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16話:エリスの本気


 魔族との最初の遭遇イベント。ゲームのときは……


『俺たちを倒したところで、もうすぐ到着する本隊が貴様たちを蹂躙する!』


 最後に倒した魔族がこんな説明的な捨て台詞を吐いた。

 今回は台詞を言う前に倒してしまったけど、戦闘を長引かせるとレイナとガルドがヤバかったからな。

 レイナの『悪意探知(イビルサーチ)』があれば問題ないのも解っていたし。


「まあ、そんなことよりも作戦会議だな。さっきグランも言ってたけど、魔族軍の狙いはおそらくクルセアだ。そして途中にあるサリア村も襲撃されることになる」


 エリスがジト目で見ているけど、気づかないフリをする。


「それが事実ならば、すぐにクルセアへ戻らねばなりませんな。しかしながら、本当にそれほどの数の魔族が山岳地帯を超えて来たのでしょうか?」


 ここで異を唱えたのは老騎士ガレイだ。


「山岳地帯を越えることは簡単なことではありません。それも大部隊となれば足場を確保するのも難しいので余計に厳しいでしょうな。非常に時間が掛かる上に、運べる食糧にも限界があります。魔族軍が山岳地帯を越えるのは不可能だと判断したから、聖王国はこの付近に砦を築いていないのです」


 ガレイの言うことも解るが、俺は答えを知っているからな。


「それなりのレベルの収納庫(ストレージ)持ちがいれば、荷物の問題は解決するだろ。それに山越えは不可能だと普通は思うから、無理でも超えれば強襲が成功するだろ」


 リアルエボファンの世界もゲームと同じでSTRに応じて装備と荷物の重量に制限がある。

 それを解決するのが『収納庫(ストレージ)』スキルだ。

 『収納庫』は物の出し入れが自由な亜空間のようなもので、キャラとスキルの両方のレベルによって中に入れられる物の大きさと重量が決まる。


 プレイヤーキャラは全員『収納庫』スキル持ちだけど、それ以外のキャラが持っているのは稀だ。

 だけどスキルポイントを使えば誰でも取得できる。習得に必要なスキルポイントが多いけどな。

 (アレク)もい最初は『収納庫』スキルを持っていなかったけど、スキルポイントが余っているからMAXまで上げた。


 そして今回の敵であるあいつ(・・・)も『収納庫』スキル持ちだ。

 設定マニアのエボファン製作者は、その辺に抜かりがない。


「しかしですな……スキル云々を抜きにすれば、あくまでも仮定の話に過ぎません」


 それでもガレイは納得しなかった。レイナと俺が言っているだけで証拠はないからな。

 兵を動かすにも結構な金が掛かるし、その間別の場所の防備が薄くなる。

 もし嘘に踊らされたら、王女であるエリスの責任問題になると思っているんだろう。


「証拠が必要なら俺が強硬偵察してくるけど。俺1人なら魔族に見つかっても振り切れるからな。みんなは先にサリア村に向かって、そこで合流するってのでどうだよ? 俺1人だと信用できないって言われたら……」


「アレク、待って」


 俺の言葉を遮ったのはエリスだった。


「いくら貴方でも1人で偵察なんて危険過ぎるわ」 


 そう言ってエリスは、ガレイをじっと見つめる。


「私は2人のことを信じるわ。ねえ、ガレイ……責任は全部私が取るから」


 駆け出し冒険者のノエルが言うには、ちょっと違和感のある台詞だけど。

 エリスはみんなの方に向き直って、真剣な眼差しを向ける。


「私にはみんなに謝ることがあるわ。隠していてごめんなさい。ノエルというのは偽名で、私の本当の名前はエリス・クローム。聖王国の王女よ。証拠もあるわ」


 エリスは懐から王家の紋章である銀十字のペンダントを取り出す。

 素材は銀ではなくプラチナ。精巧な彫刻が施された十字架の中心にはエリスの瞳の色と同じ大粒のブルーダイヤモンドが埋まっている。

 

 彼女は自分がエリスを演じていると言っていたけど、今の彼女がエリスというキャラを演じているとは俺は思わない。

 何が原因なのか解らないけど、彼女は明らかに変わった。

 魔族に本気で立ち向かおうとする強い覚悟を感じるのだ。


「エリス様、解りました」


 ガレイも何か思うところがあったのか、深く頭を下げて彼女の前に跪く。


「ありがとう、ガレイ……解ってくれたなら、もう一つお願いがあるの。ガレイたちが王家の紋章を持ってクルセアに知らせに戻って。私はサリア村で魔族を迎え撃つわ。私が残った方が兵が早く動く筈だから」


 ゲームのときもサリア村は戦場になった。

 森が近いせいという理由からか立派な防壁に囲まれたサリア村で、レイナたちメインキャラは聖王国軍が到着するまで持ち堪える。


「ですが、エリス様……」


「ガレイ、エリスのことは私たちに任せて」


 割って入ったのはセリカだ。


「大丈夫よ、こっちはアレクがいるから……ねえ、アレク。そうでしょ?」


 エリスをフォローすると言った約束を果たしなとさいよと、青い目が俺を睨む。


「ああ。俺は嘘をつくのが嫌いだからな」


 エリスがジト目で見ている。

 いや俺は必要な嘘はつくけど、本当に嘘が嫌いなんだよ。


「解りました。ならば、クルセアには私が……」


「駄目よ。ガレイも1人だと危険だから、パメラも一緒に行って」


「承知しました、エリス様!」


 パメラは何故か嬉しそうだ。成長したエリスの姿に感動でもしてるのか。


「仕方ないニャ。私もエリス殿下に付き合うニャ」


 ライラがここぞとばかりに自分をアピールする。

 まあ、実際にライラは役に立つから良いんだけどさ。


「ありがとう、パメラにライラも……勝手に先走ってごめんなさい。私たちは今から移動するけど、貴方たちはどうするの?」


 エリスはチョップスティックのメンバーとレイナたちを見る。


「私たちは魔族を倒すために来たんだから、勿論一緒に行くわよ……ねえ、ガルド師匠?」


「ああ。俺たちで魔族を迎え撃ってやろうぜ」


 レイナとガルドは即答し、ソフィアたちは――


「わ、私たちだって……『アレクはチョップスティックのメンバーだからな。当然、俺たちも付き合うぜ』」


 ソフィアが噛んでいるうちに、グランに台詞を持っていかれる。


「ちょっと、グラン! 酷いよ、私が言いたかったのに!」


「まあ、細かいことは良いじゃねえか。アレクは俺たちの仲間だからって、ソフィアも言いたかったんだろう」


「そ、そうだけど……」


 ニヤリと笑うグランに押し負けて、ソフィアはチラチラと俺の方を見る。


「ああ。ソフィア、解ってるよ。俺はチョップスティックの正式メンバーじゃないけどな」


「だ、だから、そういう意味じゃなくて……」


 ソフィアたちも加わってゲームのときよりも戦力は上だけど、油断はできない。

 リアルエボファンの世界には,あいつ(・・・)がいるからな。


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