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7話:出会い


「アレク、右は任せるぜ! ソフィアと俺は左の3体だ!」


「了解だ」


「うん、解ってる!」


 次の日も、俺はソフィアたちとダンジョンに向かった。

 昨日までに中層部は攻略済みだから、今日からは下層部だな。


 チョップスティックが攻略を進めているのは、クルセアから1時間ほどの距離にあるダンジョン『グラスコーの迷宮』だ。

 全30階層だけど、階層ボスがいるのは10階層毎。

 だから上から10階層ずつ上層部、中層部、下層部と呼ばれている。


 下層部に進んでからも、攻略は順調だった。

 昨日までの3日間でソフィアたちはレベルが上がって、全員20レベル台になった。

 パーティーメンバーのバランスも良いから、危なげなく戦える。


 グランはバトルアックスに大型盾、フルプレートのタンク。

 ソフィアはメインが片手剣でサブがバトルナイフの二刀流。鎧はグランほどじゃないがガッチリ着込んでいるバランス型アタッカーだ。


 盗賊のシーラは投げナイフ使いで、革のベストに小手に足当てと軽装だけど、AGIの高さでカバーしている。戦闘中の役割は索敵とサポート、それに遊撃だ。


 神官のメアの武器は錫杖で、魔術士のカイのカバーをするから鎧は割りとしっかりしている。ヒーラーだけど支援魔法(バフ)も得意だ。


 魔術士のカイは第5界層魔法まで使いこなせる強力な魔法系アタッカーだ。軽装なのはエボファンにクラスによる装備の制限はないから、単にステータスの問題だな。


 という感じでクラスに片寄りがなく、ソフィアは中位魔法まで使えるから攻撃手段は物理も魔法も2枚ずつある。

 防御力もカイ以外は並み以上だし、俺もNPC5人でパーティーを組むなら似たような構成にするだろう。


 そこに俺が加わるのだから、ダンジョン攻略が捗るのは当然だろう。

 俺は手を抜いているけどステータスは変わらないから、どんなモンスターでも一撃だ。

 敵の数が減ればダメージを受ける機会も魔法を使う回数も減るからな。


 チョップスティックは俺のように強さだけを求めるのではなく、できるだけ楽しく安全に冒険を楽しむ方針だ。

 だからMPが少なくなった時点で街に戻るし、週に1日は完全なオフにする。


 俺としては少しもの足りないけど、この世界はゲームのエボファンと同じで蘇生魔法なんて存在しないし、ゲームと違ってセーブもリセットもできないからな。彼らのやり方は間違ってないと思う。


 それでも下位層の攻略を始めてら12日目には第25階層を攻略して、パーティーの半分は30レベルが見えて来た。

 まだエボファンの物語(メインストーリー)が始まる前のタイミングだから、今のソフィアはレベルだけならプレイヤーキャラ最強かもな。


 ちなみにD級冒険者アレクの装備はかなり適当だ。パーティーに入った時点で、武器も鎧もマジックアイテムですらないノーマル品を使っていた。

 だからソフィアたちはドロップした装備を優先的に回してくれると言ったけど、彼女たちから装備を奪う気はなかった。


 だけど何も貰わないのも不自然だから、誰も使わない装備を貰うことにした。

 お陰で武器の種類が度々変わるし、防具は全然統一感がない。

 まあ、俺にとっては装備なんて本当に飾りだから何でも良いんだけど。


 このペースでいけば、あと2週間もあれば『グラスコーの迷宮』を完全攻略できる。

 その頃にはソフィアたちのレベルも30を超えるだろうが……そろそろ時間切れだ。

 今日は帝国歴1985年4月30日。ゲームなら明日から物語(メインストーリー)が始まるからな。


 俺たちが余ったドロップアイテムを売却するために冒険者ギルドに行くと、昨日まで見掛けなかった冒険者がいた。

 ピンクの髪の少女に青い髪の若い女、妖艶な雰囲気の女と厳つい顔の壮年の男の4人組だ。

 彼女たちがクルセアに到着したことは、配下の諜報部隊からの『伝言(メッセージ)』で聞いている。


「あっ、エリスにセリカ! それにパメラとガレイもいる!」


 いきなりソフィアが叫んだ……彼女たちと面識もないのに。

 まあ、こうなることは予想していたけど。

 当然ながら4人は不審な顔をするが、それだけでは収まらなかった。


「エリスにセリカって……まさか王女様と聖女様か?」


「あの髪の色……もしかして本物じゃないか!」


 エリスとセリカは有名人だから目立ちたくないだろうに、思いきり目立っている。

 だけど、こういうことに慣れているのか。エリスの対応は早かった。


「よく似ているって言われるけど、私はノエルで、彼女はファム。二人とも冒険者よ。王女様や聖女様が冒険者になる筈がないわよね」


 そう言って冒険者の証であるプレートを見せる。

 この世界にはテレビもネットもないから、いくら有名人でも彼女たちの顔を知っている者は一握りだろう。

 式典やパレードで見たことがあるとしても、遠目に見たくらいでハッキリと顔を憶えている筈がない。

 エリスたちは格好も普通の冒険者だから、何だよ人騒がせなと皆が興味を失った。


「え、でも……」


「これ以上、余計なことは言わないでよ」


 まだ何か言いたそうなソフィアを、エリスが睨んで黙らせる。

 ソフィアの言いたいことは解る。

 ノエルとファムはゲームでエリスとセリカが使う偽名だからな。

 自分は間違っていないと言いたいんだろうが、そういう問題じゃないよな。


「貴方とはじっくり話をする必要があるみたいね……仲間たちに一言言って来るから、ここで黙って待っていてくれる」


 エリスはセリカたちにソフィアと知り合いで、以前に彼らのことを話したことがあると説明する。

 これならソフィアが4人のことを知っていても不思議じゃない。冒険者のソフィアと王女のエリスが知り合いとか、ちょっと無理があるけどな。


「何を他人事みたいな顔をしてるのよ。貴方にも話があるから」


 戻ってきたエリスは、今度は俺を睨んでいる。


「ねえ、アレク(・・・)……私が何を言いたいか解るわよね?」


「ああ、勿論だ」


 俺は1ヶ月くらい前に聖都クラウディアに行って、アレクの姿をエリスたちにわざと見せていた。

 誰が転生者か探るためだけど、もうそれは解っている。


「そう……じゃあ、2人とも顔を貸してくれるかしら」


 エリスは憮然とした顔で、俺とソフィアを端の方のテーブルへと誘った。


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