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2.勧誘作戦

 「「お邪魔しまーす」」

 家の前にいた2人は元気よく挨拶をし、靴を揃えている。


 「ここ私の部屋なので好きに座ってください。お茶持ってきますね」

 

 占奈は2人を自室へ案内し、キッチンへ向かった。

 あの背の大きい女の子って、昨日私を庇ってくれた人だよね。やっぱり昨日のヘビって夢じゃなかったんだ。よかったぁ、いやよくないけど。


 「アイスティーでも大丈夫ですか……ってなにしてるんですか?」


 部屋に入ると2人は、どこから取り出したのか大きめのホワイトボードを部屋の中央に設置していた。


 「あっごめんなさい、勝手に置いちゃって。師匠これやっぱり大きすぎるわ」

 「大きい方が何かと便利かなって」

 「えっと……なにかやるんでしたっけ?昨日のことよく覚えてないのに2人のこと案内しちゃって……」


 背の高い子は驚きの表情をしていたが、小柄な子は『ほらね』って目を彼女に向けていた。


 「やっぱり昨日のこと覚えてないか。君顔色悪かったし、白目向いてたもん」

 「占奈さん!私のこと忘れちゃったの?あんなに仲良くお話したのに!」


 ……え、私とこの人が仲良くおはなし?しかも白目で?


 「仲良くって……九千凪クチナが一方的に話してただけじゃないか。『さっきのあなたカッコよかったわ!』とか『あなたのこと一生尊敬するわ!』とか」

 「てっきり無口でクールな人だと思っていたのよ。気付けなくてごめんなさい」


 どうりで記憶が飛んでいたわけだ。あの巨大ヘビを倒した後気絶していたなんて。

 

 「わかった!もう一度占奈さんと仲良くなるために自己紹介をするわ」


 そういうと彼女はやけに大きなホワイトボードに名前などを書き始めた。


 「私は月明ツキアカリ高校1年A組の高橋九千凪タカハシクチナ、11月31日生まれのいて座で趣味はランニングよ!改めてよろしくね、占奈さん!」


 九千凪クチナさんか。とても明るい性格の人だ、昨日の戦ってる時とはまるで別人に見える。

 続いて小柄な子がホワイトボードに文字を書いていった。その低身長故、九千凪の文字よりもかなり下に自身のプロフィールが書かれている。


 「えー、同じく1年A組の田中癒心タナカユウコ、誕生日は1月11日で山羊座だ。よろしく」


 2人は同じクラスなのか、へー……え?

 「ゆ、癒心さん高校生なの!?同学年?私てっきり……」

 

 そんな占奈の言葉に癒心ユウコは暗い顔をして俯いてしまった。


 「……それ昨日も君に言われたよ。アイスティーと一緒にりんごジュース持ってきてたから嫌な予感してたけど」

 「そんなに気にしなくて大丈夫よ。師匠は小さくてかわいいんだから」

 「ぎ、牛乳でよければ……なんちゃって?」


 癒心は怒り、占奈の肩をペチっと軽く叩いた。


 「……自己紹介も済んだことだし本題に入ろう」

 「単刀直入に言うわ。占奈さん、私たちと一緒に活動しないかしら?」


 九千凪が『今日のめあて 占奈さんの勧誘』と書かれたボードを手で叩きながらそう言った。

 活動?2人の素性がどういったものか私は知らないが、昨日のアレを見ている私は楽しい誘いじゃないなと察しがついた。


 「……まだ何も言ってないのにものすごく嫌そうな顔ね」

 「もちろん無理にとは言わない。とりあえず話だけでも聞いてほしい」


 しまった。私の心の声が顔面に視覚化されていたようだ。一旦話を聞いて断ろう、そう思いながら顔を元に戻す。


 「私たちね、特別な力を使って昨日みたいなバケモノを退治してるの」

 「バケモノ退治って……」

 「詳しくは私が話そう。この写真を見てくれ、何か気がつくことはあるかい?」


 スマホの画面にはカラスが映っている。何故かそこら辺にいるカラスよりも不気味にみえる。


 「……羽に斑点がある。これってもしかしてカラス座ですか?」

 「お、よく知ってるな。そうこれはカラス座の星座で、こいつらは体に星座の斑点があるんだ。昨日のヘビだってそうだ」

 「私たちはね、こいつらを『座怪物星ザモンスタ』って呼んでるの。攻撃性が高くてとっても危険だから退治してまわってるのよ」


 この座怪物星ザモンスタと呼ばれるバケモノは1年程前に突如として現れたらしい。2人はSNSでも情報を集めているのだが全くと言って良いほど情報がなく、謎多き存在のようだ。

……というか座怪物星ってthe monsterってことだよね。だs


 「バケモノの説明はそんなところだな。で次は、私や君みたいに特別な力を持つ人についてだ」

 「さっきザモンスタの体には星座の斑点があるって言ったでしょ?実はね、能力者の体にも同じような特徴が出るの」

 「特徴ですか?……えっ!?」

 

 そういうと九千凪はいきなり顔を近づける。少し動くだけで唇が触れ合ってしまいそうな距離だ。息遣いや鼓動が直接脳に伝わり、思わず目を瞑ってしまった。


 「占奈さん、目を閉じていたらわからないわよ。ほら目を開けなさい」

 「……は、はい」


 瞼をあげると目の前に目があった、とても透き通っている目だ。それをみて私はふと気がついた。


 「どうかしら、何か気づいた?」

 「九千凪さんってコンタクトなんですね」

 「そう私って目が悪いのよね、ってそれじゃないわ!よーく左目の奥をみて」


 九千凪の目をよーく見ると黒目の奥に何かがあった。小さくて分かりづらいが何かのマークのように見える。


 「やっと見えたようね。これがさっき言った特徴、能力者は体のどこかに紋様が描かれてるの。占奈さんだってそうよ」

 「ちなみに私はここだ」


 癒心は髪をかき上げ右耳の後ろを見せつける。確かにそこにも紋様があり、それは私の知っているものだった。


 「それって山羊座のマーク……星座だ。これが私の体にも?」

 「そういう事だな。君の体のどこかに紋様があるはずだ」

 「何か心当たりはあるかしら?なければ私が探してあげるけど」


 心当たりか、うーん……あ、一つあった。


 「足ですかね。小さい頃からずっと右足にアザみたいなのがあるんです。もしかしたらそれかも」

 「右足ね、わかったわ」


 九千凪は占奈の靴下に手をかけスルンと脱がした。占奈の読みは当たっており、母指球付近に双子座の紋様があった。

 あれ?以前はただのアザだったのにまるでタトゥーのようになっている。まあ足の裏ならそこまで目立たないし良いか。これがおでことかだったら一生家に引き篭もってただろう。

 

 「まあ説明はこんな感じだな。というわけで私たちは体に星座が描かれたバケモノを倒しつつ、能力者を探してるんだ」

 「まだ謎ばかりだけど、アイツらの正体を突き止めて平和を取り戻したいの。どう占奈さん?一緒に戦ってくれないかしら」


 九千凪はかなり真剣な表情でそう問いかけた。この顔は昨日の戦いの時と同じで覚悟が伝わってくる。

 しかし私は断るでもなく、只々黙っていた。決断が怖かった。バケモノと戦うのもそうだが、命を懸けて戦っている2人を失望させてしまうんじゃないかと。


 だが現実は意外にも明るく、九千凪の表情は先ほどまでの優しい顔に戻っていた。


 「あいつらと戦う辛さなんて自分でよく分かってるのにこんな難しい決断をさせちゃってごめんなさい」

 「そんなに暗い顔をするな。無理にとは言わないって最初に言っただろう?」


 そんな2人の言葉に私はふと昨日のことを思い出した。

 ヘビの攻撃から私を守る九千凪さんと傷だらけの体に手当をしてくれた癒心さん、2人は本当に良い人だ。

 沈黙を貫いていた口がようやく開き、私は言った。


 「すいません、黙り込んじゃって。自分自身の力がまだ分からないし、バケモノが怖いしでやっぱり一緒に戦うのはできないです」

 「うん、それでいいのよ。自分の気持ちが一番大切だからね」

 「でも、2人は優しいし一緒に居たいなってそう思わせてくれます。だから一旦、見学って形でもいいですか?」


 私の言葉に2人はニコッと笑い抱きしめてきた。


 「占奈さん!私嬉しいわ、もちろん見学も大歓迎よ!」

 「私も歓迎するよ。実際に見てみないと分からないだろうし、もちろん君に何かあれば私たちが守るよ」

 「九千凪さん、癒心さん、よろしくお願いします!」


 まだ仮入部ですらなくただの見学だが3人は抱き合いはしゃいだ。占奈には友達が、九千凪たちには仲間ができたのだ。


 「そうだ占奈さん、これ私たちのアカウントよ。トゥイッターで活動報告とか情報収集してるの。フォローよろしくね」

 「リプ見るとオカルト研究部か何かと勘違いされてません?」

 

 2人のアカウントを確認するとフォロワーはそこまで多くはないが熱心なファンというかマニアがそこそこ居た。


 『なんでそんなにUMA見つけれるんですか?うらやましい〜』

 『このあいだ、ツチノコをみつけました。』

 『今度UFO呼んでみてください!」

 などなど。


 「早速だけど次のお休み予定空いてないかしら?」


 あまり使わなかった大きめのホワイトボードを片付けながら九千凪は問いかけた。



 これから私はオカルト研究部()の見学生として2人の先輩にお世話になるんだと強く意気込んでいた。平凡な日々に鮮やかな色が足されたようでワクワクしていた。

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