千堂アリシア、帰宅する
こうして、制限時間ギリギリで家に帰ってきたアリシアを、千堂京一は、
「おかえり」
笑顔であたたかく迎えてくれた。
彼女の<寄り道>については、当然、万が一の事態に備えて配置されていたロボット達によって記録され、逐一、報告されていたので、コデットとの<探偵ごっこ>についても、当然、彼の知るところである。
けれど、千堂は、それを責めなかった。
「随分とお出掛けを満喫したようだな」
穏やかに微笑みながら口にしただけで。
「あはは、お恥ずかしい限りです……」
アリシアは照れくさそうに頭を掻きながら応える。
『お出掛けの際に、予定外の行動に出てしまう』
ことは、人間でも日常的にあるものなので、それ自体はマイナス評価とはならないからだ。むしろ、その<寄り道の内容>こそが評価の対象となる。そこで、人間に被害が出るような振る舞いがなかったかこそが重視される。
そしてその点に置いても、アリシアの行動には大きな問題は見られなかった。ただ、
「調子に乗ってスーツを破ってしまったのは、さすがに減点かな」
「あう~……ごめんなさい……」
普通のロボットなら決してしないことをして、着ていた服を破ってしまうというのは、なるほど好ましくないだろう。
だから、減点も止むを得ないと思われる。けれど、その上で千堂は言う。
「正式な結果については後日改めて伝えるが、正直な印象としては、今回は難しいかもしれない。しかし、あの少女に対して丁寧に接したことについては、私個人は評価をしている。一般のメイトギアとしては当たり前のことだから、特段、加点対象とはならないとしても、私は嫌いじゃないよ」
「千堂様……」
彼の言葉に、アリシアは目を潤ませるような表情をした。
テストの結果などより、彼にそう言ってもらえる方が遥かに嬉しかった。どうせ、自分一人で出掛けたいとも別に思わないのだから。
ただ……
ただ、一つだけ、一人で出掛けられるなら行ってみたい所はあった。あったものの、『どうしても』というほどのものでもないので、残念でもない。
なにより、自分が行っても喜んではもらえないかもしれないし、そもそも、ロボットにとっては、本来、無意味な行為なわけで……
なのでアリシアは、それについては口に出すことさえなかった。
が、翌日、千堂京一の下に警察からの連絡が。
「実は、あなたの所有する<アリシア2234-HHC>から情報提供があった件について、詳しくお話を窺いたいと思いまして……」
とのことだった。
これについては、千堂も、あの日、帰ってきたアリシアから報告は受けていた。なので、
「分かりました。私共でできることであれば、協力は惜しみません」
と応えたのだった。




