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三人の役割分担

 学校が終わるまで『神林美優』について思い出していた。小一から小三まで遊んだ幼馴染み『神林美優』。よくその子と公園や僕の家で遊んだものだ。転校したからアルバムには勿論載っておらず、僕と写っている写真が数枚、家にあるだけだった。そして学校が終わり待っている黒の高級車に乗ると、運転手が、


「今日郁乃お嬢様はお仕事がありませんので、彼女の学校にお寄りします」

「あ、はい……」


 いやだなーっと思いながらそのまま彼女の学校に寄り彼女を乗せて一緒に帰った。『神林美優』の話をしようかと思ったがまだ時期尚早と思い彼女に話さなかったから無言のまま帰宅する。そしてマンションの中に入ると三女の羽美がもう既に料理をしていた。


「早いな。帰るの」

「はい、私はここからそう遠くない高校ですので」

「そうなんだ」

「はい」


 相変わらず淡々と喋る子だな。そして僕は部屋に戻り彼女達に勉強を教える準備をした。荷物を持って一階の小さい勉強机に行くと、羽美が慌てた様子で、


「済みません。料理を煮込んでから勉強で構いませんか?」

「あぁ、構わないよ」


 そして料理を煮込み初めてから羽美が勉強机に来た。


「郁乃の奴はどうした?」

「郁乃は……多分。一人で勉強するかと……」

「はぁ、全くあいつはーっ」

「……」

「まぁ、いいや。勉強は強制じゃないから。羽美、しよう」

「はい」


 そして分からないところを教えていくが、解いている問題を見てもある程度の基本は出来ている。


「そこまで勉強悪くないのになんで家庭教師を雇うんだ?」

「それは……」


 何か言いにくそうだ。訳ありか?


「まぁ、無理に言わなくても……」

「……出来るだけ上の大学を目指しているんです」

「そうなのか。なら、これじゃあ勉強が不足しているな。もっと解けるようにならないとな」

「はいっ」


 羽美は少し嬉しそうな顔をしていた。勉強を教えていると彼女から不意に訊いてくる。


「今まで好きな子とかいたんですか?」

「え?」


 僕はドキッとした。えっとーっ、え?


「どうしたの急に?」

「いえ、恋愛しなさそうなんで」

「……好きな子はいるな」

「! ……いつから好きなんですか?」

「……引かないか?」

「……はい」

「かれこれ8年くらい?」

「……そうですか」


 好きな子にそっくりな子にそんなこと言うんだから、何か恥ずかしいな。


「料理出来る子は好きですか?」

「え? あぁ、まあね」

「そ……うですか」

「?」


 彼女は幾分か頬が緩んでいるように見えた。


「どうかしたか? 何か解けなかった問題が解けたか!?」


 そしたら直ぐに無表情になり、いえ別にと答えた。そして1時間半ほど彼女に勉強を教え終え、ご飯を食べることにした。


「済みませんが、郁乃姉さんを呼んできて下さい」


 渋々彼女の部屋の前に行き、ノックをした。


「ご飯出来たって」


 そうしたら相変わらず無言だった。


「ったく」


 僕が下に降りると彼女が部屋から出てきた。あれ? 意外と素直じゃんと思っていたが、下から羽美が言った。


「あ、返事無さそうだったので私がlineで呼びました」


 そして三人無言で食べる。意外にもあの賑やかな長女である杏奈の重要性を感じた。


「杏奈がいないってことはドラマか映画の撮影か?」

「えぇ、ドラマの撮影です」

「だから昨日番宣のバラエティに私が行ったの」

「あ、成る程……」


 そしてまた静かになる。


「あ、杏奈が何か一番バラエティ向きな気がするよなーっ」


 そういうと二人の手が止まる。あれ? まずったか?


「一番芝居が上手いんです、姉さんが」

「あ、そうなんだ」


 そして黙々と食べ終えた郁乃は皿をキッチンに持っていき、さっさと部屋に戻って行った。


「相変わらずよく分からない女」

「けど一番郁乃姉さんが仕事に対してストイックかも知れません」

「え? そうなのか?」

「えぇ、芝居に一番情熱燃やしてますから」


 そうなのか。それは意外だな。そしてご飯を終え一階で羽美に勉強を教えていると、21:00くらいに杏奈が帰ってきた。


「たっだいまーっ」

「お帰りーっ」

「お帰りなさい。杏奈姉さん」

「ふーっ、疲れたーっ」


 一階にあるソファに項垂れる。


「ご飯入れますね」

「たしゅかるーーっ」


 そして彼女はガツガツとご飯を食べ、洗面所に行った。どうも直ぐに風呂に入るっぽい。

 その間は羽美に勉強を教えた。そうしているとスマホが揺れた。見ると、女優の桐本歩とアイドルの前野ミヤコと小池沙織からlineが来ていた。前まで勉強を教えていた子達からである。

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