6.俺たちの昔話
昔々、と言っても16年前までか。父さんと母さんは、某国にある某研究所に所属していた、らしい。そこは色んな研究をしている所で、2人は超能力に関するグループにいた。
端折っていうと、エスパーを作り出す方法を研究してて、なんでか母さんのお腹にいたオミがエスパーになってしまった。まぁ、元からオミに能力があった可能性もあるけど。
で、それを知った研究所側は、オミのクローンを作ることにして(その研究所の他のグループでの研究成果らしい。すでに何回か成功例があったそうだ)、で、その結果が俺。
ただ、さすがに両親は我が子を実験台にしたくなくて、そこから逃げ出した、のかな? ここらへんは曖昧なんだけど、とにかく今に至る。
そんな訳で、俺には戸籍がないし、エスパーだし、クローンだし。人にばれちゃまずい存在なんだ。
父さんの話が終わって、今日はとりあえず帰ることになった。
「オーミ。一緒に帰ろ」
「やだよ」
後ろからへばりついた俺を、オミは冷たく払いのけた。
「今日は午前中、丸々お前に取られたんだから、午後くらい遊ばせろ」
「俺も遊びたい」
「お前は家でな」
あ、冷たい。
うん、でも、まぁ、仕方ない。
相反する気持ちが同時に起こって、……結局、俺は渋々諦める。毎度のパターンだったりする。
「じゃ、先に帰ってる」
「場所、間違えんなよ」
「大きなお世話っ!」
怒鳴ってから集中。場所は――俺たちの部屋。
せーのっ!
閉じてた目を開ける。無事、俺たちの部屋ん中だ。
はーっ。
疲れた。
安心したら力が抜けた。座り込んで、そのまま転がる。
俺はあんまりテレポートが上手くない。少なくともオミに比べて。オミの場合、難なくテレポートしちまうが。昨日、スリッパを投げつけた時も、なぁ。気合も予備動作もなしで、あっさり跳んでみせる。
念動力や透視はほとんど出来ないし、予知能力は皆無。まぁ、これはオミもだけど。
テレパシーだって、オミ以外には伝わらないし、読むなんてもっと無理。
脳の相似形は、テレパシーがなくても通じやすいっていうし。俺って無能……。
あ、いかん、また暗くなっちまう。
……いいんだ、いいんだ。これ以上、常人離れしてたまるか!