行列
城門に到着すると、そこには、見たこともないような大きさの馬車が何台も並んでいた。その光景に圧倒されている僕を置いて、クローさんは一際頑丈そうな作りの馬車に向かって歩いていく。
「おはようございます。組合『D』所属で、本日の護衛依頼を受注したBランク冒険者のクローと申します。出立前にリコリス様にご挨拶申し上げたいのですが、よろしいでしょうか?」
「確認してきます。少々お待ちください」
洗練された動作でクローさんが挨拶をすると、護衛役であろう男性は一瞬固まった後、ハッとしたように馬車に乗り込んでいった。中で待っている依頼主に確認を取りに行ったのだろう。
「思ったより丁寧な人ですね」
「……戦闘能力以外は全く期待していなかった冒険者が、ある程度礼儀作法を身に着けていて驚いただけだろう。動揺している間に話を進めた方が、相手も無理難題を言ってこないから楽になる」
相手の不興を買わないように、という点でも礼儀作法は大切だが、話を有利に持って行くときにも役に立つらしい。さらりと言ったクローさんに、慣れていますね、というと何故かサシャさんが得意げな顔をした。
「基本的に交渉事は全部クローの担当だからね」
「どちらかと言うとサシャさんが交渉しそうな印象ですけど……」
「私はそういうのは苦手。どちらかというと、お金の管理とか、もっと補佐的な仕事が得意かな。シャムロックは料理とか掃除が得意だよ」
「そうなんですね」
意外である。クローさんは面倒見がいいけれど、普段は口数が少ないので、交渉事はサシャさんの方が得意かと思っていた。雑談が好きかどうかと交渉が得意かどうかは関係ないんだろうな、と考えていると、先程の男性が馬車の中から出てきた。
「お嬢様に確認が取れましたので、もう暫くここでお待ちいただけ……」
「その必要はありません」
恐らく、男性は此処で頭を下げて待っておけ、と言いたかったのだろう。しかし、その言葉は後ろから現れた女性によって遮られた。動きやすそうなデザインだが、質のいい服を身に着けた女性。彼女が、今回の依頼主だろう。
「今、最も優先されるべきは挨拶ではなく、一刻も早く竜騎士団に補給物資を届けること。正式な場でもありませんので、挨拶は簡略化し、早々に出立しましょう」
「お嬢様、それは……」
「礼儀作法は重要ですが、優先順位を履き違えないように」
食い下がる男性に、女性はきっぱりと言った。すると、クローさんは僕達に目配せを足したかと思うと、素早く女性の前に移動し、綺麗なお辞儀をした。
「では、簡単なご挨拶だけさせていただきます。魔導士のクローと申します。今回、パーティの纏め役を務めていますので、何かあれば私にお伝えください」
「同じく魔導士のサシャと申します。主に物資輸送隊の護衛を担当します」
「シャムロックとルートはリコリス様の護衛です。腕前は保証しますので、ご安心下さい」
時間を無駄にしたくない、という依頼主の意向を汲み取ったのだろう。何を言えばいいのか考えていた僕とシャムロック君の紹介もクローさんがやってくれた。お陰で僕達は頭を下げているだけでよかった。
「そう。私はリコリス・カークランド。よろしくお願いしますね」
クローさんの的確で素早い判断に満足したのか、依頼主は満足そうに笑ったのだった。そして、並んでいる馬車を見渡し、その見た目にそぐわぬ鋭い号令をかけた。先頭の馬車が動き出したことを確認すると、依頼主は僕達の方に目線を寄こし、言った。
「護衛の一人は私と一緒に馬車へ。他の二人は外で見張って頂戴」
それだけ言うと、依頼主は先に馬車の中に入った。誰か一人、と言われると、一番強いクローさんが馬車に入るのだろうか。そう思ってクローさんの方を見るが、サシャさんと話をしていて此方を見ていない。
「じゃあ、私は最後尾にいるから」
「サシャ、頼む」
「任せて」
サシャさんが移動を始める。今なら話しかけても大丈夫だろう。僕が声を掛けようとすると、クローさんは此方を見ずに指示を飛ばしてきた。
「ルート、馬車に乗れ」
「……わかりました」
僕でいいんですか、という質問はしない。馬車の中で依頼主と一緒に過ごし、その安全を守ることもCランク昇格試験の内容なのだろう。僕がしっかりと頷くと、シャムロック君は頑張れ、と身振りだけで伝えてくれた。それに笑顔を返しながら、僕は呼吸を整え、馬車の扉を叩く。
「どうぞ」
「失礼します……」
返事を待ってから馬車に乗り込むと、依頼主は既に車内でくつろいでいた。彼女は自身が座っている場所の対角を指し示し、僕に座るように促す。小さく頷き、腰を下ろすと依頼主は穏やかに微笑んだ。
「貴方が先に護衛をしてくれるのね」
「はい。誠心誠意、務めさせていただきます」
今から安全な王都を出て、魔物達が出現する地域を通るとは思えないほど落ち着いている。この人なら、戦闘が起こってもパニックなどにはならず、単純に守れば問題ないだろう。貴族相手の護衛任務は初めてだが、その辺りは配慮されているんだろうな、と感じる。
「魔物が出てきたら戦ってもらうけれど、王都に近いうちは何も出ないでしょう。そうだ、暇な間、貴方の話でも聞かせてもらえるかしら」
「ぼ、僕の話、ですか?」
落ち着きすぎていて、寧ろ暇らしい。話を振られるとは思っていなかったので、一瞬、頭が真っ白になる。何の話をすればいいのだろうか。必死に考えていると、相手の方から話題を指定してくれた。
「ええ。Dランク冒険者になるまで、色々な依頼を受けている筈でしょう? どんな依頼があって、どんな魔物と戦ったのか知りたいの。魔物と戦うことになった時、役に立つかもしれないでしょう?」
「あ、あの、僕は、色々とあって最初からDランク冒険者だったので、今まで、依頼は三つしか受けたことがないんです……」
「えっ??」
が、その話題は普通なら盛り上がるかもしれないが、僕にはちょっと向いていない話題だった。僕が受けた依頼は三件。出会った魔物も、トノサマバッタと、熊蜂、レギナ・サラマンダーの三体以外は珍しいものではない。
「なので、あまり話せることがないかもしれませんが……」
これは、シャムロック君が先に馬車に乗ってくれた方が良かったかもしれない。昇格試験を受けていないだけで、依頼達成数が圧倒的に多いし、魔法についても詳しい。申し訳なくなり、下を見ながらそう言うと、依頼主は先程までの落ち着いた様子とはうって変わって力強く僕の手を握った。
「え、なら、君が噂の新人君?? アンリさんが言ってた?? これ、Cランク昇格試験を兼ねた依頼でしょ?? もう昇格できるの??」
「え、……あ、はい」
「凄い!! 実力者揃いの『D』の中でも、歴代最速記録じゃないかな? 一回、話を聞いてみたいと思ってたんだよね。もしかして、アンリさん、わかってて依頼振ってくれたのかな。そうだったら嬉しいな~~!!」
楽しそうに、握った僕の手を振りながら言う女性は、本当に同じ人なのだろうか。僕が戸惑っていると、相手も我に返ったらしい。あ、と小さい呟いた後、気まずそうに手を放し、壁にくっつきそうになるほど僕から距離を取ると、こほん、と大きめに咳払いをした。
「…………聞かなかったことにしてくださる??」
「は、い。勿論です、カークランド様」
先程までと同じ、有無を言わせぬ完成された笑顔を向けられた僕は、首を何度も縦に振って答えた。これは、見なかったことにした方が良いやつだ。最後にもう一度しっかりと頷くと、依頼主は穏やかな笑顔を浮かべたまま、会話を再開した。
「…………随分と、腕が立つんだ、ですね。もっと詳しく、話が聞きた、聞かせていただけますか?」
「あの、無理はなさらなくても、他の人に言ったりしませんけど……」
が、想像以上に動揺しているらしい。口調が崩れまくっている。やっぱり、砕けた口調の方が素なのだろう。心配しなくても、余計なことは口外しません、と伝えると、依頼主も誤魔化すのをやめたらしい。穏やかな笑みから一変、きらきらと、瞳を輝かせながら僕の方を向いた。
「なら、二人で話すときは普通に喋らせてもらうね。後、私のことはリコリスって呼んでいいよ。アンリさんもそうしてるし」
「わか、りました。リコリスさん、ですね」
「そうそう。よろしくね、ルート」
何か聞きたいことがあるなら、何でも聞いてね。そう言われたので、僕は先程から気になっていたことを聞くことにした。
「あの、アンリさんとお知り合いなんですか?」
「うん。私は冒険者組合『D』を支援してる立場だから、定期的にお話しする機会があるよ」
「支援?」
「冒険者組合を設立する時には、最低一人以上の貴族の後ろ盾が必要なんだよね。それで、アンリさんは『D』を設立する時に私の家にも協力要請しに来たんだけど、全面支援という訳にはいかなくて。私が個人的に支援してる、っていう状態」
だから、他の貴族も何人か支援してるはずだよ、とリコリスさんは言う。王宮からすれば、貴族を関わらせることで管理がしやすくなり、貴族も支援することで有事の際に動かせる人員を確保できる、という制度なのだろう。
「アンリさん、凄いよね。組合を立ち上げてから二年くらいしか経ってないのに、既に王都有数の冒険者組合になってるし。所属してる冒険者も強い人ばっかりで、今話題の期待の新人もいるんだから」
「……期待の新人って、僕の事ですか?」
「勿論!! まあ、『D』の冒険者ってだけで話題にされることは多いけど、ルートは特に目立ってる感じかな」
組合『D』の冒険者は訳ありの人が集まっている分、実力者揃いで一人一つは逸話を持っている、と言われるほどらしい。クローさん達も冒険者になったばかりの頃はかなり話題になったらしい。
「私、レギナ・サラマンダーの話聞きたいな。まだ詳細知ってる人全然いないから、今本人に聞いた、ってなれば話題性抜群だもん」
「話すのは構いませんが、役に立つかどうか……」
「冒険者の動向は貴族も注目してるから、物凄く役に立つよ」
王都防衛に一躍買っている冒険者の話題は、噂好きな貴族たちの共通の話題でもあるらしい。最新の冒険者の情報を手に入れることで、社交界でも若干有利になったりと、様々な効果があるそうだ。
「では……」
僕の話が役に立つなら幾らでも話そう。そう思い、口を開こうとした瞬間の事だった。前方から大きな音がすると同時に、馬車が大きく揺れた。どうやら、急停止したらしい。リコリスさんは咄嗟に椅子に深く腰掛けたようで、どこも怪我した様子はない。
「何!?」
馬車が動き出す様子がないことを確認してから、僕は扉を開け、顔を出した。すると、前方にいたクローさんが走って此方に向かってきていた。どうしたんですか、と大声で尋ねると、クローさんも声を張り上げて返事をしてくれた。
「魔物だ!! 右側面から溶岩アリの群れが向かってきている!! 数は20!!」
「溶岩アリ?」
「目的地のリカンウェア火山付近に生息してる、溶岩の中に巣を作るアリだよ。でも、基本的に火山の外まで出てくることはないのに……」
聞いたことのない魔物だ。そう思っていると、馬車の中からリコリスさんが簡単に解説してくれた。物理攻撃が通用するのか若干不安だが、この依頼はシャムロック君も一緒なので、エンチャントしてもらえば戦えるだろう。僕は馬車から飛び降り、クローさんの方へと走り出す。
「溶岩アリが一度通れば、次々群れが向かってくる!! 速攻で片を付ける!!」
「わかりました!!」
溶岩アリは、単体の戦闘力が高い魔物ではないらしい。しかし、巣から出てきた溶岩アリは、餌を巣まで運ぶために隊列をなして移動する。現在、発見されたのは先遣隊で、これらを撃退又は別方向に向かわせることができれば、このあとやって来る本隊と戦う必要がなくなるらしい。
「討伐依頼なら全部倒すが、これは護衛依頼だからな。円滑かつ迅速、安全な道を確保することが最優先だ」
「今は最短距離で行ける道を通っているので、この道の安全を確保するのが一番いいってことですか?」
「そういうことだ」
道を逸らすことができれば解決するのだが、途中に遮蔽物を置いたとしても溶岩アリは壁を越えて真っすぐ向かってくることが多い。なので、先遣隊を全て倒した後、体液を採取し、適当な道を作り直してやるのが楽だという。
「この辺りの地形は下調べしてある。ルートは気にせず、相手を倒すことに専念しろ。シャムロックが援護に入り、必要な部位があれば採取する」
「はいっ!!」
小さな影が見えたところで、剣を抜き、走る速度を上げる。溶岩アリは真っ赤な体で、中型犬くらいの大きさのアリの魔物だ。体の関節部分から蒸気が上がっているので、体の表面な内部の温度はかなり高いのかもしれない。
「シャムロック君!! エンチャントお願いします!!」
「わかった!!」
極力、通る道には近付けたくない。僕はスピードを緩めることなく溶岩アリの群れに真っすぐに突っ込む。シャムロック君の魔法が発動し、剣からひんやりとした空気が漂うのを感じながら、先頭の溶岩アリに向かって、剣を横に薙ぎ払った。
「硬っ!!」
ガキン、と嫌な音がして溶岩アリが吹き飛んでいった。全く斬れた感じがない。しかし、シャムロック君のエンチャントの効果なのか、単純な衝撃が原因なのか、吹き飛んだ溶岩アリは地面に激突する頃にはすっかり動かなくなっている。
「全身溶岩が固まった鉱石だからな。刃物では太刀打ちできない代わりに、素材としては一級品だ」
「シャムロック君!! 余裕があれば採取しておいてほしいです!!」
「が、がんばる!!」
僕の剣では相手の表皮を僅かに傷つけることしかできないが、そこに魔法が付与されることで、大きな威力を発揮するらしい。エンチャントで剣自体の耐久性や切れ味も上がっているので、気にせず戦っていけ、とクローさんから指示される。
「次のアリは先頭のアリと全く同じ道を辿る。上手く特性を利用して倒せ」
「はいっ!!」
攻撃が通用することが分かり、武器の消耗も気にしなくていいなら不安はない。一定間隔で押し寄せてくる溶岩アリを、僕も一定の間隔で倒していくだけだ。数回、繰り返していくうちにコツがわかってきたので、極力余計な力を入れずに、同じ方向に溶岩アリを吹き飛ばすことを意識する。
「なんというか、素振りしてる気分なんですけど……」
単純な動作を繰り返しているだけなので、戦闘と言うよりは基礎訓練をしている気分になってくる。勿論、何か異変があれば対応できるように周囲の警戒も怠ってはいないが、多分、付近に別の魔物はいない。
「ルート凄い!! さっきから同じ場所に飛んでくるから、採取しやすい!!」
「残り半分だ。この調子なら横についている必要はなさそうだな」
シャムロック君とクローさんも、他に脅威はないと判断しているようで、手助けしてくれる様子はない。正直、シャムロック君かクローさんが魔法を撃てば一発で終わると思うのだが、僕でも対応できる相手だ。できるだけ魔力の消耗を抑えたいのだろう。
「お、終わった……」
二人のやる気のない声援を受けながら、剣を振り続けること暫く。溶岩アリの一行は完全に姿を消し、輸送路の安全が確保できたのだった。体力的にはそこまででもないが、精神的に疲れた気がする。深く息を吐きながら剣を鞘に納めると、シャムロック君が小走りで駆け寄ってきた。
「素材、結構とれたよ。でも、どうやって持って帰る?」
「素材採集用の箱を持ってるから、それに入れて持って帰ろう。戻ったら、シャムロック君も一緒に装備作ってもらいに行こうよ」
「うん」
シャムロック君が得意げな顔で素材を見せてくれる。溶岩アリの硬い外殻に、細くしなやかな触覚。リィさんが喜びそうな素材が大量だ。僕は貰ったばかりの箱に素材を入れながら、戻ってからの予定を考える。
「……魔物は倒したのですか?」
どんなものを作ってもらおうかな、とシャムロック君と話していると、馬車の中からリコリスさんが降りてきた。はい、と僕達が返事をするより前に、黒い人影が馬車に向かって一歩踏み出した。クローさんだ。
「はい。別の道に誘導したので、これ以降、溶岩アリと接触することは無いと思われます。他に魔物の気配もありませんので、行軍を再開できるかと」
「わかりました。そのように通達しましょう」
つい先程まで、溶岩アリの誘導のために輸送団から離れた場所に行っていたのだが、いつの間にか戻ってきていたらしい。意外と足が速いのかな、と関係ないことを考えながら、僕とシャムロック君も馬車の方へと戻り始める。
「ルート、また後で」
「うん。後でね」
そう言って、シャムロック君は再び先頭の方へ、僕は馬車の中へと戻ろうと踏み台に足を掛けた時だった。
「何をしている」
「「え??」」
クローさんに呼び止められた。僕達が揃って足を止め、振り返ると、クローさんは僕を手招きした。こっちに来い、ということだろう。首を傾げながらも近付くと、逆にシャムロック君が馬車に近付くよう指示されていた。
「一度馬車が止まったなら、馬車の中での護衛役は交代だ。シャムロック、わかっていると思うが、失礼のないように。ルートは先頭で見張りだ。付いてこい」
「わかりました!!」
「……はい」
僕とは違い、シャムロック君はなんだが返事に元気がない。馬車の中での護衛は憂鬱なのだろうか。リコリスさんは優しい人なので大丈夫だよ。そう伝えようと思ったが、クローさんがシャムロック君の頭に手を置いたのを見て、やめた。
「苦手なのは理解しているが、昇格したいのなら乗り越えろ」
「……うん」
その言葉は、一見、シャムロック君を突き放しているようにも聞こえる。しかし、軽く頭を叩く仕草はとても優しくて、励まそうとしていることが伝わってくる。
「もう暫く進めば、昼食のために一時休憩があるだろう。その後はルートが馬車だ。休憩の度に交代ということにしよう」
「わかりました」
シャムロック君が馬車に乗り込んでことを確認してから、クローさんは歩き出した。向かう先は輸送隊の先頭だ。
「ルート、馬には乗れるか?」
「はい。村にも馬はいたので、基本的なことは大丈夫です。ただ、あまりにも気性が荒いやつには乗れませんけど……」
どうやら、先頭は馬に乗って移動するらしい。乗らない場合は歩きでもいいらしいが、視点が低くなる分、見通せる範囲が変わってくる。全く乗らないわけではないなら、乗った方が良いだろう。
「比較的大人しい馬だから問題はないだろう。先程、溶岩アリを発見した時も取り乱した様子は無かった」
「訓練された馬なんですね」
「流石、武闘派貴族といったところだな。輸送隊だから現役の馬というわけではないだろうが、それなりに経験をした馬ばかりなのだろう」
幸い、落ち着きがあり、人を乗せることに慣れている馬を選んでくれているようだ。これなら大丈夫そうだ。僕は素早く馬に乗り、その背を軽く撫でた。
「…………見ろ、あれがリカンウェア火山だ」
「よく見たら、麓の方から火山の蒸気とは違う煙が上がってますね。竜騎士団はあの辺りにあるんでしょうか?」
昼食休憩と、何度かの小休憩を取りつつ進み、日が暮れ始めた頃。僕達はついに、目的地であるリカンウェア火山に到着したのだった。
次回更新は11月11日17時予定です。