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千堂アリシア、<ごっこ遊び>を続ける

指名手配犯についての情報を得たものの、アリシア自身がそれについて警察に情報を提供するということ以上の具体的な行動は、何もしなかった。


ロボットである彼女が、自ら逃亡中の指名手配犯について追跡するようなことはしないし、できない。<AIによって制御されたロボットによる人間の支配>を懸念する者達の強い働きかけにより、それは認められず、今後も認められるような流れには全くない。


AIやロボットは、どこまで行ってもあくまで<人間の道具>であり、自発的に人間を抑制するような働きかけはできないということだ。


これについては、


『犯罪者に対しては厳しく容赦なく臨むべきだ!』


という意見も根強いものの、


『法を拡大解釈し、恣意的に運用し、正義の名の下に他人を虐げる』


のは、他ならぬ人間自身が延々と行ってきたことであって、それゆえに無意識のレベルまで不信感や不安感が刻み込まれているのだろう。


このため、アリシアも、積極的に動くことはない。目の前で犯罪行為が行われている時には身を呈して被害者を庇うものの、今なお彼女自身の判断で<加害者>に攻撃を加えることはない。


こうして、ジャージに身を包んだ彼女は、再び<ナニーニの散歩ルート>をたどることになった。


例の指名手配犯についても気になるものの、そちらはやはり人間に任せることにする。こうやって『猫を追う』というのとはわけが違うのだから。


これはあくまで 、コデットが望んだ<ごっこ遊び>。


『子供を喜ばせる』ということについては、ロボットもためらうことはない。もちろん自身の役目を放り出してまでということはないが。


アリシアも、試験を放り出したわけではない。どころかこれ自体を、


『<想定外の事態に遭遇した状況についてのシミュレーション>として活かしている』


とも言えるのだ。


だから、時間が許す限り、状況が許す限り、徹底的に付き合おうと思う。付き合うことを、彼女自身の心(のようなもの)が望んでいる。


ジャージに着替えたことでさらに身軽になり、少々無理な動きをしても破れる心配もなくなり、汚れても気にする必要もなくなり、アリシアはさらに集中することができた。


すると、その時、


「コデットちゃん?」


不意に声が掛けられた。


「ママ!?」


ハッとなったコデットが視線を送ると、一目で、


<桜井コデットの母親>


と誰もが察するであろう、<大人になった桜井コデット>を彷彿とさせる女性が立っていた。


そしてその女性は、


「コデットちゃん、また猫さんを追っかけてるの?」


せっかくの可愛らしいワンピースが汚れていることは気に留める様子もなく、笑顔で尋ねてきたのだった。



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