自己紹介
一階に降りた僕はリビングに行くと三人の内の一人が料理をしていた。
(あー、まだ見分けが分からない!!)
服以外全く同じだった気がするから区別が出来ない!
僕がう~んと唸っていると、
「どうかしましたか?」
「君は……」
「そう言えば自己紹介まだでしたね。私は末妹の羽美です」
「成る程……他の二人はどうなん?」
「呼んで来ましょうか?」
「え? あぁ、頼む」
そして呼ばれて来た内の一人は明らかに嫌そうだった。
「羽美何で呼んだの!? 今ドラマが良いところだったのに!?」
「吉野君にまだ自己紹介してないと思ったから」
「こんな男に自己紹介しても仕方ないじゃないのよ!!」
「まぁ、良いじゃん。郁乃ーっ。ちゃんと紹介しようよ」
「ちっ」
「私が長女の杏奈で……」
「私が次女の郁乃よ!」
「そうか、分かった」
「私、部屋に戻りたいけど良いかしら!?」
「あぁ、構わないが」
「……ふん!」
郁乃と名乗る女は自分の部屋に戻っていった。
(あいつは多分違うかな?)
僕は彼女の背中を見ながらそう思うと、杏奈と名乗る女がにやにやしてこっちを見ながら言う。
「ん~、もしかして郁乃ちゃんにもう興味ある訳?」
「な、なんであんな女を!? 興味なんて起きないよ!!」
「ふーん、そうなんだ~」
まだにやにやしてやがる。顔が本当に昔引っ越しした幼馴染みに似ているから困る。
「あのどう見分けたら良い?」
「う~ん、それは難しい質問ねーっ」
「それを含めて同居するんです。分かりましたか?」
「……」
分からない。分からないが、『神林美優』の正体を見つける為にはそうするしかないな。
「まぁ、宜しく頼む」
こうして彼女達との不思議な同居生活が(多分)始まった。そしてリビングでしばらく待っていると、三女の羽美が美味しそうな料理を机に持ってきて、
「料理出来ましたー」
「美味しそうだな」
「ありがとうございます」
彼女は少し照れたように感じに見えた。
「あの済みませんが、お姉さん達を呼んできて貰えませんか?」
「あ、あぁ分かった」
まず二階に上がって直ぐの部屋は僕ので、次は……誰だ?
「そこは杏奈の部屋です」
「成る程」
僕はノックをした。
「ご飯出来たって」
そしたらドアの奥からはーいと言う声が聞こえた。そして隣の部屋は確か性悪女の部屋だったな。僕はノックをしたが返事がない。
「ご飯出来たって」
し~ん。
僕は腹が立ってつい、
「開けるぞ!!」
「え、ちょっとまっ……」
開けると彼女は下着姿だった。
「え、あっその……」
「……こ、この、馬鹿ーーー!」
彼女は近くにあった数冊の漫画を投げてきた。
「ぐわっ!!」
見事僕にクリーンヒットしてよろけた。
「だから同居なんて反対なのよ!!」
彼女はぷりぷりしながらご飯を食べる。
「くくくっ、郁乃も返事しないからよ……」
多分長女と思われる彼女は肩を震わしながら食べる。
「そうですよ。それも含めてお互いを知るということです」
「何!? そこまで彼のこと知らないと駄目なの!?」
僕は三人を気にしながら、静かにご飯を食べる。三人を比べて見ると明らかに髪型が違う。髪の丈は同じだがそれぞれ結び方が違っている。よく笑う女は普通にポニーテイルで、よく怒る女はくるっと丸めて首の辺りで髪を団子っぽくして、料理の彼女は下は伸ばしててんこつの下辺りに小さな団子を作っている。
「兎に角、私はこいつとの同居は反対だから」
次女は皿をさっさとキッチンに持って行って、部屋に向かった。彼女は上下のくっ付いた白服のミニスカートだった。家でもあんな派手な格好しているのか……。僕は目線を彼女から逸らすと多分長女がにやにやしてギクッとする。
「本当に郁乃のこと好きよねーっ」
「ば、違うわい!」
「……」
そしてご飯を終わり皿をキッチンに持って行って僕も部屋に戻った。
初恋の彼女と顔は同じだが性格は三人ともばらばら。そして初恋の彼女はもっと優しかったイメージだ。あんなににやにやしたり、激昂したり、物静かな感じじゃなかった気がする。
はぁとため息をしていると、ノック音がした。はいと返事をすると、
「や」
「……」
「元気かな?」
「えーと、君は……」
「まだ覚えてないのか? 長女の杏奈だよ」
「あぁ、そう杏奈か」
「え? 呼び捨てなん?」
彼女は急に赤らめた。
「え? あ、いやゴメンっ」
「ぷっ、くくっ」
急に彼女は笑い始め僕のベッドの上に座った。
「あはは、揶揄いがいがある子だな~っ」
「へ?」
「良いよ。呼び捨てでっ。確か同い年だったはずだし」
「お、おう……」
扱い辛い長女だ。そしてしばらく彼女と軽く話していると、
「何してるの姉さん!?」
ドアを半開きだったから彼女が怒鳴り声で入って来た。彼女は後ろの首元に丸くお団子作っているから、
「怒りん坊!」
「誰が怒りん坊よ!? 郁乃よ!! 名前くらい覚えなさいよ! この無能!」
「くっ……」
「怒りん坊だって、ウケる……」
「何、姉さん男子の部屋のベッドに座っているのよ!! 恥じらいを持ちなさい!」
「えーーっ」
彼女は杏奈を連れて行きながら僕を見てふんと言って出て行った。
「なんだあれは……」
しばらくするとまたノックをして開けると末娘がいた。
「えーと」
「これはバスタオルとタオルですので宜しければ」
「あ、ありがとう」
「下着類はこの部屋にあるので」
「はい」
「それと吉野君」
「はい」
「私は羽美と呼んで良いので」
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