喚したり、まさにいま僕が行われている空間転送したりと、ファンタジー世界の魔法そのものと言ってもいいだろう。


 MODの使用者をプレイヤ(Prayer)と呼ぶことから明らかなように、MODはプレイヤの妄想を具現化したものである。

 このプレイヤの妄想を<主妄想力(トニック)>と呼ぶ。

 しかし、ただプレイヤが念じて主妄想力を強くしたところで、所詮は妄想である。

 そう、()()()()()()として表出させる手順が必要になるわけだ。


 そこで、プレイヤの主妄想力を飛躍的に高めるために用いられるものがMODE(モード)――MOD Element――である。

 MODEには、使用するMODのイメーヂに近しいものが望まれる。

 例えば、治癒系MODなら包帯や絆創膏、切削系MODならドリルなどだ。

 これは、MODEには固有の<副妄想力(サブドミナント)>が含まれており、MODとして発現させたいイメーヂに近ければ近いほど主妄想力を高める――このことをMODの循環係数が高いという――ということがわかっているからだ。


 ……まぁ、総裁のようにMODEなしでMODを使用できる<超変態(ハイテンション)>なる希有な人もいるけど。


 さて、MODには難度が規定されており、


 神昂度(スペシャルホット) > 超昂度(ヴェリーホット) > 高昂度(ホット) > 中昂度(セミホット) > 低級(マイルド)


 の順番になっている。


 無論、左にいけばいくほど、高い精神力ないし妄想力を要する。また、プレイヤ本人の危険性をも孕んでいる。

 ただ、その分、効力の及ぼす範囲がはるかに広く、また、威力なども恐ろしく高いものとなる。

 僕のように軍務に就いたばかりのプレイヤは、高昂度のMODの使用がせいぜいだ。

 中等部で必修の<MOD力学>の実習においても、高昂度までこなすことができれば、S評価がもらえることになっている。


 現在、判明しているMODの種類は、1,000を越えている。

 なので、体系化して学びやすくしているわけだが、プレイヤによって使用できるMODのタイプに得手不得手がある。

 そこで、軍務に就く前に、スキルチェックと呼ばれる自身のスキル判定試験が行われる。

 このスキルチェックをもって、近接格闘に特化したMODが得意なプレイヤ、支援MODが得意なプレイヤ、オールラウンダーなプレイヤ、などなどおおよそ128ものスキルにわかれることになる。


 で、数あるスキルの中でもレア中のレアって言われるスキルが……うん、信じたくないけど、僕がなっちゃった<魔法少女>ってわけ。

 まったく、まいっちゃう!


 っと、そろそろ着くみたいだ。


 ……でも、この空間の色彩偏移はいただけないよね。


 すでにキャンバスは一系統の色彩を湛えていた。

 ――ピンク系という。

 通常、MODはプレイヤの置かれている環境、思考、イメーヂ、などが視覚化される。


 だとしたら、総裁は仕事中に一体何を考えているのってば!

 ピンク色を基調としたキャンバスには、アニメ調の女の子たちの姿が描き出されていた。肌の色がそれこそピンクや肌色といった薄淡い色を主色とした類いの。

 その中には、レイティング的に危ないものもチラホラと散見される。


「もう、ヤダよぉ……」

 僕が女の子だったらセクハラものだよね、なんて考えてたら、終焉は突然やってきた。

 光彩が明確なイメーヂに変化し始めたのだ。

 そう、抽象的な事象が具体的な現象として、現実世界に析出される時がやってきたのだ。


「うりゅ、あれはどこだろう?」

 描き出されている妄想世界の中に大きな鏡が据え置かれ、その中の像が鮮明になっていく。

 地球、日本列島、新東京、………………。

 そしてついに鏡が割れた。

 ダイナマイトが爆発したかのような轟音が頭の中で鳴り響き、妄想世界から現実世界に一気に引き戻される。


 ――って、ちょっと。転送場所が空中なんですが!?


 直後。


「うわあああぁぁぁぁぁーーーーーー!」

 体が急速にGを覚え、高さに比例した加速度をもって落下する。

 どっしぃーーーーーグッキンポッキンーーーーーーん!

「痛っ!」

 受け身が取れず、お尻からフローリングとおぼしき床に着地する僕。

 ――なんか変な音が混じってたような気がするけど、僕の体は大丈夫なの?

 痛むお尻をさすりながら視線を上げると、僕を吐き出したトリプルトライアングルの紋様が次第に小さく消えて行くさまが見てとれた。この場所で間違いないらしい。


「うぅ、魔法少女になっちゃうわ、腰は痛むわ、もう最悪だよぅ……」

 僕は、ちゃんと軍務をこなしていくことができるのだろうか?


 僕の先行きは、今たどり着いたばかりの部屋と同じく暗かった――

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