エピローグ
「では、結果を発表する」
数日後、千堂の邸宅で改まってそう告げる彼と向き合い、アリシアは緊張していた。そんな彼女に、
「合格だ」
いささかあっさりとした感じで、千堂は結果を明らかにした。
「え…?」
正直、今回は駄目だと思っていたので、思いがけないそれにアリシアが唖然となる。
「合格だよ。アリシア。これで君は晴れて、JAPAN-2内であればどこへでも一人で行けるし、他の都市でも、私と一緒に入ればその後は単独行動もできる」
今回のテストがもたらすものを、彼が再度説明してくれた。
「あの…いいんですか……?」
そこまで聞いても信じられなくて、問い掛けてしまう。けれど千堂はあくまで穏やかに微笑みながら、
「ああ、いいんだ」
改めて告げる。その上で、
「正直、評価は難航したが、スーツを破ってしまったことも、同行していたコデット嬢を楽しませようとしてのパフォーマンスの一環だったということで、お咎めなしとなったんだ。議論の焦点はそこだったから、それが問題ないとなれば、不合格とする理由もない」
詳細をつまびらかにしてくれた。
「……ありがとうございます……!」
アリシアは姿勢を正し、深々と頭を下げた。
けれど千堂は、やはり笑顔で、
「これは、君に対する正当な評価だよ。私が何かをしたわけじゃない」
彼女を労ったのだった。
こうして晴れて行動範囲が飛躍的に広がった千堂アリシアだったものの、彼女自身には、一人で出掛けたいところというのはこれといってなかった。
『タラントゥリバヤ・マナロフの墓に参る』という件についても、彼女自身が思い切れるまでには数年を要したというのもある。
けれど、それは問題じゃないだろう。『行動範囲が広がった』という事実が重要なだけで。
彼女は、<普通のロボット>としての行動が許されたのだ。
その後もアリシアは、メイトギア課の仕事もこなしつつ、休日には基本的に千堂邸で彼と共に過ごした。そして、ほぼ毎日、タブレットにて<ORE-TUEEE!>をプレイし、アトラクションの中の<ナニーニ>と<コデット>と顔を合わした。
プレイ時間は三百時間を超え、散発的にモンスターとの戦闘をこなし、ストーリーは進めていないのに、ナニーニはレベル40、コデットに至ってはレベル50にまで上がっていた。これは、ラスボスを倒すのに最低限必要とされるレベルなのだという。
とは言え、もうアリシアにはそのつもりはない。
アトラクションの中のあれこれも、現実世界でのジョン・牧紫栗の動向についても、彼女にとってはどうでもよかった。
他の人間達に任せればいいことなのだから。
<ロボット探偵>としての仕事も、もう入ることはなかったのだった。




