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千堂アリシア、途方に暮れる

<クイーン・オブ・マーズ号事件>においてテロリストの一人として事件に加担し、最後には手榴弾で自らの命を絶った<タラントゥリバヤ・マナロフ>。


けれど、実は、彼女自身は乗客を負傷こそさせたものの殺害までは至っていなかったことが、他のメンバーの証言と監視カメラの映像にて明らかになっている。彼女はただ、憎いロボットを破壊していっただけなのだ。


それでも、多くの乗客の命を奪ったテロ事件の実行犯の一人という事実は、数多の人間の憎悪を集めるには十分すぎた。加えて彼女は、<クイーン・オブ・マーズ号事件>を起こす以前に、知人女性を、『ロボットと結婚した』という理由で殺害していることについては事実だとされている。


そして、無縁仏として埋葬された彼女の墓は、事件を憎悪する多くの人間の手によって無残な有様を晒しているとも。


実は、アリシアが今回のテストを受けることを望んだ理由の一つが、<タラントゥリバヤ・マナロフ>の墓を参りたいというのがあったのである。


一人で。


そのためには、今回のテストに合格する必要があった。一回では合格できなくても、いずれは、という気持ちもあった。


ただ同時に、『タラントゥリバヤの墓の現状を見るのが怖い』という気持ちもあり、必ずしも積極的な動機とはなっていない。


『もし行けるなら行きたい』


という程度である。


その程度ではあるものの、同時に、決して無視できない気持ちでもある。



ちなみに、テストの結果が出るにはまだ数日掛かるとみられている。途中の彼女の行動をどのように評価するべきかで、意見が分かれているらしい。


特に、調子に乗ってスーツを破ってしまった件については、<暴走状態>と見なすべきか否かで難航しているとみられている。


人間の振る舞いとしてみれば非常に些細なことではあるものの、ロボットとしては本来ありえない挙動なので、軽んじるわけにはいかないのだ。


それでも、アリシアも千堂も、どのような結果が出ようとも受け止める覚悟はしているので、さほど気にもしていない。今回ダメだったとしても、次の機会を待てばいいと考えている。


それよりは、今日、どうするかだ。


刑事達は、本部と連絡を取り合い、今後の対応を協議している。ただ、会話を聞いていると、やはり可能な限り今日のうちに終わらせてしまいたいというのが、本部も含めた警察側の意向ではあるようだ。


正直、アリシアとしても、今日中に終わらせたいという気持ちはある。しかしその一方で、あの女性の気持ちを蔑ろにするのも違うと感じている。


それぞれの事情や都合や意向が絡み合い、簡単には答えを出せない状態にある。


人間社会においてはこのような状態になることは日常茶飯時ではあるものの、


『本当に、どうしたらいいんでしょう……』


アリシアは、途方に暮れるしかなかったのだった。



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