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「辻里君」

「何?」

 クラスメイトが話しかけてきたので弓弦としては普通に答える。が、当人にはそう聞こえないらしく構えていた。

「あ、あの進路調査の紙、出してないでしょ? 先生が早く出してって」

「ああ、そう、分かった」

 確かにそんなものがあったことを思い出す。ついでに三者面談だのがあることも、だ。

「有り難う」

 一応礼を言っておき、立ち上がる。その時になって既に放課後になっていることに今更気が付いた。そのくらい弓弦にとっては学校というものはどうでもよかった。

「え、あの」

 会話を一方的に打ち切られ、クラスメイトは戸惑っているようだが、彼にしてみればもう必要なことは終わったのだ。

 学校で親しいものはいない。正確には親しくしているつもりのヤツは一人いるが、このクラスにはいないと言うべきか。

「辻里、偶には俺らと付き合わない?」

「何故?」

 帰ろうと教室の扉に手をかけていると別のクラスメイトが呼び掛けてきた。あまり興味はないが、少し不良ぶっているタイプの男子生徒だ。

「何故って、そりゃあ親睦を深めるって大事だろう?」

「そう、でも僕は興味がないから」

 素気なくそう言い、教室を後にしようとするが、クラスメイトがその進路を塞いでくる。

「何?」

「お澄まし顔も大概にしてさ、俺らと遊ぼうぜ?」

 ニヤニヤと笑っている。当人としては面白いらしい。

「悪いけど、興味がないよ」

 淡々と弓弦は言い、スッと彼の横を抜けていく。

「お、おい!」

 そう叫んで、急いで弓弦の肩を掴もうとした。しかしその手は届かない。弓弦と彼の間にまるで鎌鼬のような風が吹き、シュッと彼の手を掠めていったのだ。それはまるで猫にでも引っかかれたような傷で、深くもないものだったが、偶然にしては都合が良すぎる。

「な、なんだ?」

「何してるんだよ、お前、怪我してるじゃん」

「保健室、保健室!」

 クラスメイトたちはは浮き足立って大騒ぎしているが、それに弓弦は興味持つことなくその場を後にした。

 怪我をしたクラスメイトの男子生徒は痛くはないが、出来た傷の不気味さに何となくぞっとしている。

「あいつ、何なんだ……」

「俺、中学一緒だったけど、あいつ、いつもそうでさ、誰とも馴染まないんだよ。構うと今のお前みたいになんか起きてさ。だから付いたあだ名がぼっちの辻里ってんだよ」

「へ、へえ」

「その傷ちゃんと手当てした方がいいよ。噂だと甘く見て凄く酷くなったヤツもいるってさ」

 そう言われて怪我をした男子生徒は大慌てで保健室に走ることにし、そして二度と弓弦には近寄らないと決めるのだった。

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