おまけ 3
翌日ミラはサマンサを訪ねる為に準備をしていたのだが、朝になって双子が予想外の事を言い始めた。
「僕達はここでお留守番していてもいい?」
「病院に行っても、何もすることないもの。いいでしょう?」
「でも・・・」
サマンサに二人の姿を見せたいと言う思いもあったが、未だに一人の子も設けることが出来ていないサマンサには変なプレッシャーになるといけないというのも事実である。
ミラは少し考えると頷いた。
「分かったわ。ただし、おりこうさんにね。そして、屋敷から出てはダメよ。」
母のその言葉に二人は飛び跳ねて喜ぶと元気よく返事をした。
「はーい!」
「ちゃんとおりこうさんにしておくね!」
ミラは二人をぎゅっと抱きしめて部屋を出ると、部屋の外にはロンが待ち構えていた。そして、子ども二人がいないと気づくと、ロンはミラの手を引き、突然抱きしめた。
「なっ!?何をするのですか!?離して下さい!」
暴れるミラを、ぎゅっとロンは抱きしめ、そして言った。
「ずっと…ずっと後悔していたんだ。」
「突然何を?!」
「ミラの事を、最初から嫌がっていたわけじゃない。君の事を愛しいと思っていた。けれど、優秀すぎる君を見て、次第に自分が情けなくなって…それで…あの頃の僕は君に酷い事をした。頼む。謝るから、謝るからもういとど僕とやり直してくれ!僕はやっぱり君じゃなきゃダメなんだ!」
「やり直すも何も、もう貴方も私も結婚しているでしょう!頭を冷やして下さい!」
「ミラ!」
「お母様?大丈夫?」
扉が開き、ロナウドとヘレンが心配そうにこちらを見る。
ロンは慌ててミラから離れると、小さくため息をつきながら言った。
「頼むから、この家に帰って来てくれ。君が居なくなってから、ローレン家はおかしくなったんだ。」
「ロン様。私はもうこの家には帰ってきません。」
「ミラ!僕の事をもう大切には思ってくれないのか!?」
この男はいつになったら現実を見るのだろうか。ミラは大きくため息をつくと、はっきりとした口調で言った。
「私が大切に思っているのは、アンシェスター家の者達です。ロン様。今後一切、私に触れないで下さい。触れた時点で、夫へと伝えます。」
「なっ・・・・分かったよ。すまなかった。」
ロンはそう言うとため息をついて言った。
「サマンサのお見舞いに行こう。」
「場所は知っています。一人で行くので結構です。」
「え…」
ミラは双子にひらひらと手を振ると、ロンを残してその場を後にした。
ロンは大きくため息をつくと、自室へと向かって歩いていく。
その後ろ姿を、ロナウドとヘレンは見つめてた。
「ねぇロナウド。あの人ちょっと阿呆なのではないかしら。」
「そうだねヘレン。バカで阿呆だね。」
「お母様は天使のように優しすぎるのよ。」
「本当にそうだよ。」
双子は手を繋ぎ、顔を見合わせるとにっこりと笑った。
『お父様に言われたとおり、ちゃんと、立場ってものは分からせてあげないとね!』
声を合わせてそう言った二人は、クスクスと笑いながら廊下を手を繋いで走り始めた。