40.俺のクリスマスパーティ前日
中間があって、合唱祭があって、持久走大会があって、期末があって。
バイトがあってデートがあって。
ホント、あっという間に2学期が終わりそうだ。
何のかんの言って、頑張ったよなー、うん。
ノリのいいクラスで、目立たないように最大数の位置に紛れようとすると、意外と大変でした……手が抜けなくて。
博海とつるんでて、上條と付き合ってんだから、もうそこから全然目立たないってのは無理なんだけどさ。まぁ、最小限にしたかったわけで。
……最小限になってるといいな、って希望的観測でしかなかったかな……。
「なー、どうしてこうなんの?」
「キリヤは黙ってなさい」
「えー……」
抗議もあっさり流され、くすくす笑う女子に囲まれているこの現状。
「どう考えてもおかしいだろ。人選間違ってるって」
「んー、まぁ、ちょっと彼女には悪いかなって気はするけどさ」
「だろ?」
「でも、うちの男子で1番似合いそうだし」
「そうそ。博海君とコンビ組ませるなら、やっぱキリ君でしょ」
あれー、そっち?
なんでか、演劇部のかつらと化粧品で女装されてんだよ。
逃げようにも、異常に固い結束の女子に隙はなかった……。
「でもさ、博海の横なんて、希望者多そうだけど?」
「判ってないねー」
ちっち、と指が目の前で振られる。
「競争が激しすぎるんだよ、狙ってる子が多すぎて」
「誰が隣にいても、絶対揉めるよねー」
「だから、男子の方がマシ、って事」
一応理屈はあるんだな。全然嬉しくないけど。
「そりゃ、文句のつけようのない子とかだったら別だけどねー」
「うんうん。上條さんとかね」
え!?
「絶対ダメ」
反射で否定。
一瞬静まり返ったかと思ったら、爆笑の渦。
「だから、キリ君がいいんだよっ」
……涙流して笑うなっ。
明日の終業式の放課後。有志によるクリスマスパーティがあって。
当然『政臣』としては上條と行く筈で。
なのに、そこにクラス対抗仮装カップルコンテストが持ち上がった。
全然関係ないと思っていたのに、優勝を狙う連中がその出場男子に博海を持ってきたところから、あれよあれよと俺が女装する羽目になって。
「で、このコンセプトは何?」
かつらは縦ロール、化粧はキツめ、衣装はドレス。
「執事とお嬢様だよ~」
「お嬢様……ケバい」
「えー、いいんだよ、イケメン執事とツンデレお嬢様っ。すっごい、いいじゃん~っ!」
「似合う~っ!」
……どうやら脳内で色々と補完・修正がされているらしい。
「って事で、キリヤ君、無理して笑う必要ないから。むしろ、笑わない方向で」
まぁ、笑えって言われたって笑えねーけど。
「でさ、それ、明日だろ? 今日は合わせるだけって言ってなかった?」
「あ」
そこで固まんなよ!
忘れてたな? すっかり本番気分だったな?
「あー、ほら、博海君と並べて最終チェック? 不都合があったら、明日までに修正するし?」
疑問形で答えんじゃねぇよ。
「はいはーい、お待たせしましたーっ!」
じゃじゃーん、と押し出されて、まだ残ってた多数のヒマ人たちの注目が痛い。
いや、どよめかなくていいから。
「マジ? これ、キリ?」
「すげーじゃん! 全然違和感ねぇし。っつーか、これってありだよなぁ」
「ありあり! キリヤって知らない奴から、告られるって、絶対!」
「そんなん、いらんわっ!」
思わず喚くと、ああーと失意のどよめきが。
「……男の夢が壊れる。キリ、黙っとけ」
「黙ってると、赤くなった可愛い女の子に見えんだからさー」
「見えたくねぇよ!」
「いやいや。可愛いよ?キリヤ君」
「そうそう。渾身の力作だもんね。可愛くない筈ないんだからね?」
喚いても取り合ってもらえない、どころか、なんだか背後に色々怖いオーラを漂わせた女子が詰め寄って来るよ。
ううっ、酷くねぇ?
「泣いちゃ駄目だよ。化粧が落ちる」
「じゃあさ、執事の博海君、このお嬢様よろしく~」
「あー……はいはい」
苦笑いした博海が横に来た。黒の三つ揃いに蝶ネクタイ。
「俺もそっちのが良かった……」
思わず恨めしげな声になる。
「まー、そうだよなー」
「そうだよ! だいたい俺が女装とか、色々おかしいだろ」
「んー、まぁ、深く考えたら負けって事で」
「深く考えなくても、負けてる」
そもそも、どうしてこうなる。
明日、オミもこの格好するのか? 上條の前で?
……なんか、色々終わった……。




