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学園自体、この時間にもなると窓からはいる微かな灯りと非常灯用の看板のみしか無い為、薄暗く気味が悪い印象を受ける。
シンジは学園内で夜と連想し、幽霊と思いつくも“大丈夫”と言い聞かせながら歩み続ける。だが、ありがたいことに昨日みたいに謎の生物に襲われることはなかった。
「今日は昨日みたいに出てこないんだね……」
辺りをウロウロ見ながら注意深く行動をとる。
「昨日の謎の生物はお前のおかげで無事解決することが出来た。次に出現するまでには少し時間がかかると思う」
「なぜ?」
「私たちも詳しいことはよく分からないのだけど、向こうの世界で力のある謎の生物じゃないと、こちらに来ても私たち人間に対して悪戯のような攻撃とかは出来ないみたいなのよ」
巡回中に先頭をきっていた京が突然歩くのを止めた。
突然の出来事に察知出来なかったシンジは京の背中にぶつかる。
「どうしたの……?」
ぶつかって頭をさすりながら京の背中越しに見た光景は、ハロウィンに利用されるカボチャのランタンみたいな置物が無数に空中を漂っていた。みんな同じ顔でニコニコしながら優雅に漂っているのを見て少し気が抜けそうになる。
シンジがそんな状態とは知らずに京は冷静に指示をする。
「俺が発砲しながら突入する、その後世那とシンジは俺の後に続いて攻撃態勢に入るように……って、聞いているのか?」
京に問いただされ我に返るも、どうしてもこの状況を飲み込むことが出来ない。
「……少し聞いても良い?」
「なんだ?作戦に不満か?」
「ううん、そう言う事じゃなくて……、俺にはあの謎の生物がどうしてもハロウィンとかの飾りで使われるカボチャの置物にしか見えないんだけど……」
シンジの発した言葉の意味が分からず戸惑う京。そんな彼を察知してか世那がすかさず探りを入れる。
「シンジ君、私たちにはあそこにいる謎の生物自体、丸くて赤い物体が宙に浮いているのしか見ることが出来ないの。シンジ君にはそれがハロウィン用のカボチャの置物に見えるということなのよね」
「はい……、って、えっ!?カボチャ、見えないのですか?」
同じ物が見えているとばかり思っていたシンジは少し自分の目を疑い始める。
――― 俺には、あんなにはっきりとカボチャの置物に見えるのになぁ ―――
「とにかく、あそこにいる謎の生物を滅する。行くぞ!」
かけ声と同時に京が2丁ある拳銃を駆使しながら突入していく。それを見届けた世那は京の後に続き、華麗に舞いながら武器である薙刀を突きながら攻撃していく。
そして2人の武器もシンジが使用する武器と同様に銃口や矛先から閃光が発しられ、謎の生物に命中すると一瞬でその場から消せるということが証明された。
2人の華麗な攻撃をまじまじと見ていたシンジにミサトから通信が入る。
「シンジさんも何しているのですか?早く皆さんと一緒に攻撃して下さい」
「おおおっう!分かった……」
シンジはブレザーの内ポケットに入れておいた小刀を手に持ち、鞘から刀を取りだし構えると刃渡り50cmくらいに変化した。久遠先生に言われたとおり変化する刀に少々おびえつつ謎の生物目がけて斬りかかる。
「斬!」
シンジが発した言葉と同時に閃光が発しられ、昼間見た光景と同じように、光りつつまれながら謎の生物のみその場から消えていく。刀を持った手は少し震えており恐怖に駆られているのを実感する。
――― まだ1匹しか倒してないのに、こんなに手が震えるなんて ―――
「大丈夫か?シンジ!」
「あっ、……はい、大丈夫です」
いつも癖で“大丈夫”と叫んでしまう。
しかし叫んだ以上は全うするしかないと気持ちを切り替え、謎の生物にどんどん斬りかかり、数分後には跡形もなく消し去っていた。シンジは肩で息をしながら何もいなくなった通路に安心する。
「とりあえず、ここは一安心だな。シンジも初日からご苦労だったな」
「あっ、はい……。こんなに大変だとは思わなかった……」
京と世那は涼しげな顔でシンジを見つめるも、シンジは緊張の糸が切れたようにその場になし崩れた。そこにふらりと久遠先生がやってきた。
「京、世那、そしてシンジ君、本当にお疲れ様でした」
久遠先生が違う通路から生徒会メンバーに声をかけてきた。シンジは突然のことに更にビックリし余計に腰を抜かしてしまった。
「驚かせるつもりは無かったのですが、タイミングが悪かったですね」
「久遠先生、この場所よろしくお願いします」
世那に言われ、久遠先生は通路の中央に立ち懐から扇子を取り出し広げる。真っ白い扇子には特に何も模様とかはあしらわれていない。
「灰身滅智」
久遠先生が扇子越しに一言唱えると扇子が黄金に光り輝き、その場の空気を断ち切るかの如く横に仰ぎ切る。光り輝いていた扇子が元の白い扇子に戻った。
特別部屋中が光り輝くとかはせず、する前とした後では何も変わらないように感じていた。
「久遠先生は今何をされたのですか?」
「良い質問ですね……。私が今行った一連の作業は、謎の生物が困惑するような仕掛け魔法をさせて貰いました。ここに万が一、また新たな謎の生物が入ってきたとしても、こちらに来た意味を忘れ、向こうの世界に帰るように仕向けさせるのです。そうすることで私たち人間に影響を及ぼさないよう対策をしているのです」
「でしたら、それを学園中になさったらどうですか?」
「そうできたら、そうしたいのですが……。この作業を行うには少しばかり精神力を削られてしまい、出来るとして1日2回が限界です。その上、この仕掛け魔法には期限がありまして、1度でも謎の生物が入った場合は勿論、入った形跡がない場所でも1ヶ月後には効果が薄れてしまうのですよ」
久遠先生はシンジに分かって貰うように丁寧に説明し、シンジも久遠先生の言葉に納得したようだ。
「では、本日はこのくらいにして帰りましょう、今現在夜の9時を回りましたので…」
時計を見ると確かに午後9時10分を指し示していた。急いで帰り支度へと向かう生徒会メンバー。シンジもようやく重たい腰を上げて荷物を取りに行き、自宅へと帰ることとなった。
――― この日以来、シンジは生徒会のメンバーに所属することになり、土日以外は謎の生物を退治することとなった。そんな日々を1ヶ月過ぎようとした頃から、刻々と状況が変化しようとしていた ―――。




