人間、交流を図る
ちなみに、価格については、徹底した<過剰なインフレを防ぐ対策>により 貨幣価値は二十一世紀世紀初頭頃と大きく差はない。むしろ、一時期加速したデフレの影響もあり、二十世紀後半のそれに近いかもしれない。
コデットが手にした瓶入りのオレンジジュースはJAPAN-2内でも発生した<レトロブーム>に乗って大量に作られた二十世紀後半から二十一世紀前半にかけて流通していた商品の復刻版である。ペットボトルの方が確かに便利ではあるものの、瓶のデザインなどが今なお人気を集め発売から既に五十年以上経過しつつも今なお駄菓子屋などにおいては定番商品の一つとして扱われ続けているのだ。
店主の女性は、冷蔵庫から出した瞬間に結露し水滴が全体を覆ったオレンジジュースの瓶の蓋を抜き、決済を済ませたカードと共にコデットに渡してくれる。彼女はそれを受け取って、ゴクゴクと喉を鳴らしながら一気に飲み干していく。その姿は背景さえ差し替えればそのままCMに使えそうなほど見栄えのする光景だった
アリシアも思わずそれに見とれる。
人間が感じるであろう清涼感といったものとは本来縁がないはずのロボットである彼女にもそれが感じ取れてしまった。
『ぜひCMの素材に使いたいところですね』
とも思ってしまう。もちろん勝手にそんなことはしないが、するとそうやって店先で少女を見守っていたアリシアに対し、店主の女性が、
「面白い格好したロボットさんだね」
と声をかけた。そんな女性にコデットは、
「ロボットの探偵さんだよ!」
と元気よく答えた。それを受けて店主の女性は、
「あはははは! ロボットの探偵さんかい、こりゃあいい!」
愉快そうに大きな声で笑った。同時にやはりコデットがロボットを従えて<探偵ごっこ>をしていると察し、あたたかく見守ってくれた。商売としてみれば、<客に対する態度>とは思えないものの、人間同士の関係として見るなら、何とも言えないぬくもりがそこにはある。
コデットだけではなく女性の方にとっても、こうして交流を図ることで精神が満たされるのだと、分かる。店主の女性もこれを必要としているからこそ、この駄菓子屋を営んでいるのかもしれない。
これが人間というものだと、アリシアは改めて感じた。
感情や気持ちばかりを優先すると、大きな衝突が起こってしまう。けれど同時に、感情や気持ちを蔑ろにすると、今度は不満を溜め込むことになり、これまた、人間にとっては大きなリスクになる。その辺りのバランスが大事なのだとも、再度、確認したのであった。




