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【完】紫微綾の事件簿(百合×探偵×バイオレンス)  作者:
4章 Shadowの深淵

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病院からの脱出

金山中央病院・10月25日 夜)


 目が覚めると、白い天井と消毒の匂いが広がっていた。

カーテンの隙間の外は夜。金山のネオンが窓にぼんやり貼りつき、鼓動のリズムに合わせて滲んで見える。


 嫌な夢を見た。男の影、鎖のきしみ、低い嘲笑。十年前のコンテナの闇が事故の痛みと混ざって、胸の底を小刀でなぞるみたいに抉ってくる。倉庫で捕らえた男の横顔が、夢の中の影と重なる。あの組織の残党。舞を引き戻すことは、私自身に付いた十年前のタグを切り落とす作業だと、ようやく体の芯で理解し始めている。


 シーツが汗で肌に張りつき、肋骨の奥がまだきしんだ。

反対にこの数時間の睡眠で結構寝れたような気がした感じだった。夢は最悪だったけど。

原点を再確認できたのはいい事だ


 ベッド脇の棚に、私のスマホの画面は「21:03」と表紙されていた。

その横に、綺麗な字のメモが折られていた。玲奈の几帳面な筆致。


『突入は綾の代わりに私がやる。戻るまで体を癒しときなさい ——玲奈 (予定24:00)』


 私の口の中で、短く乾いた笑いが生まれて、すぐ消えた。嬉しいけどありがたい。

それに警察では潜入訓練は受けてないはずだ。

私は櫻華の裏に当たる潜入までは教わっているから良いのだけど

個人的にも、任せられない。玲奈の親父さんに悪い。

こんな事で娘の職を無くして路頭に迷わせたら恨まれても仕方ない。

実際にまだ生きてたら、笑って仕方ないなぁとか言いそうだけど。


 テーピングの端を確かめ、ベッド柵を握って上体を起こす。

胸の中で疼く恐怖を感じる。

良い感じ方だと思う。

確か師匠に言われたっけ、「恐怖は感じろでも、必要以上には感じるな!」

いわれた当初はあまり理解できなかったけど、何となくわかる。

肩の筋肉をひとつずつ緩め、足の裏で床の冷たさを確認する。

さて行こうか。


(病院廊下・夜9時30分)


 ドアを少しだけ開け、隙間から廊下を覗く。

ナースステーションの灯り、巡回の足音。私はタイミングを測ってスリッパの音を消すように踵を浮かせ、非常階段へ滑り込む。

途中、ストレッチャーの車輪が近づく気配。私は自販機脇の陰に体を寄せ、呼吸を一拍止めた。

視界の端を白衣が通り過ぎる。足音が遠ざかってから、階段を一段ずつ降りた。


 エレベーターの鏡はを見ると、銀の髪は乱れていた。

招かれざる客かもしれないが、身だしなみはしっかりとしないとね。


(駐車場~事務所・夜10時)


 タクシーを拾い、事務所へ向かった。

いつも通りのネオンの光は安心感を与えてくれるので私はこの景色が好きなんだろう。

到着して、雑居ビルの階段はいつもより一段多く感じる。


 雑居ビルの階段を上り、すりガラスの扉を押す。

紙の匂いと換気扇の低い唸りが、いつもの安心を与える。

デスクの引き出しやクローゼットから突入道具を取る。短刀、隠しカメラ、ワイヤー、そして携帯食の蜂蜜の袋。

肩の包帯がずれないよう調整し、黒いコートを羽織る。


 鏡で自分を確認する。

痛みの影はあるが、いい感じだ。


 10年前の鎖を思い浮かべる。

私を縛り付けてる鎖を今こそ壊す。

「さぁ、けりをつけるのは私だ」


 事務所のローテーブルに座り、蜂蜜パンをかじる。甘さが喉を滑り、ざわつく心を少し落ち着かせる。

本当にこの甘さからのコーヒーを飲むといい感じなんだよね

味に満足を覚え、1週間の調査のメモを広げ、頭を整理した。

新栄のクラブ『シャドウ』の地下、配線が避ける部屋。VIPリストの偽名、ボスの影。オークションの準備で少女たちが港へ運ばれるルート。みんなの努力が、ようやく実を結んだ。

玲奈のデータ、千景のハッキング、凛の情報網、笹原さんの伝手。

事故の痛みは、アドレナリンが解決してくれる

私は、自分の事務所に鍵をかけ、タクシーに乗り、新栄野現場付近で降りた。


 良く現場まで車とかで行くのがあるけど、かなり無謀だと思う

車なんて結構目立つし、ここら辺の表通りは人が多いので、やはり歩くのが一番だと私は確信している。



(新栄 クラブシャドウ付近 夜11時)


 ネオンの光が夜の闇を切り裂き、重低音が胸を震わせる。

突入現場クラブ『シャドウ』の裏路地に到着すると、玲奈と凛がいた。

ドローンも飛んでるので、千景も待機しているのだろう。


 玲奈が地図を広げ、凛がタブレットを操作中だ。玲奈の目が疲れで赤く、凛の革ジャンが夜風に揺れる。

全く私が心配で看病して連日の疲れが外目で良く見える。

本当にこれで突入しようと思ったもんだ。

どうせ、私が車に(ひか)れたから冷静な判断も低下してるんじゃない。

3人もいてそれは無いでしょ。

ブレーキ役の玲奈がGOなんだから無理もあるのか?


「おい、お前たち何をしている」

低い声で3人に声をかけると、振り向くのだが、遅い。

もうここは敵のテリトリー、声かけてくる奴なんていない。

怪しいものはとりあえず倒したほうが速い。

私の持論だけど。


 私は玲奈の顔にパンチを寸止めで止めた。

風を切る音が路地に響き、玲奈の息が止まる。

彼女の目が驚きで広がり、凛がタブレットを落としそうになる。

千景のドローンが上空で旋回音を上げる。


「そんな腕では、突入は任せられないよ」


「綾」

3人の声が聞こえてきた。

玲奈の声が震え、凛の目が鋭く光る。千景の声がイヤホンから

「綾、無茶しないで!」と響く。


 声うるさいって全く、ここは適地だよお嬢さん方。

心配はわかるけど、今は止まれないし、終わったらゆっくり休もう。

でもこの3人仲良かったんだなぁって今更そう思った。

私と割り切りの関係の線で知り合ったんだけど、いつもは顔を合わすと仲はいい感じはしなかったんだけど、大人の対応で目に見えて喧嘩とかは無いけど、今はすごく仲良さそうに見える。


「私が行くから、みんなは計画通りに。それに現役警官が潜入したら、職なくなる可能性あるし、そうなったら、親父さんに悪い。他はバックアップしてね。それに倉庫で捕まえたやつ、10年前のやつだった。いう事は私がけりをつける事件なんだ」


 私はそう説得して、短刀を握る。

玲奈の目が揺れてた。

「綾、無茶、事故であなた自身コンディションも悪いのに、お父さんも亡くなって、貴女迄!」

そんな精神状態で行ったら、良いおもちゃになるのが目に見える。


 そう思ってたら、凛が玲奈の肩を優しくさとすように、叩いた。

「潜入技術が一番高い綾の判断だ。それに従おう。それに今のあんたは普段の冷静なあんたじゃない。失敗の可能性が高い。」

流石凜、こういう時は本当に助かる。


「私たちは計画通りバックアップに回る。千景、カメラをハックしろ。」


「了解。ドローンでルート確保するわ。」

ドローンから、千景の声が即座に反応した。


玲奈がノートを握りしめ、私を見つめる

「わかった。港のオークションは私が抑える。生きて帰ってきなさい。」


「うん、死ぬ予定は、残念ながら私の記憶にはないから大丈夫」


 めっちゃ3人からは心配されたけど、最後は凛がまとめてくれた。


「うちの暴れん坊のお嬢様がケリをつけたいらしい。私たちは最後まで、影で支える。多分これが成功率が高い」

誰が暴れん坊のお嬢様だ!あんたら自分で鏡を見ちゃ事ありますか?

全く時代錯誤かもしれないけど、あんたらの仕事基本男性中心だからね全く。

私は心の中で反論した。

時間ないしね


 私はコートの襟を立て、時計を見て、裏口の隠し扉へ向かう。

ネオンの光が背中を照らし、鎖の夢が遠ざける。

少年少女をいいように使う者たちと、10年前の私も、今日でケリをつける。


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