おまけ 5
久しぶりに顔を合わせたザックとマリーナは、無言で向かい合ってお茶を飲んでいる。
「…久しぶりだな。」
「ええ。」
また無言の時間が訪れる。
はっきり言えば顔すらもう会わせたくないと思っていた二人であった。ただ、ミラが居ると言う場所では、ミラを敵にすることで協力できる立場であり、ミラさえいれば、二人の苛立ちの矛先はそこへ向かうのだ。
そんな所へ、天使のように愛らしい二人がひょっこりと顔を出した。
『おじいちゃま。おばあちゃま。』
潤んだ瞳でそう呼ばれた二人は、ミラの子どもだと言うのになんと愛らしいのだろうかと、目を丸くした。
「ど、どうしたんだ?」
「さぁ、こちらへいらっしゃいな。」
なんだかんだと言って初孫である。見れば見るほどに愛らしい顔立ちをしており、可愛く思わないはずがない。
「へへ。おじいちゃまとおばあちゃまと会えてうれしいです。」
「わたしも~!」
そう言うロナウドとヘレンに、ザックはだらしない笑みを浮かべると言った。
「おじいちゃまも会えて嬉しいぞ。」
「おばあちゃまだって!」
そんな二人に、にこにこ笑顔で二人は尋ねた。
『でもなんでずっと会えなかったの?』
その言葉に、二人は顔を一瞬引きつらせると、いいことを思いついたとばかりに話し始めた。
「はぁ、実のところお前の母と父は、おじいちゃまとおばあちゃまをいじめるのだ。」
「そ・・そうなのよ。私達は貴方達に会いたかったのよ?それなのに、ぜんぜん会わせてくれないの。」
全ての責任をミラとエヴァンに擦り付けようと、二人は離し始める。
「お前達の父と母はいじわるなのだ。」
「そうよ。ひっどい悪人なのよ~。」
その言葉に、ロナウドとヘレンは瞳いっぱいに涙をためると言った。
「そうなの?!」
「おじいちゃまとおばあちゃまいじめられてたの?」
まだ幼い子どもである。言われた事を鵜呑みにするだろうと、会いたいなどと今まで一度も考えた事がなかった二人だが口から流れるように嘘をつく。
「それに、二人のせいでおじいちゃまとおばあちゃまは酷い目にあったんだ。」
「二人のせいで、おじいちゃまとおばあちゃまは不仲になったのよ。」
ロナウドとヘレンはひっくひっくと鳴き声を上げながら、口を開いた。
「そうなんだね。おじいちゃまもおばあちゃまも、だから貧乏なんだね。」
「そんな貧相なドレスにスーツだから、なんでだろうって思っていたの。」
『え?』
思わず自分の身なりを見て、二人は顔を引きつらせる。だが、追い打ちをかけるように双子は喋る。
「お肌はぼろぼろだし。」
「お顔はしわくちゃだし。」
『お化けみたいだもん!』
二人の顔は見る見るうちに赤くなっていく。
双子はきらきらとした涙を流しながら言った。
「でもね、お父様もお母様もおじいちゃまとおばあちゃんが思っているような悪い人じゃないよ?」
「そうだよ。私達二人とも大好きだもん。」
『ふえぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇっぇぇぇぇん!』
高音域の耳をつんざくような泣き声が屋敷中に響き渡る。
ザックとマリーナは耳をふさぎながら慌てて言った。
「そ、そうだな!私達の勘違いだった!」
「そうね!勘違いだわ!だから泣きやんで!」
その言葉に、双子はぴたりと泣き止むと、小首を傾げた。
『本当に?』
「あ、あぁ。」
「そうね。」
げっそりとした顔の二人に、双子は笑顔を向けるとぎゅっと抱き着いて言った。
『よかったぁ。』
笑顔に戻った二人は本当に天使である。
「そうだ。あのね、プレゼントがあるんだ。」
「はい。どうぞ!じゃあ、また遊びに来るね。」
二人はぴょんとソファから降りると、扉から手を振って出て行ってしまった。
ザックとマリーナは大きくため息をつき、プレゼントとして渡された箱を見て、にやにやと笑った。
何が入っているか楽しみである。そうして、箱を開けた瞬間、二人は悲鳴を上げた。
「わぁぁぁっぁぁぁ!」
「きゃぁぁぁっぁ!」
箱の中から出てきたのは、ダンゴ虫にバッタに、芋虫に蛙。
ザックとマリーナは卒倒した。




