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千堂アリシア、地域の現状を想う

それにしてもここまで、コデット以外の子供の姿が全く見られなかった。通ってきた家々の隙間などには、子供用の乗用玩具などが置かれていたりしたが、子供そのものの姿はなかったのだ。


『育児中の世帯には人気がないと聞きましたが、やはりそういうことなのでしょうか』


アリシアもそう思う。事実、この手の、開発初期に生まれた区画は、様々な意味での<ライフラインの更新>が遅れ気味であり、どうしても<洗練された印象>は持ち得ない傾向にある。


そのため、若い世代には敬遠されがちであるという紹介のされ方も多く見られ、若い世代が定着するには決して低くないハードルとなっていた。


それでもなお、昔からここに住む者にとっては居心地も良いのだろう。また、年齢を重ねると変化を厭うようになりがちだという習性が人間にはあり、若い頃にここを出ていかなかった者達は、そのまま住み続けるという事例も少なくないらしい。


と、同時に若い頃にここから出ていった者達の中にも、年齢を重ねるとあえてここに戻ってくる者も、全体の比率から比べれば決して多いとは言えないにせよ、存在するのは事実だった。


こうして、世代別の比率で見ればいささか歪な地域という形で出来上がっていったのだろう。


これは実は、地球でも見られる傾向である。歴史的な景観を残すためにあえて従来の建築物などを残し、ライフラインの更新などは必要最小限に止めているような地域では、同じように、そこに住む住人達の年齢の比率が歪な傾向にあった。


とはいえ、現在ではメイトギアの性能も極めて高くなり、人間と変わらない、いや、ある一面においては完全に人間を上回っていることにより、生活面でのサポートには大きな問題がないため、深刻な事態とは認識されていない。


むしろ、親世帯を支える子世帯の負担は減り、同時に、『子世帯に負担をかけたくない』と願う親世帯のニーズとも合致していると言えるだろう。


ゆえにこの地域のような場所は、今後も増えることはあっても減ることはないと見られている。


状況を<問題>として捉えるか否かは、やはり捉える側の<解釈>によって大きく意味合いが違ってくるだろうから、そもそも解決すべきかどうかという点から議論がなされることになると思われる。


実際にその種の議論は、人類が火星に移住する以前から地球でも存在し、現在にわたってなお、明確な結論は得られていない。


どこに住み、どのような生活を営むか、それらは個人の自由として権利が保障されており、その結果、『人口比率が偏る』などの事象については、当然の帰結なのであろう。



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