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六話

ミラの婚約破棄騒動は社交界に一気に広まった。それはそうだろう。ミラは社交界では有名であったし、その妹のサマンサもある意味有名であった。


 ローレン公爵家は大丈夫なのだろうかと、有力な貴族らは顔を歪め、その話を聞いた国王は大きなため息をついた。


「ローレン公爵家は大丈夫か?」


 国王は宰相に向かってそう呟くと、宰相は少し考えた後に肩をすくめて言った。


「ですが、結果としてはミラ嬢が嫁ぐ方が安心かと。ローレン公爵家が力を落とす分には問題がなく、アンシェスター家とは国としては繋がりを強くしておきたいところですので。それに王家の血を継ぐローレン家から才女と有名なミラ嬢が嫁ぐというのは良いかと。アンシェスター辺境伯は少しばかり難しい人ですから、サマンサ嬢とではうまくいかないでしょう。」


 つらつらと並べられた言葉に国王は頷きながら口を開いた。


「そうだな。妻の話からもミラ嬢はとても礼儀正しい良い娘だと聞く。」


 妻のミラ嬢の噂を聞き、憤っていた姿を思い出しながら、国王は苦笑を浮かべた。


「ええ。私の妻も、ミラ嬢は高く評価しています。それ故に、これからサマンサ嬢は大変でしょう。」


「まぁな。女の世界も大変だからな。」


 男の世界よりも女の世界の方が恐ろしい。そう国王も宰相も考えておりぶるっと肩を震わせた。


「今回の事でかなりの婦人をローレン家は敵に回したことでしょうね。ミラ嬢を可愛がっていた婦人は多いですので。」


「そうか。まあ、そんな令嬢であればアンシェスター家に嫁ぐのも安心か。」


「はい。アンシェスター辺境伯も、そろそろ身を固めねばならない年ですしね。」


 十代でアンシェスター辺境伯となったエヴァン・アンシェスター。今年で二十五になる青年は、その美しい外見には似合わない戦場の悪魔という異名をつけられていた。


「あぁ、それと、ミラ嬢の噂を流したのは誰だったんだ?」


「ミラ嬢の元婚約者であり、現サマンサ嬢の婚約者であるロン・シェザーです。」


「あー。あのシェザー公爵家の次男か。ほう。シェザー家がよく放し飼いにしているな?」


 公爵家同士繋がりを深めるための婚約かとも思っていたが、こうなってくるとシェザー家の思惑がなんとなくうかがえる。


「何と言うか、どちらかと言えば早くシェザー家から追い出したい様子ですね。出来が、あまりよろしくないようです。」


 愚かな次男を使ってローレン家の力を削ぐつもりなのかもしれないと国王は思案しながらも、ミラの事を思うと顔を歪めざるを得ない。


「なるほどなぁ。はぁ・・だが、ミラ嬢には少し可愛そうだったな。婦人達を止めなければ恐らくミラ嬢の汚名はすぐにでも返上できるが、そうしない方が今回はよさそうだしなぁ。代わりに、彼女にはそれなりの対価がいくよう手配をしてくれ。」


「かしこまりました。」


「それにまぁ、アンシェスター辺境伯は生き急いでいる所があるからな。妻を持ち、命を大切にしてほしいしな。」


 エヴァン・アンシェスター。南の守護者としてその力を発揮し、王家に忠誠を誓う男。そんな男にはよい妻を持つ資格がある。


 国王はにやりと笑うと、結婚式には直々に出向いてやろうと笑みを浮かべたのであった。


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[良い点] >ローレン公爵家が力を落とす分には問題がなく 実家が王家から冷遇してよい相手と判断されていること。役立たずと思われているんだね、分かります。 [気になる点] >アンシェスター家とは国とし…
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