9.寝ぼけた俺とオミ
「ただぁいま」
バタンとドアの音と共に、オミの声。半分うとうとしてた俺は、そのままぼけっとオミを待った。
トントンと階段を上る音がして、パタパタ廊下を数歩。
カチャ。
「なんだ、寝てたのか?」
とオミ。俺はなんだか、無性に嬉しかった。
「ちょっと、うとうとしてただけ」
言うそばからあくびが出る。
「眠いなら寝ちまえよ」
「いや、いい」
とは言うものの。近くに座ったオミの所に這い寄って、もたれかかる。
「重い」
「まぁまぁ」
うん、人の体温が気持ちいいんだよな。特にオミは。
「なぁ、ミィ」
「んー?」
返事はしたけど、もう半分頭は眠り込んでる。
気持ちいい。
オミぃ、大好き……。
「そりゃどうも」
ああ? 俺、口に出したっけ……?
へばりついているから、オミの温かい感情が流れてきて、眠気と相まって優しく包まれてる気分になる。すごく安心できる。
“……これだから、母さんが心配すんだよなぁ”
笑ってオミが言ったようだった。
目が覚めると。朝だった。
「嘘っ?!」
飛び起きついでに、布団とオミの腕を跳ね飛ばした。
「いてぇ……」
オミはそのまま唸って寝返りを打つ。
時計は5:48。
おいっ、俺は12時間も寝てたのか? 晩飯も食わずに?
「なぁ、オミ」
布団はオミが掛けてくれたんだろうが……この状況はちょっと……なぁ。ぴったりくっついてたのは、流石に寒かったからだろう。何故に二人で1枚なんだか、理解できん。
「腹、減んない?」
「……減った。朝かぁ?」
寝起きのオミは、結構支離滅裂だ。
今日は俺が学校行く日だぞ。数学が……予習してねーや。
バタバタと台所に駆けこむ。とりあえず、簡単にチーズトーストと目玉焼きを用意してオミを呼ぶ。別にこんなに早く食べる必要は、オミにはないが、、一緒に食べないと面倒だし、何より腹ぺこだ。
あっという間に食べ終わり、片付けはオミに任せて数学だよ。
くそ、なんでこんなもんがこの世にあるんだろう?
それでも、なんとか予習を済ますと7:50。そろそろ学校に行く時間だ。
「んじゃ、行ってくる」
「ああ……あ。昨日博海に会った」
こいつっ!
「今頃そんな大切な事っ!」
「まぁまぁまぁ」
詰め寄る俺に、オミはあっさりホールドアップ。……いいけどね。
「仕方ないだろ。昨日が昨日だったんだし」
「そーだけど。今、教えろ」
力一杯、不満顔を作ってオミに言ってやれば、奴は黙って俺の額にコツンと額をつけた。
以前はいつもこうやってたっけ。
オミの昨日の記憶――きっちり博海に関する事実だけ。上手いもんだ。
「以上」
「OK」
そうして俺は学校に行く。