え? それなんてエロゲ?
昨日と今日にかけて『神林美優』と名乗る女からの手紙が僕の部屋側のドアの前に二通届いた。そこにあるということはやはり一緒に住んでいるあの三人の内の一人が昔から僕の好きな幼馴染みなのだろう。しかし二枚とも活字だから筆跡からの特定は出来ない。
(用意周到だな。どんだけ特定されたくないんだ!?)
まぁ、考えても仕方ないと思いそのまま寝た。そして朝ベッドが狭く感じたので起きると隣に女子が寝ていた。
「!?!」
髪を解いているから一体誰か分からない。しかしいつも見ている顔だから三人の内の一人なのは確かだ。いやそんなことより、
(えっ、ちょっ、えーーっ?)
僕は混乱して、どうすれば良いか分からなかった。起こすべきか、そのままにすべきか迷った。
「むにゃむにゃ、もう食べられない……」
こっちは幸せそうだなーおい! 僕はとりあえず彼女を起こさずに布団から出て、顔を洗いに洗面所に行った。そして洗面所のドアを開けると、そこには軽くバスタオルを体の前を押さえた裸の僕好みの女子がいた。どうやら朝風呂を入っていたらしい。
(ふむ、これは……)
「やぁ、おはようっ」
僕は爽やかに挨拶をした。
「~~~、馬鹿ーーーっ!!」
彼女は赤面し思いっきり洗濯物の籠を僕に投げて、見事に直撃した。
「ごへっ!!!」
「もう馬鹿っ!!」
そして彼女はドアをバンッと閉めた。もう朝から最悪だっ。僕は痛みを感じながらため息をもらして部屋に戻ると、寝ぼけてキョロキョロする彼女と目があった。
(あ、えーと……)
「……お、おはよう?」
「え? えっ!?」
彼女は困惑し顔を赤らめ、
「きゃーーーーっっっ!!!」
流石は女優だけあり肺活量が大きく要するに、うるせっ!!
「吉野君! なに人の部屋に入っているんですか!? 早く閉めて下さい!!」
「あ、はい。ごめんなさい!」
僕は急いで僕の部屋を閉めた。そうしたら下からどたどたどたと足の音がして、険悪な顔でこっちに向かって走ってきた。あの顔は多分……、
「あんた! 羽美の部屋に入った訳!?」
「違う違う。ここは僕の部屋!!」
「は!? 一体何言って……」
郁乃は僕の部屋を見て、一番奥の開けっ放しの部屋を見てため息をした。
「開けて」
「え?」
「良いからここの部屋開けなさい!」
「え? だから誤解……」
「良いから!!」
そして僕は渋々ドアを開けると、彼女は中を見てベッドにいる彼女に言う。
「ここはこいつの部屋よ。羽美出てきなさい」
「……そ、そうですね。私の部屋じゃないようです」
そして羽美は僕の部屋から出てきて、奥の部屋に行った。
「あ、ありが……」
「洗面所の件はまだ許した訳じゃないんだから!」
そう言って彼女も自分の部屋に行った。
(本当に可愛くない奴だ!)
そして僕も部屋に入り、もう一眠りした。
「……野君、吉野君」
「……ん?」
目を覚ますと僕の近くに好みの顔があった。ついびくっとすると、
「吉野君。朝ですよ」
「え? あ、あぁ……」
彼女を見るとエプロンをしていた。
「あ、えーっと、う……う」
「羽美です」
「あぁ、そう羽美っ」
「もう、まだ名前覚えてないんですかーっ?」
「ごめん……」
「ところであの……」
彼女は目を少しキョロキョロしてもじもじしながら、
「朝は済みませんでした。私は寝ぼけが凄くて偶に部屋を間違えるんです。だから今日はとんだ勘違いを……」
「え? あぁ、そうなんだ。まぁ、それは良いって。人間間違いはあるさ」
「……はい」
「分かった。起きて服着替えて降りるから」
「分かりました」
そして四人で朝ご飯を食べると、正面にまだ眠そうな奴がいる。髪を解いているから分からないが、郁乃と羽美じゃないから、長女の杏……杏……、えーっと、
「杏奈姉さん。起きて下さい。味噌汁の中に顔が入りますよ」
「え? うん……」
杏奈はうとうとと首が上下に揺れる。
「昨日はそこまでじゃなかった気がするが、杏奈は朝起きるの苦手なのか?」
「そうですね。杏奈姉さんは基本朝が起きるの苦手なタイプですね」
「姉さんは夜型だから」
そうなのか。そしてご飯を食べ終わり僕達は学校に登校するのだが、僕は今日もまた怒りん坊の郁乃の車に乗り、ため息をもらす。
「何?」
「いや、別に……」
「ふーん、そ」
もう今日は朝から散々だな……。朝から好きな幼馴染みにそっくりな女子が隣に寝ていたり、それから裸を見たり……ん? 散々ではないか? あれ? ところで今日は怒りん坊から話が振ってこないな。裸を見たのがまずかったのかも知れないな……。一瞬だったが、きれ……。
「何どうしたの?」
郁乃はしかめっ面でこっちを見てくる。
「あ、いや何でもない」
そ、そんなに顔というか気配が出ていたか? そして彼女の学校に先に着いたので彼女は降り、僕も学校に着いて登校した。そうしたら今まで話さなかった女子と話すようになり、女の心変わりに怖さを感じつつもついにやにやしてしまう。
「最近モテモテですな。吉野君」
「揶揄うなって」
昼休み、一緒にご飯を食べる山本がにやにやして言う。
「何? 付き合う相手とか決めた訳?」
「まさかっ!」
僕は真っ向から否定したから山本は少し驚き、
「お前、まだ昔好きだった女を忘れてないのか!?」
否定出来なかった。
「まじかよ……、もう出会えない女なんか忘れてまだまだ良い女なんて沢山いるんだから切り替えようぜっ?」
「なぁ、山本」
とりあえずこれだけは山本に言いたかった。
「ん? なんだ?」
「お前なら昔好きだった彼女そっくりな女子が隣に寝ていたり、彼女そっくりな子の裸を見れたらどうする?」
「え? それなんてエロゲ?」
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