■第5話:第三の消失
夕暮れ時が迫り、海の青さが深い藍色に変わっていった。島のキャンプ場には、長い影が伸び、海からの風が冷たく感じられるようになっていた。リョウ、ミカ、ユリの三人は、灯台の内部を調べた後、再びキャンプ場に戻った。辺りは静まり返り、波の音だけが響いていた。
ミカ(不安そうに):「もうすぐ暗くなるわね。ショウとケンがいないまま夜を迎えるなんて、心配でたまらないわ。」
ユリ(震える声で):「私、もう耐えられないわ。この島には何か恐ろしいものがあるのよ。」
リョウはキャンプ場を見回しながら、沈んだ気持ちを必死に隠そうとしていた。夕日が水平線に沈みかけ、空はオレンジから紫に変わりつつある。薄暗い中で、リョウの心も次第に重くなっていた。
リョウ:「とりあえず、再度浜辺や周囲を見回ろう。何か手がかりが見つかるかもしれない。」
リョウの言葉に応じて、ミカとユリも歩き始めた。波の音が次第に大きくなり、海の暗闇が迫ってくる中、彼らの足元に砂がさらさらと音を立てた。
ミカ(浜辺を歩きながら):「本当に、ショウとケンはどこに行ったのかしら…」
ユリ(振り返りながら):「もし何か悪いことが起こったら、私たちも危ないかもしれないわ。」
彼女の言葉には、震える恐怖が色濃く表れていた。リョウもその不安を感じながら、浜辺の端から端まで目を凝らし、手の届く限り探し続けた。
突然、ユリが声を上げた。
ユリ:「リョウ、ミカ、見て!テントの近くに何かがあるわ!」
リョウとミカは、ユリが指さす方向に目を向けた。そこには、キャンプのテントの近くに置かれていたショウのバッグが不自然に開いており、中身が散乱しているのが見えた。バッグの中には、ショウの衣類や小物が散乱しており、その中にショウのスマートフォンも落ちていた。
リョウ(恐怖と混乱で声を震わせながら):「こんなところにショウのバッグが…でも、ショウの姿はどこにもない。」
ミカ(バッグの中身を見ながら):「これ、ショウのものよ。どうしてこんなところに?」
ユリ(キャンプ場を見渡しながら):「誰かが、ここにいるかもしれない。何か見落としているかも…」
その時、薄暗くなった空の下で、風が急に強くなり、キャンプのテントが音を立てて揺れた。リョウ、ミカ、ユリの心に、冷たい恐怖が広がった。テントの中で何かが動いたような気がしたが、確認する暇もなく、彼らの心拍数が上がった。
ミカ(恐怖に満ちた声で):「もう一度テントを調べよう。何か見逃しているかもしれない。」
リョウはうなずき、ミカとユリと共にテントに向かうと、テントの中を慎重に調べたが、何も異常は見つからなかった。テントの中は、普通のキャンプ用具が整頓されているだけで、ショウの姿は見当たらなかった。
リョウ(ため息をつきながら):「テントの中にも、どこにもショウはいない。」
その時、キャンプ場の外で微かに聞こえる音に気づいたリョウが、皆を引き連れてその方向へ向かった。暗くなる中で、リョウたちは何かが近づいてくる気配を感じながら、再び周囲を歩き回った。しかし、そこにはただの静けさと海の音だけが広がっていた。
ユリ(涙を浮かべながら):「どうしてこんなことに…もう耐えられないわ。」
ミカ(同様に涙をこぼしながら):「この島には、本当に何かがあるのかもしれない…」
リョウは、三人の恐怖と不安を見て、自分の無力さを痛感していた。彼らの心は次第に絶望的になり、夜の暗闇がその恐怖を一層深めていた。海の波の音が、静かに、しかし確実に彼らの心に重くのしかかっていた。