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十四話

エヴァンは、ミラを部屋へと案内し、そしてその後ゆっくりと休むように伝えると自らは執務室に戻った。そして、護衛兼従者として送り出していたレンを呼び出すと、神妙な面持ちで尋ねた。


「どういうことだ?」


 その言葉に、レンは大きく頷いた。


「本当にですよ。どういうことですか。エヴァン様。もっとお嬢様の、あ、今は一応お嬢様とお呼びしますね?正式な結婚式後に奥様と呼ばせて頂きます。」


「は?あ・・・あぁ。それはいいが。」


「はい。エヴァン様。もっとお嬢様と会話をしてください。お嬢様にもっとお優しく、そのぎこちない笑顔ではなく自然に笑ってください。」


 レンの言葉に、エヴァンは眉間にしわを寄せると言った。


「ちょっと待て。お前、出発前は本当に悪女だったらどうしようかと心配していたじゃないか。とにかく、彼女について聞かせてくれ。あまりに描いていた印象と違って、動揺している。」


 レンはその言葉に深々と頷くと、旅の中でのミラの様子を語って伝えた。予想以上に優しいその気質や、使用人にまで配慮してくれる気配り、噂などあてにならないと自慢げに言ってのける姿に、いつもは冷静な性格のレンを知っているエヴァンからしてみれば驚きであった。


「そう・・か。」


「はい。噂については現在どうしてそうなっているのか調査中ですので、分かり次第お伝えします。とにかく、エヴァン様はこれからミラ様との仲を深めて行ってください。あれほどの人は中々いませんよ。逃がしてはいけません。」


「ん?」


 レンは鼻息を荒くすると言った。


「いいですか。これは幸運な事なのですよ?こんな辺境の地に、あれほどの素敵な女性が来てくれるなんて、めったにありません。エヴァン様は見た目はいいのですから、それを活用して下さい。」


「なっ・・お前なぁ。口が過ぎるぞ?」


「申し訳ありません。ですが、それほどに、素敵な女性だと感じています。エヴァン様にも、幸せになってもらいたいのです。」


「・・・・レン。」


 これまでエヴァンにこき使われてきたレンであるからこそ、エヴァンの仕事の忙しさや大変さは知っている。王都では心無い噂も多い。それでもエヴァンはこの国を守ってきた守護神である。そんなエヴァンにレンは幸せになって欲しいと思っていた。


「ですから、当分、ミラ様と一緒に過ごす時間を捻出して下さい。」


「ん?」


「はい。こちらの資料から目を通して下さい。さっさと仕事なんて終わらせて、ミラ様と過ごす時間を頑張って捻出しましょう。」


「おい・・・」


「はい。お仕事お仕事。」


 なんだかんだと、結局は仕事を片付けなければどうにもならないと、エヴァンは大きくため息をつくと目の前の資料の山に手を伸ばしていくのであった。


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