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12話:出発


 翌朝。朝イチで冒険者ギルドに行くと、エリスの方が先に来ていた。

 エリスは1人で、セリカやパメラ、ガレイの姿はない。


「何だ、1人なのか?」


「貴方と話をするなら、その方が都合が良いでしょ」


「まあ、そうだけど……それで、どうするんだ?」 


 水色の瞳が真っ直ぐに俺を見る。


「勿論、(エリス)の責任は自分で果たすわよ。

 エリスを演じることに意味はないかも知れないけど、今の私はエリスだから」


 昨日は良く眠れなかったのか、目の下に隈ができている。

 本当に真面目な奴だな。


「そうか……じゃあ、みんなが集まったら出発するか」


 エリスが決めたのなら、余計なことを言うつもりはない。

 俺たちはギルドのカウンターに行って、依頼を受ける手続きをする。

 ゲームのエボファンでエリスたちが受けるのと同じキラーベアの討伐依頼だ。


 だけど今回はチョップスティックのメンバーも一緒だから、討伐依頼一つだと手が余るな。

 他にも採集や素材集めとかの依頼を幾つか見繕っておくか。

 あとは口裏を合わせるために、エリスにグランたちに話した内容を伝えておいた。


「状況は解ったけど……その話の流れだと、私たちと貴方たちの2つのパーティーで一緒に行動するってことよね」


「別に問題ないだろ、ソフィアたちは結構強いからな。ソフィアもああ見えて、20レベル台後半だから」


「嘘……あの子、そんなに強いの?」


 エリスは12レベルで、彼女のパーティーで1番レベルが高いのはガレイで18レベルだ。

 エボファンのプレイヤーキャラの初期レベルは大抵10レベル台だ。

 だからエリスのレベルが低いというよりも、ソフィアが頑張ってレベルを上げたということだ。


「エリスは事前にレベルを上げるとか考えなかったのか?」


「勿論、考えたわよ。だけどエリスは王女だから、王宮の訓練でレベルを上げるには限界があるのよ」


「だったら城を抜け出してダンジョンに行くとか、レベルを上げる手段なんて幾らでもあるだろう」


「無茶を言わないでよ。もしそんなことをしていたら、クルセアに来ることもできなかったかも知れないじゃない」


「ああ、そういうことか」


 エリスが過去に王宮を抜け出していたから警戒されるから、エボファンの物語が始まる肝心のタイミングで王宮を抜け出せなかったかも知れない。

 だからエリスは自重したってことだな。


 それから暫くして、先に集まったのはエリスのパーティーだ。

 15分くらい遅れて、チョップスティックのメンバーも揃った。

 一緒に行動する以上、相手のことを知らないと色々と不都合があるから、俺たちは互いに自己紹介することにした。


「貴方がアレクね。ノエル(エリス)から知り合いとは聞いているけど……ノエルを困らせたら承知しないわよ」


 聖女セリカが真顔で言う。

 美人が怒ると恐いというけど、まさにそんな感じだな。


「別にそんなつもりはないけど。まあ、今回ノエル(エリス)には余計なことを言った気もするから、その分フォローさせて貰うよ」


「その言葉、絶対に守りなさいよ」


「ああ、善処するよ」


 これで、ようやく出発というタイミングで。


「あれ、もしかして君たちはこれから依頼に出発するニャン? だったら優秀な盗賊がここに一人いるんだけど、必要ないかニャ?」


 俺たちに声を掛けたのは、猫耳の獣人――ライラ・ミラージュ。エボファンのもう1人のメインキャラだ。

 勿論、俺とエリスはライラがいることに気づいており、声を掛けてくるのを待っていたんだけど。


「あ、ラ……」


 ソフィアは気づいていなかったのか、いきなり名前を言い掛けて途中で踏み止まる。

 ソフィアも学習したな。うん、偉いぞ。

 ライラは訝しそうな顔をしてるけど。


 話を戻すけど、ライラはエリスとセリカの正体に気づいており、彼女たちに取り入るために同行するという設定だ。

 だけど今回はチョップスティックと一緒に行動するから、盗賊ならシーラがいるんだよな。


「これだけ人数がいるから、もう1人くらい盗賊がいた方が良いよな」


「そうね。私たちのパーティーにも、盗賊がいた方が良いと思ったいたところよ」


 事前に打合せしていたから、エリスが阿吽の呼吸で応じる。

 本来イベントに参加する筈のライラが参加しなかったら、何か不都合が生じるかも知れないし。

 メインキャラのパーティーにライラは不可欠だからな。


 だけど好き勝手に動かれると面倒だから、ライラだけに聞こえるように釘を刺しておく。


「なあ、おまえ……王女と聖女に取り入ることが目的なのは解ってるからな」


「ふーん……なるほど。君も同業者ってことかニャ」


 俺の都合が良い方向に誤解してくれたから、否定はしない。

 そんなことよりも、ライラが合流したんだから今度こそ出発するか。


 ライラを加えて11人になった俺たちは、まずはキラーベアの討伐依頼を出したサリア村に向かった。

 クルセアから馬車で3日の距離にある村の住人たちは、近くの森で薬草採集や獣を狩ることで生計を立ている。

 しかし最近になって、キラーベアという狂暴なモンスターが森に現れるようになった。

 すでに何人も死者が出ており、このままでは死活問題だと村長が冒険者ギルドに討伐依頼を出したのだ。


「キラーベアか……フン、ショボいな」


 村に向かう道中。依頼内容を知ったグランが詰まらなそうに言う。

 ちなみにエリスたちは1台の馬車で、チョップスティックは馬車と馬2頭で移動している。

 馬に乗っているのは俺とグランだ。

 今のグランは28レベルだから、キラーベア程度では確かに相手にならないだろう。


「まあ、そう言うなよ。他の依頼も幾つか受けてきたし、森の奥に行けばもっと強いモンスターがいるだろうからさ」


 サリア村近くの森は山岳地帯まで続いており、山岳地帯の反対側は魔族が支配する領域だ。

 森の奥にはモンスターが多く生息しており、今回のキラーベアも何かの理由で奥地から出て来たと推測される……勿論、俺は理由を知っているけどな。


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