おまけ 4
ロナウドとヘレンは楽しげに屋敷の至る所に入り込み、そしてくすくすと笑いながら楽しげに二人で探検にいそしむ。
廊下ですれ違う執事や侍女達は、その可愛らしい姿に、ローレン家に天使がいると微笑ましく思った。
わずかに残っていたミラの世話もしていた侍女達からしてみれば、ミラに似た双子の姿に心から癒される。
「ロナウド様、ヘレン様。もうすぐティータイムですが、どこで休憩されますか?」
侍女のリサは、ミラによく似た双子を見て、心から笑みを浮かべるとそう尋ねた。
「あ!貴方がリサね?お母様から貴方の話は聞いていたの!でも貴方、昨日はいなかったわよね?」
ヘレンにそう尋ねられ、リサは頷いた。
「はい…私がお嬢様をお慕いしていたのをご主人様方は知っているので、お嬢様に会う事を禁じられているんです。」
「何それ。ひっどいなぁ。」
ロナウドとヘレンは腕を組むとむっと顔を歪め、そして良い事を思いついたとばかりにリサに言った。
『一緒にアンシェスター家に帰ろうよ!』
「え?」
「大丈夫。お父様もお母様もきっといいよって言ってくれる!」
「そうそう。」
リサは苦笑を浮かべると頭を下げて言った。
「私も一緒に行きたい気持ちはやまやまですが、きっとご主人様が許しませんので。」
『大丈夫。いいって必ず言わせるから。』
声を合わせてそう双子に言われ、リサは微笑むと頷いた。
「かしこまりました。では、アンシェスター家にもしも行けるとなれば喜んでついていきますね。」
ロナウドとヘレンはにっこりとほほ笑むと頷き、リサに言った。
『ティータイムはいらないから大丈夫。まずは、ロンおじさんのところにいかないと!じゃあねぇ!』
くすくすと笑いながら廊下を二人はかけていく。
リサはその背を見送りながら、ミラが幸せになった事に心から喜んだ。
双子はロンの部屋の前まで来ると、にやにやと笑いながら部屋をノックした。
『ロンおじさん。少しだけお部屋に入ってもいいですか?』
執事が部屋を開け、双子を招き入れる。
部屋にいたロンは、双子の登場に眉を上げると、少し考えてから愛想笑いを浮かべて言った。
「どうしたんだい?もしかして…君達も僕の方がお父さんにふさわしいと思って、相談に来てくれたのかな?」
その言葉に、ソファへと飛び乗るようにして座った双子は笑い声を上げた。
「何言っているの?そんなの絶対に嫌だよ。」
「ロンおじさんがお義父さんなんて、ありえないよー。」
天使のような見た目に反して馬鹿にするようなそんな言葉に、ロンは目を丸くした。
「な・・・何を。」
ロナウドとヘレンはにっこりとほほ笑みを浮かべると、屋敷の中で探って手に入れた手紙を机の上へと並べ始めた。
「チェルシーに、マリア、エドナ…ロンおじさんってば、素敵なお友達がいるんだね。」
「皆、何かあった時の為にって手紙を大事にとっていたよ。でも結局怖くて出せないって言ってたから、もらってきたんだ。」
二人は可愛らしい笑顔でそう言うと、はっきりとした口調で言った。
『この色ボケおやじ。お母様に今後一切近寄るな。もし近寄ったら、証拠揃えてサマンサおばさまに言うから。』
「え…」
天使のような笑顔で悪魔のような言葉を吐く二人に、ロンは顔を引きつらせた。
『あ、でもやめた侍女の一人が妊娠したらしいって…ふふ。これがばれたらきっとこの屋敷を追い出されるね。近いうちに訴えるって言っているらしいから、荷造りはしておいたほうがいいよ。』
そう言うと双子はクスクスと笑い声を上げながら手紙はしっかり回収して部屋の外へと駆けだしていく。
ロンは青ざめた表情で呆然とし、そしてどうしたらいいのか分からず、そのまま動けずにいた。