由紀子、事実を事実として伝える
警察用のレイバーギアなどについてはここまで見かけなかったもののそれは必ずしもロボットが全く存在しないというわけではないということだ。
ロボットを使う者はやはりいて、良好な関係を築いてもいる。
新品同様とまではいかないものの、大事に使われていることが伝わってくる<由紀子>と呼ばれたアリシア2305-HHSに、千堂アリシアはホッとしていた。
加えて、
「由紀子も、昨日、ナニーニを見たよな?」
「はい、確かに目撃しました」
ナニーニに関する証言が正しいものであるということを、アリシア2305-HHS、いや、由紀子が裏付けてくれる。ロボットは嘘を吐けないからだ。
なお、主人にとって不利な証言をしないために、あえて口を噤むということも、実はできる。もっとも、それについては、警察が差押令状を提示すればメイトギアのデータやメイトギアの本体さえ差し押さえることができてしまうので、こと、刑事事件という事態になれば、あまり意味がなかったりもする。
それでも日常的な範囲ではプライバシーを守ってもくれるので、それほど神経質になる必要もないが。
ただ、こういう面においてもロボットに対して不信感を抱く者はおり、ロボットというだけで毛嫌いをする人間を生み出してもいる。ロボットが自身の<弱み>にもなるようなことを覚えているということ自体が許せないようだ。
いずれにせよ、少なくとも昨日まではナニーニが無事だったことが確認できて、コデットも少しホッとした様子なのがアリシアには察せられた。
ただ同時に少し気になるところはある。
猫は比較的決まった行動を取りたがる習性があると言われているらしいが、これまでの痕跡をたどると、ナニーニは従来の行動をなぞっていないように思われる。
これはそれまでと同じようにできなくなっている何らかの事情があるのかもしれない。
アリシアは、その辺りについて由紀子に確認を取る。
『ナニーニの健康状態はいかがでしたでしょうか?』
あえて口には出さず通信によって問い掛けた。それに対して由紀子も、同じく通信で、
『加齢に伴う各臓器の機能低下が原因と思しき衰弱が見られました』
との、返答が。
『やはり…』
生き物である以上いずれは訪れるそれに思い至り、アリシアはわずかに表情を曇らせた。
店員の女性は『餌に飽きたんじゃないのか』とは言っていたものの、実際には、体が衰え、それまでと同じ行動が取れなくなってきているがゆえの変化である可能性が否定できなくなってきたのである。




