千堂アリシア、懐かしさを覚える
こうして時間貸しパーキングに車両をとめて、刑事が二人、千堂京一とアリシアを伴い、路地へと入っていく。
アリシアはほんの数日前に来たばかりだったものの、
『なんか、懐かしい気がする』
そんなことを思ってしまっていた。
もっとも、コデットと共に駆け抜けたのは、路地どころか家々の隙間だったが。
そうして歩を進めてると、
「あ、ナニーニ…?」
アリシアが声を上げた。
「ほう? あれがナニーニか。なるほど可愛げはないな」
千堂も、アリシアから話は聞いていたので、穏やかに微笑む。そんな二人の視線の先で、ナニーニが立てた尻尾を僅かに揺らしながら悠然と塀の上を歩いていく。アリシアが『ナニーニ』と呼んだのが聞こえていたのかもしれない。もしそうだとすれば、<ナニーニ>という言葉を自分のことだと認識している可能性がある。
ともあれ、
『良かった。まだ元気そうですね』
残された時間は必ずしも長くないかもしれないが、いつか来るその日まで穏やかに過ごしてもらえればと思う。
そんなことを思いながら例の服飾店へと向かった。するとナニーニもアリシア達を案内でもするかのように前を。
けれど、例の服飾店に到着する直前に別の家に入っていってしまった。餌をもらうためかもしれない。
『バイバイ……』
アリシアは姿が見えなくなったナニーニに対して小さく手を振る。
だが、刑事二人はまったく構うことなく服飾店に入っていき、
「警察の者です。逃亡中の指名手配犯についての捜査で参りました。ぜひ、ご協力をお願いします」
そこにいた店主の女性に警察手帳を見せながら申し出る。
しかし、店主の女性は、ギロリと刑事を睨みつけ、
「こっちはあんたら警察になんか用はないね。任意だろ? だったら協力する必要はない。今すぐ回れ右して帰りな」
酷く不機嫌そうな、硬い、断固とした拒絶が込められているのが誰にでも分かる声で告げた。
「そこを何とか。いくつもの事件の容疑者なんです。しかも、テロを起こす可能性さえある凶悪な。なんとか協力していただけませんかね」
刑事は、なるべく丁寧に話しているつもりなのだろうが、分かる者には分かる、苛立ちが隠しきれていない話し方だった。
店主の女性はそれが気に入らなかったのだろう。
「それが人に物を頼む態度か!? お前ら警察はいつだってそうだ! 人を犯罪者と決め付けて、土足で踏み付け、人生を滅茶苦茶にする! 汚らしい犬畜生めが!! どうしてもって言うんならここで土下座しろ! 床に頭をこすりつけて懇願しろ! それができないんなら帰れ!!」
爆発するかのような気迫で吼えたのだった。




