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会いたい
プロローグ
前向きな死と言えばいいのだろうか。
詠子は、それでも歩みをすすめる
自分の足のつま先をみつめた。
母が今日、死を迎えるのは理解している。
反抗期に、嫌というほど母と衝突した詠子には
母の気持ちは手にとるようにわかる。
美しく、華やかな顔立ちと
負けん気の強さを併せ持つ母は
年老いた今でも
子どもたちの世話にはならない!と
週に3日はスポーツジムに通って体を鍛えている。
だけどそんな。
死を選ぶなんて。
立ち会わないわけにはいかない。
ぎゅっとバッグを持つ手に力を入れて
どこかせつない青空を、詠子は見つめた。