千堂京一、感心する
「こんにちは! オーナーさん!」
千堂アリシアのオーナーであると自己紹介した千堂京一に対して、桜井コデットは笑顔で挨拶をしてくれた。物怖じしない快活な少女であることがそこからも窺える。
「これはこれは。ご丁寧にありがとうございます」
コデットの振る舞いに千堂も感心してしまっていた。
だから、敢えて<千堂アリシアはロボット探偵であるという設定>に乗って、
「実は今回の依頼者はあちらの方々なんです。ただ、ちょっと手違いがあってそれでどうすればいいのかを話し合ってらっしゃって、私達は現在、待機中ということです」
と、今の状況を説明した。
「なるほど! それは大変だ!」
コデットは得心がいったように声を上げて、千堂とアリシアを見た。
それから、難しい顔をしながら電話で話す刑事を見て、
「依頼人の方で揉めてるってのは困りものだよね!」
などと、ませたことを言う。
『これは、思った以上に利口な子だな』
アリシアから話は聞いていたものの、その時の印象以上のものをコデットから感じ、千堂は感心させられていた。
『この子がまっすぐに育ってくれてJAPAN-2社に来てくれれば、きっと心強いだろうな』
とも思ってしまう。
だからこそ、コデットのような子供がまっすぐに育つことができる社会を作り上げていかなければと改めて思った。
そして、千堂のそんな様子に、アリシアが見惚れる。
相手が子供だからといって軽んじることなく丁寧に対応する彼の<器>に魅了される。
でも、だからこそ、様々な<行き違い>で人間達が惑うことが悲しかった。
『人間が皆、千堂様みたいな人だったらこんなことにもならないのにな……』
そんなことも思ってしまったりするものの、実は必ずしもそれが正解ではないことも、アリシアは知っている。人間はそれぞれが違っていること自体が必要なことなのだと。
人間という生き物は、この火星を、生存可能なものに作り替えてしまうことすらできる生き物だ。その人間が、誰一人意見を違えることなく何か一つの目標に邁進してしまっては、それがもし、何らかの破壊的破滅的なものであった場合、歯止めが利かなくなってしまうだろう。ゆえに、異なる意見や視点を持つことによって、それが本当に必要で間違いのない選択であるかどうかを検証できるのである。
それがなければ、人間はすでに、多くの犠牲を払いつつ巻き添えを生みつつ終焉を迎えていたであろうとも言われている。
火星においても三度もの大きな戦争を行いつつも今なお存在できているのは、『異なる意見を持つ者がいる』からなのだ。




