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21話:2つ目のイベント


 クルセアから西に3日の距離にある宿場町でエリスたちと合流。

 予定が少し遅れたのは寄り道をしていたからだ。


「アレク……来てくれたのね」


 俺に気づいたピンクの髪と水色の瞳の少女が立ち上がる。

 エリスたちが泊る宿屋が解ったのは、エリスにも『伝言の指輪(メッセージリング)』を渡していたからだ。


「ああ、約束したからな」


 同じ宿の部屋を取って、みんなで夕食を食べることにする。

 エリス、セリカ、ライラ、レイナのメインキャラ4人とガルドと俺。

 これから暫くはこの6人で行動することになる。


 まずはエリス、セリカ、ライラの3人に冒険者ギルドの依頼達成報酬の取り分を渡す。レイナとガルドは依頼を受けていないからな。

 魔族軍のモンスターを倒した分はすでに渡してある。


 最後にガレイとパメラから預かった王家の紋章と宝飾品をエリスに渡して、2人の伝言を伝える。

 彼らががエリスに同行したのはアリスの母である王妃の依頼でもあり、王宮に戻ることができるから大丈夫だと。


「そう……母上様は全部ご存じだったのね。でも安心したわ。ありがとう、アレク」


 エリスが前世の記憶に覚醒したのは12歳のときだと聞いた。

 覚醒前の記憶は他人の記憶のように感じるから、王妃が母親だと言われても違和感があるだろう。

 だけどエリスは王妃の想いに何か思うところがあるのか、嬉しそうに微笑んでいた。


「いや、俺が礼を言われることじゃないだろ。俺もガレイとパメラのことは気掛かりだったからさ、問題が解決して良かったよ」


「ふーん……あんたでも気が遣えるのね」


 銀髪と赤い目の勝気な少女が、片肘を突きそっぽを向いて呟く。


「何だよ、レイナ。俺を馬鹿にしているのかよ」


「そんなんじゃないわ……ちょっと感心しただけよ」


 素直になれない思春期の少女って感じか?。


 ステータス画面をみんなに見せたときに(アレク)の年齢を22歳に設定した。

 理由は俺が死んだときの年齢が20歳で、前世の記憶に覚醒したのが2年前。つまり精神年齢的には22歳ってところだからだ。

 22歳の俺にしたら、レイナの言動は可愛らしく思える。


「アレクには私からも感謝するわ。だけど……解っているわよね?」


 青い髪と青い瞳の少女が俺に釘を刺す。


「ああ。勿論忘れてないよ」


「ねえ、アレクとセリカは何の話をしているの?」


「エリスは気にしなくて良いわ。これは私とアレクの問題だから」


 セリカはエリスの姉的ポジションだから、これからはガレイとパメラの分までエリスを守ろうと言うんだろう。


 エリスの固有NPC3人は勘違いしてるみたいだけど、俺にとってエリスは同じ転生者同士の戦友という感じだ。

 俺の方がレベルは高いけど、エリスの方が先に前世の記憶に目覚めたからな。

 俺たちは対等な関係だと思っている。


「せっかく一緒に旅をするんニャし……モグモグ。みんな仲良くしたいニャって思ってるニャ」


 猫耳少女が魚をかじりながら喋る。

 何も考えていない能天気に見えるが、ライラが一番腹黒い性格だ。

 何を企んでいようと構わないけど、せめてキャラ付けのための語尾は止めろと言いたい。


「俺はアレクを歓迎するぜ。魔族を倒すための最強の助っ人だからな」


 無精髭のガルドが不敵に笑う。


 ガルドは妻と子供を魔族に殺されて、復讐のための旅をしているという重い設定のキャラだ。

 レイナとは魔族を追って訪れた村で、彼女の固有スキル『悪意探知(イビルサーチ)』を知って弟子にしたという設定だったな。


「歓迎してくれるのは嬉しいけど、変な期待しないでくれよ。俺は魔族に恨みがある訳じゃないから、倒すのは敵対する奴だけだ」


「俺の邪魔をしないならそれで構わないぜ。俺は自分の手で魔族を殺したいし、自分の考えを押し付けるほど若くないからな」


 琥珀色の液体が入ったグラスを掲げて、ガルドは一気に飲み干す。

 確か35歳だったか。大人なキャラのガルドはゲームでも人気があった。


「1つ教えてくれよ。アレクならもっと早く合流できた筈なのに、このタイミングになったのは何か理由があるんだろう?」


 ガルドの言葉に皆が注目する。まったくガルドには敵わないな。


「その通りだ。ウルキア公国まで行くのに時間が掛かり過ぎると思ったからさ、移動手段を用意したんだよ」


 次の目的地は聖王国クロムハートに隣接するウルキア公国だ。

 現在ウルキアで起きている大きな問題に魔族が関わっている。ガルドはそう思っており、真相を確かめに行くのだ。

 サリア村で魔族軍を討伐してしまったから、ゲームよりも少し早い出発になったが、これがエボファンの物語(メインストーリー)に絡む2つのイベントだ。


 ウルキア公国までは普通に移動すると1ヶ月以上掛かる。

 ゲームでは普通に移動したけど、街道を通ると移動中は盗賊や弱いモンスターに襲われるくらいで、時間の割に経験値が稼げない。

 街道を外れると強いモンスターもいるが、代わりにもっと時間が掛かる。


『ねえ、アレク。お願いがあるの……私も強くなりたい。だから、協力してくれないかしら』


 サリア村で1度別れる前に、エリスに頼まれた。

 何をいまさらと言われるだろうが、俺はエボファンの物語(メインストーリー)を楽しむだけで、物語に干渉するつもりはなかった。

 展開はメインキャラたちに任せて、NPCみたいに一緒に冒険できれば良いって考えていたんだよ。


 だけどガーランドの転生者みたいに、好き勝手にやる奴がいることが解ったからな。

 これだけ短期間に何人もの転生者に会ったんだから、まだまだ転生者がいる可能性は高いし、ガーランドの転生者と同じようなことを考える奴も少なくないだろう。

 だから俺は方針を変更して、メインキャラたちを強くしようと思う。


 俺はみんなを宿屋の厩舎へと連れて行く。

 厩舎の一角に繋がれているのは、6体の脚に羽が生えた馬型のモンスター『風の馬(ウインドホース)』だ。

 レベルは8から10で攻撃力はレベルよりも低い。

 だけど移動能力には定評があり、最高時速80kmで長時間移動も可能だ。

 それを可能にしているのは『風の馬』が走るのではなく、地上スレスレを飛んでいるからだ。


「『風の馬』か……アレクがテイムしたのか?」


「まあな。こいつを使えば移動時間が半分以下で済むだろ」


「いや、そうじゃなくて。テイムのスキルまで持っているのかって話だ」


 みんなには俺のステータス画面を見せたけど、スキルを全部覚えられるほど長時間じゃなかったからな。


「あんたは解ってないみたいだけと。ガルド師匠は呆れてるのよ」


「おい、レイナ……まあ、驚いてはいるがな」


 そういうことか。テイムスキルはスキルポイントが高いから、普通はテイマー以外習得しないよな。


「結構使い勝手の良いスキルだからさ、一応ってレベルだけど習得したんだよ。スキルレベルが低いから、テイムするのに時間が掛かるけどな」


 本当はレベルMAXだけど。ついでに他のモンスターもテイムしてたから時間が掛かったんだよ。


「なあ、みんな。これは俺からの提案だけど。予定よりも早くウルキアに着くから、ダンジョンに寄り道しないか。戦力を底上げしておいて損はないからな」


「アレク……」


 エリスが俺を見て微笑む。みんなも異存はないみたいだな。



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