千堂アリシア、思わず笑みを浮かべる
街角に警察用のレイバーギアが交差点ごとに配備されている<都市としてのJAPAN-2>においては、<捜索願い>も、まるで近所に声を掛ける程度の気軽さで出されるものになっている。
警察用レイバーギアだけでなく、民間警備会社のレイバーギア、コンビニをはじめとした各種店舗の監視カメラや、警察に協力を申し出ている一般家庭のメイトギアまでも網羅しての、
『データを検索する』
的な捜索が基本なので、『迷惑をかける』という印象が極めて薄いのだ。
しかも、<迷子>の類であればほんの数分で見付かることも珍しくない。およそ手間は掛かっていない。
けれど、今回に限っては、どうやらそれは使えないようだ。
また、今回の試験のために派遣されたロボット達は、当然、この地域については『ある程度は知っている』というレベルでしかなく、完全には理解していないし、地域猫に関する情報も十全には得られていない。
加えて、試験の監視役であるから、たとえ知っていても、人間の身体生命に重大な影響を及ぼす危機的状況が差し迫っているような場合でない限りは、提供してはくれないし、そもそも応答もしてくれない。
試験の受ける側であるアリシアに、『迷い猫を探す』程度のことで協力はしてくれないのだ。
そこでアリシアは、自身が口にした『現場百回』の言葉に倣い、地道に、ナニーニがいきそうなところをしらみつぶしに当たることにした。
コデットの案内がある分、ただ闇雲に探すわけじゃないこともあり、ただ『困った困った』と右往左往するよりはまだ可能性はあるのだから。
一方、コデットは、<ロボット探偵>であるアリシアと一緒にナニーニを探せるということで気持ちが昂ぶっているようだ。きらきらとした期待に満ちた目で、アリシアを見詰めている。
「ではまず、どこをあたりますか?」
アリシアの言葉にコデットは、
「こっち!」
と指を指して、路地を駆け出した。
いかにも少女らしい裾の広がったピンクのワンピースをまとった背中が、パタパタと路地を駆けていく。
その姿がまた愛らしくて、アリシアは思わず笑みを浮かべてしまっていた。
<アトラクションの中のコデット>は、孤児で、しかも盗賊の一味だったこともあり、とても生意気で、礼儀礼節もまるでわきまえてないいかにもな<悪童>だったが、それでいてその姿は、こうやって自分の前を駆けていく<桜井コデット>のものと、大きくは違わなかった。
だからこそ、<アトラクションの中のコデット>に対しても、この<桜井コデット>へのそれと変わらない接し方を心得ている。
その判断が間違っていないことを、軽く流すように走りながら、アリシアは実感していたのだった。




